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僕は、あたりに何かないだろうかと、左右を見渡した。そして、机の上にノートが置いてあることに気がついた。
「警備日誌」
警備日誌と書かれたノートを僕は、手に取った。
どうやら、ここは警備室のようだ。きっと警備員の人が待機していて、このモニターは防犯カメラ用のモニターだろうと僕は推測した。
ノートを開いてみると、1月1日から12月31日までの全記録が書いてあった。これは、多分一年分の記録がされたものであろう。周りを見渡すと、何年分かの警備日誌が保管されている棚があった。
日付に関しては、昨年となっている。僕のいた世界と同じ記載の仕方であった。
僕は、ノートを開いて閲覧した。
1月10日 異常なし
5月31日 異常なし
9月30日 異常なし
11月14日 迷子あり。その他異常なし
12月27日 最終営業日。異常なし
365日のうち300日以上は「異常なし」という記載のみであった(1日1ページ単位であるにもかかわらず)。この警備員は優秀なのであろう。異常が無いことは良いことである。(多分、多少の問題事項はあったものの、面倒なので記載を省いたのだ。ずぼらである)
なお、他にある記載としては、「迷子あり」である。
12月27日の記載だけは、僕にとって有益な情報となった。【最終営業日】と書かれているから、この場所は、営業しているということが読み取れた。また、【迷子】とも書かれているから、きっとここはお店か、テーマパークあたりであると推測できた。
「ユキ、ティム。ここはお店か遊園地かもしれない」
僕は、調査結果を彼らに報告をした。ユキは、「遊園地!」と興奮し、赤いメガネをくいっとあげた。ティムは、「お店ならば、食べ物でもあるんじゃないか」と言った。この先の行く末に一筋の光が見えてきた気がした。
僕の説明が終わるとユキが、指をさして言った。
「さっき確認したんだけど、ここに非常食が入っていそうだよ」
僕とティムは「なんだって!?」とよだれを垂らしながら言った。ユキが指差した方向には、引き出しのついた棚があった。僕は、その引き出しをゆっくりと開けた。すると中には、500mlのペットボトルが3本と、数種類の缶詰と乾パンが入っていた。僕らは、嬉々としてそれらの非常食を手に取った。
しかし、賞味期限は大丈夫なのだろうか。賞味期限ならまだしも、消費期限が切れているならばまずい。お腹を壊す。僕は、ふいに記載を確認するもどこにもその記載はなかった。きっと、この世界では消費、賞味期限の記載をするという感覚はないのだろう。
「なんだか、不思議な容器ですね」
ユキは、ペットボトルを手に取っていった。たしかにこの世界に来てから、ペットボトルというのは見たことがない。瓶の容器はよく見かけたが。ユキは、適当にペットボトルをいじくって開けた。
「面白い開き方するなー」
ユキは、関心しながら口に水を含んだ。ティムは、「俺も水を飲みたい」と僕にアピールをした。しかし、彼はガブガブとは水は飲まない。そういえばと思い出した。非常食の入っていた引き出しの中に小さな容器があったので、そこに水を入れてあげてから、ティムに差し出した。
「助かる」
ティムは、ぺろぺろと水を飲み始めた。
そして、僕らは、缶詰を開け中身を食べた。(結局消費期限は気にしなかった。なお、変な味はしなかったので食べられるものであると判断した)果物、干し肉、魚などが入っていた。本日初めての食事に僕らは、舌鼓をうった。人間、食べることが生きることなのだと改めて実感した。(2人と1匹だ)
「ごちそうさまでした」
僕らは、食べ終わったものを一箇所にまとめてた。
警備室の中に使えそうなものはないかと調べると、発煙筒があったので何かの役に立ちそうだったので持っていくことにした。僕らは、警備室を出た。
扉を開いて、さらに奥へと進む。廊下は、人が二人分くらいしか通れない幅で、お世辞にも広いとは言い難かった。相変わらず、豆電球がぽつんぽつんとあるだけでくらい。虫の死骸も何匹か見受けられた。
「汚いよねぇ。早く出たい」
ユキはぽつりと呟いた。まったくである。こんなところ早く抜け出したいと全員が思っていた。
しかし、そんな切実な気持ちが通じたのか、目の前に壁が見えてきた。正確には壁ではない。たぶんドアである。この狭い廊下にも終わりが見えてきたようだ。
僕らは、廊下の終着点の前で立ち止まった。ドアには、ドアノブがある。間違いないこれは、開くドアである。僕は安心した。
ドアには注意書きの紙が貼られていた。
【出るときは、笑顔で、挨拶をして店内には出ましょう】
ユキは、不思議そうな顔をしていた。
しかし、僕は確信した。この先はお店である。スーパーマーケットとかデパートとかの類であろう。僕は、半年くらいだったが、スーパーで品出しアルバイトの経験があった。店内にはお客様がいるし、無表情や無言で出るのは印象が良くないということで、このような動作が求められた。
「ユキ、しっかり挨拶するんだよ」
僕は、冗談ぽく言った。(多分、挨拶は不要である)
「わ、わかった!」
ユキは、元気よく返事をした。
そして僕は、ドアノブをひねって店内へと入っていった。
しかし、僕はこの時気がついていなかった。
廊下から出られる興奮のあまり、もう一枚の紙が剥がれ落ち、廊下の隅に落ちていたことに。
【この先、モール街区域。出るな!危険!出る時は反対側から出ること】




