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「あいたッ」
僕は、大きく尻餅をついた。急に景色が変わり、そして約1mくらいの位置から尻餅をついた。とても痛くて、しばらくのたうちまわった。
「だ、大丈夫」
肩で息をするユキが僕に話しかける。
「大丈夫だよ。脇腹は痛むけど、なんか痛く無くなってきたよ。松葉杖は、もういらないかもしれない」
あまり重症ではなかったようである。僕は、歩くくらいならば平気にできるくらいまで回復していた。ひょっとしたら、赤いピエロと対峙したことによって、全身の筋肉が極限まで緊張してから、ワープ後に一気に緊張が解除されたことによって血の巡りがよくなったのかもしれない。結果として治りが良くなったのか。
「それに、ワープができるなんて聞いてないよ。ビックリした」
僕は、ユキの背中を叩いて、彼女を褒めた。
「う、うん……さっきの図書館で読んで勉強したの。まさか本当にできるとは思わなかったけれど」
ユキは動揺していた。
ワープができたことではない。おばちゃまが死んでしまったことに対してである。
「緊急だったとはいえ、おばちゃまをあの場所に放置してしまったわ。きっと、あのまま焼かれてしまったわよね」
ユキは、ひどく落ち込んでいるようだった。こういう時に、どんな言葉をかけてあげられるかによって男の力量がわかるというものである。しかし、僕は言葉が見つからずにいた。
「君が悔やむことではない。仕方のないことだ。起きたことに対して、何を言っても結果は変わらない。変えられるのはこれからの未来しかない。生き残った俺らが変えていかないといけないんだ」
ティムは、ユキの足元から見上げるようにして言った。不謹慎ではあるが、あの位置からであるならばユキのスカートの中身が丸見えである。あの黒猫め……
「そうだね。ティム。ありがとう」
ユキは、ほっぺたをぱちんぱちんと二回叩いた。
「よし、気合を入れて頑張るか!」
ユキの元気は回復したようだ。そして、ユキは辺りを見回してみる。ここは一体どこだろうかといった感じであった。
「カク、ここがどこだかわかる?」
「わかるわけがないでしょ」
「だよね」
ユキは、わかってはいるもののなんとなく聞かないといけないような気がしたのかもしれない。見知らぬ場所に来たら、近くにいる人に話をするのが定石というものだ。
辺りを見回す限り、倉庫のような場所である気がした。段ボールがたくさん積んである。僕は、近づいて段ボールに何が書いてあるか見てみた。すると、SとかMといった表記が、段ボールごとに書かれていた。
「たぶん、この段ボールって服が入ってるんじゃないですかね」
「なんで、なんで」
僕は、段ボールに描かれているアルファベットを指差してユキに説明した。そして、説明したのちにダンボールをあけると大量の白いTシャツが入っていた。「すごいわね」とユキは感心した。
「ユキは、服とかってどうしてたの?お店とかあるでしょ。服売ってるところ」
「しらないわ。わたしはいつもフリーマケットで買うか、自分で作ってたし。この黒いワンピースも手製よ」
驚いた。彼女は洋服を自作していたのか。彼女は、ワンピースのすそを持って、広げた。自慢げに「わたしがつくりました!」とアピールしているようである。「すごいすごい」と僕は返事をした。あまり、その返事が良くなかったのか、「絶対にカクには作ってやんない」と言われてしまった。僕は「はいはい」と返事をしておいたのだった。
この部屋の中は暑いので、段ボールに入っている白いTシャツを一枚拝借することにした。
「ちょ、ちょっと急に脱がないでよ」
ユキが急に大きな声を出した。
「え、なんでよ」
「は、恥ずかしいじゃない」
「だったら、あっち向いててよ」
僕は、平然と答える。ユキは「そ、そうね」となんだか動揺した様子であっちの方向を向いた。
ユキがあっち方向を向いている隙に僕は、いそいそと着替えを済ませた。
「終わったよ」
「は、はい!」
ユキは不自然な大声を出した。
僕は、とぼとぼと入り口に向かって歩き、ドアを開けた。ドアを開け、顔を少しだけ出して周りをキョロキョロと見たが、廊下が一本あるだけであり、誰かがいる気配はなかった。
「人は居なさそうだよ」
後ろを振り返ってみると、ユキはティムを撫でて遊んでいる。僕は先陣を切って偵察をしているのに、なんとゆるいことか。彼女の気持ちの切り替えの早さには感服する。
「カク、ユキ。とりあえず、ここを今日の寝床にしよう。そして、食料をここを拠点に探しに行こう。さすがに何も食べないのはまずい」
ティムはリーダーシップを発揮した。猫がリーダーシップを発揮するのがこの世界である。
しかし、そんな冗談を言っている場合ではなかった。ティムがその発言をしたおかげで、急にお腹が空いてきた。
「お腹すいた!」
ユキは大きな声を出して叫んだ。




