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「そうだねぇ……いつくらいだったか」
彼は、ゆっくりとしゃべり始めた。
僕らは、深い森の中を歩いていた。
それはエディがこんな情報を掴んだからだ。
「森の奥に大きな建物があるらしい」
僕は、エディの言葉につられてついていった。エディは古くからの友人だ。お互い、両親とはお互い遠い昔に死別している。だから、僕にとってエディは家族同然の存在だった。
深い森は、図書館区域からだいぶ離れた場所にあったが歩いてもいける距離だった。
僕らは貧しかったから、自転車も持っていなかったし、大人になっても貧しかった。僕らは教育というものを受けていなかったからだ。できる仕事は、すべて肉体労働だった。知識労働者としてはどこも雇ってはくれなかった。
僕らは、とても長い距離を歩いた。両足は鉛でも入ったかと思うくらい重かった。
「ヴィクター……見ろッ」
彼の指差す方向を見ると、大きな建物があった。
見たこともないような建造物だった。僕の知っている建築物といえば、団地区域の団地や図書館区域の図書館たち。あとは、商店街区域の商店くらいだった。
「これは……なんだい。こんな建物初めて見た」
僕は、喋ると彼は言った。
「入ってみようぜ」
エディは、だいぶ好奇心が旺盛だった。見慣れないものを見るとすぐに走って見に行く。そんなやつだった。
建物の中は不思議な空間だった。
天井がやたら広いが、ほとんどなにもない。コンクリートで塗り固められたと、木製のベンチが一つ置かれていただけだった。ただ、コンクリートは特徴的で、天井の方に近い壁は穴が開いており、そこから夜の月明かりが入ってきていた。
エディは、スタスタと歩いて入っていく。僕は、後ろを恐る恐るついていき、中を調べて回った。
「階段があるぜ」
エディは、指をさした。指をさした方向に、下の階に下る階段があった。エディは「行こう」と言って、中に進んでいった。
下の階は、真っ暗であった。エディには何かが見えていたのだろうか。エディは、スタスタと歩いて行った。そして、しばらくしてエディがどこにいるかわからなくなった。僕自身も、どこから登ってきたのかわからなくなってきた。
「エディィー!」
僕は、大きな声で叫んだが、彼からの返事はなかった。僕は、暗闇の恐怖から涙が自然と溢れ出してきた。
「エディ……エディィ!」
「なんだ、うるさい」
僕の背後から誰かの声が聞こえてきた。後ろを振り返ると。暗闇が広がっていた。
「そっちじゃない、こっちだ」
僕は、言葉に導かれるまま暗闇の奥底へと歩き始めた。
しばらく、その言葉に従ってついていくと、僕は一枚の扉の前まで来ていたんだ。
そして、なんの疑いもなく僕はその扉を開けた。
扉の奥には、松明がくべられ、一人の男が座っていた。髭が長くローブのようなものを着ている。
この部屋もアスファルトと椅子があるだけだった。
男は「この世界の王だ」と言った。僕は「冗談を言うな」と言い返した。
しばらく沈黙がつづいたが、男がまたしゃべりはじめた。
「おまえは、この世界が嫌いか」
「嫌いじゃない」
「そうか」
この男の醸し出す雰囲気に僕は圧倒されていた。
「エディという男は嫌いと言っていたが」
「僕は、嫌いじゃない」
「そうか」
男は、髭を触る。自らの顎から生えているヒゲの長さをたしかめるように。
「ここは、どこだ」
僕は聞いた。
「ここか。ここは世界の始まりの場所だ」
「世界の始まり?どうみたって終わりの場所のように見えるけどね」




