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 ドアを開けた先には、幅の広い通路が広がっていた。

 そして、目の前にはいろいろな店舗があった。洋服屋、雑貨屋、本屋……

 正確には、「あったであろう」という表現が正しいだろう。残念ながら、看板があるくらいで、ほとんどの商品類は床に落ち、汚れに汚れているため使用は厳しい状態であった。

「ショッピングモールか」

 僕は、汚い廃墟なショッピングモールではあったが、現代に帰ってきたような気がしてなんだか嬉しかった。

 広々とした通路。

 ちょっとした休憩ができそうなベンチ。

 観葉植物があったであろう植木鉢。(枯れ果てていた)

 懐かしい雰囲気の場所が目の前にあった。

 モール内は、天井の吹き抜けの天窓から光が注いできており、明るかった。図書館にいた時はお昼くらいだったから、きっと今は15時くらいだろう。そろそろ夕暮れが綺麗な時間になる。

 僕らは、ゆっくりゆっくりと歩いた。

「もはや毎度のセリフにはなるんですが、こんな場所があるなんて私知らなかったなぁ。世界は広い」

 ユキは、珍しいものを見るように辺りを見回していた。広い天井に、2階建て。ときおり現れるくたびれたマスコット(たぶん、薬局か何か)のカエルを見て「かわいいなぁ」とつぶやいていた。

 なんだか、廃墟のモールでデートでもしているんじゃないかと僕は錯覚を覚えた。しかし、そんな幸せな廃墟モールデートなど、続くわけもなかった。

「あれは、なんだ」

 モール内もだいぶ歩いたところで、ティムがしっぽを立てて、僕らに言った。

 ティムが見つめる先には、なにやら人が歩いている。僕は「人じゃんか、ティム!」と僕は喜んだ。しかし、ティムは「ちょっと待て。様子がおかしい」と言う。

 僕は、目の前に歩いている人間を、よく観察し、確認した。確かに、様子が変だ。そもそも歩き方がおかしい。人は、両手を大きく左右に振って歩く。しかし、彼らは両手を振って歩いてない。しかもテンポが悪い。足も引きずっているように見受けられた。

 僕は、現代にいた頃にそれっぽい動きをする生物に覚えがあった。しかし、もし本当に目の前にその生物がいるとするならば僕はあまり歓迎しない。歓迎したくはないと言える。

「ティム、あれってもしかして……」

「たぶんそうだ。噂には聞いていた。初めて見るけどな」

「ゾンビ……」



 目の前で、足を引きずり、時折肩をひくひくと動かしながら歩いている。

 ショッピングモールといえば、ゾンビである。ゾンビといえば、ショッピングモールである。

 こんな格言を、学校のホラーマニアの同級生が話しているのを思い出した。なんで、そんな理由なのかは聞かなかったのだが、やけにそのフレーズが耳に残っていた。

 そんなフレーズが実現して欲しくなかったが、どうやら現実のものとなったようだ。さらに、運が悪いことにもう一体ソンビが歩いていた。身なりから察するに女性だろう。ピンク色の綺麗なフリルのついたワンピースを着ている。

「ティムどうするんだ。戦うのか」

 僕は、ティムに聞いた。

「二階にあがろう。全貌を把握する必要があるかもしれない」

「わかった」

 ユキは、初めて見たゾンビに恐れている様子はなかった。しまいには、「なんどか、森の中で見たことがある」と言い出した。ゾンビが住む森があるなんて馬鹿げている。多分、夢か何かで見ただけであろう。

 二階にあがると、僕はその光景に驚愕した。

 パッと見ただけでも、ゾンビは10体は居た。あのまま真っ直ぐ進んでいたら、不意打ちを喰らって死んでしまっていたかもしれない。考えるだけでゾッとした。そして、そのままゾンビとしてこの世に復活するのである。意識と無意識の境を永遠に彷徨いながら。

「誰だッ君たちは!」

 ふいに、僕らの後ろ側から声が聞こえてきた。

 僕らが、振り返ると白髪の白衣を着た男がポケットに手を入れて立っていた。

「僕のショッピングモールに無断で立ち入るとは無礼なヤツらめ。しっかりと鍵はしていたはずなんだが」

 男は、手を顎において、不思議そうに僕らを見た。


 男は見た目としては若かった。きっと30歳はいってないであろう。

 ポケットからタバコを取り出して、マッチで火をつけて吸い始めた。男は、綺麗な白い煙を肺に取り込み、不要な部分を口の中から吐き出した。

「無礼で申し訳ないと思います。いろいろあって迷いこんでしまったもので」

 僕は、腰を低くして謝った。

「ここは、どこなんですか」

 ユキは、男に聞いた。

「ここは、モール街区域。かつて、ショッピングモールがあった場所さ。このモール街区域は図書館区域の横の森の奥の奥のトンネルの先にある場所だ。もう何年も使われていないし、街の人たちからは【いわくつき】と言われ誰も寄り付かなくなった」

「モール街区域か。なるほど」

 ティムは、言った。

「ということは、お前はモール街区域で起きた事件の首謀者か」

 ティム語気が強まる。

「おや、猫が喋ってる。面白い。そうだよ。あの事件の首謀者。ヴィクターだ」

 ティムの言葉がわかるということは、30歳にはなっていないと僕は思った。

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