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ヴィクターは腕を組んで僕らの方を見ている。
「しかしだ、ブラックキャットくん。首謀者であった僕だが、気がつけば、あのゾンビたちがこのモールを占拠し始めた。どこからともなくやってきた。まぁ、検討はつくがね。あれは、きっとエディのせいだ。僕に対する当てつけさ」
ヴィクターは、燃えて溜まったタバコの灰を地面に落とした。
「エディ」
「そう、エディだ。僕はねぇ、5年前くらいにショッピングモールに住みたいと思ったんだよぉ。そして、さらにひらめいたんだぁ。住みたいならば、占拠して他の人間を追い出してしまえば良いとね。だから、占拠したんだよ。それが、ブラックキャットくんの言う事件の簡単な概要さ」
ヴィクターは大きく腕を広げて自慢げに語った。
「概要はさておいてだ。そのエディは、ほとんどのショッピングモールの人間を射殺した。僕としては、殺しては欲しくなかった。彼にはショッピングモールから追い出してくれと頼んだんだけだから。」
僕は、悲しみを抑えきれなかった。酷いことする。
「しかしだ。ショッピングモールで住んで1日目。その遺体をどうしようかなぁと思っていたら、急に動き出したんだ。僕は生きてたぁよかったぁと思った。でも違った。ぱっと見た瞬間に、あれは人間ではないと思ったよ。焦ったよねぇ。うん」
ティムは、彼に質問をした。
「どれくらいのゾンビがショッピングモールの中にいるんだ」
「そうだなぁ……。100体はいると思うよぉ」
彼は笑顔で言った。彼は、頭のネジが一本ぶっとんでいるらしい。
「まぁ、ゾンビと何年も一緒にくらしていると愛着は湧いてくるけどね。なんだか知らないけど、彼からは腐敗臭とかもしないんだ。もしかしたら、本当に生きているのかもしれないけどね」
彼は、笑ってる。
「エディもなんだか、顔が変だったからなぁ。名前の通りドクロのお面を被ってたし。ゾンビと一緒に暮らさなければならないなら、お金でモールを買ったほうがよかったかもねぇ。持ってないけど」
「あなたは、悪い人ではないの?」
ユキは、質問した。
「悪い人?僕が?僕は、まっとうな人間さぁ。本当に悪い人間だったら、このモールからあのゾンビを世に放って、町中ゾンビだらけにしているところさ。どうやって、ゾンビを駆除しようかと考えていたら、時が経ってしまったけどね」
彼は、再び笑う。しかし、一転して真剣な表情になる。
「僕は、エディを探し出して懲らしめないと気が済まないんだ。僕のショッピングモールをめちゃくちゃにしやがって。絶対に許さない」
彼らが、ことの事情を話している間に、どうやらショッピングモールの内部に誰かが入ってきたようだった。しかし、彼らは気がついていなかった。
緑色のモッズコートを着て、フードを目深にかぶっている男がショッピングモールの入り口をこじ開けて入ってきた。入り口で散乱していたガラスの破片を踏み、ミシミシと音がモール内に響いた。
ポケットに手を突っ込みながら辺りを見回し、誰かを探している。
何かに気がついたのか、彼はモールの通路をまっすぐ歩き始めた。
彼は、ゾンビたちが居る所をスタスタと歩く。ゾンビたちは気がついたとしても、彼には何も危害を加えなかった。
「ご苦労さん」
彼は、ゾンビたちに挨拶をしながら歩いて回った。
「よぉ、ヴィクター。元気だったか」
モッズコートを着た人物が僕らに話しかけてきた。
「その声は……エディかッ!」
ヴィクターの声色が変わる。さきほどまでのなよなよしたチャラ男の声から、語気のつよい男らしい人物へと変貌した。
「怒るな怒るな。俺の可愛いゾンビ君たちとの生活はさぞ楽しかっただろう。デットオアアライブな生活は。もうお前なんて食われてるかと思ってたんだけどな。生きていたか」
「残念だったなエディ。僕は意外と強いんだ。君の見込み違いで悪かったな」
エディは、目深にかぶったフードを下ろした。フードの中から、ドクロのお面を顔が現れた。ヴィクターが言っていたエディなのだろう。
赤いピエロに続いて、今度はドクロのお面か。この世界は何かのテーマパークだろうかと僕は思った。
「君の思い通りにはさせないぞエディ」
ヴィクターは拳を強く握った。そして、エディは、腕を天井にかかげ、指をパチンとならした。すると、ショッピングモール内に叫び声が一斉に上がった。これは、ゾンビたちが活動を本格化させる合図だったようで、ゾンビたちの動きが活発化した。
ヴィクターは、エディに向かって蹴りかかった。
右足の回し蹴りを、エディは片手一本でガードした。ヴィクターの動きは、常人離れしており、その動きに僕は驚いた。先ほどまでの人物とは別人のようだった。
「本気でこいよ、ヴィクター」
エディは、手をクイクイっとさせてヴィクターを挑発した。
目の前で繰り広げられる戦いに、僕は足が動けなくなっていた。




