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「形?君は面白いことをいうね〜」
ユキは、両手を大きくふって、山道を一歩一歩進んでいる。
「真面目に聞いてるんですけど」
僕は、むっとした言葉で応戦した。
「ごめんごめん。えっと、この世界のことを知りたいんだね。ただ、わたしもよくわかってないの。この世界がどんなものかって。結局住んでいる周辺のことしかわからないんだ。本当は世界中では戦いが起こっているのかもしれないけれど、実際のところよく分からないじゃない?君の世界がどうなのかはわからないけどさ。私が教えられるのは、この世界っていうよりもこの地域のことだけど良いかな?」
彼女は、前を向いて歩いている。僕はその後ろ姿をただただ追いながら歩いている。
「それでもこの世界を理解するのに重要であるならば、僕は聞きたいです」
「ふふふ。ありがとう。じゃあ、説明しよう!」
ユキは、右手の指で1を作り、天高く突き上げた。なんの意味があるのかわからないが、彼女なりの「説明します」という合図なのかもしれない。どこまでも天然を地でいくタイプなのであろう。
ユキの説明だとこんな感じらしい。
まず、この地域は、高い山の上にある。山の周りには深い谷と、大きな川があって、この山を越えて他の地域に出ることはまず無理らしい。
四季というものある。でも、極端に寒くなったり、極端に暑くなったりはしない。毎年一定の気温で四季が保たれているとのこと。
団地区域に住んでいる住人は、100人もいないらしい。子供は実はいなく、皆、成人した男女であるとのこと。ユキ自身も人数も全体としては把握していない(ゆえに100人以上かもしれない。
団地区域の他にユキ自身が行ったことあるのは、図書館区域と、市場区域(これは団地区域の隣らしく近い)。多分他にもありそうらしいが、やはり行ったことがないらしい。
「まぁ、こんなところからな。毎日、やることは結構限られてはくるんだけど、四季によって周りの景色が変わっていくのをみるのは好きだし、釣りも楽しいし」
「釣り?ユキは釣りをやるの?」
「やるよ!すっごい楽しいよ。釣れたら食べれるしね」
彼女は、振り返って嬉しそうに僕に話をしていた。本当に釣りが好きらしい。釣りをしている瞬間が楽しいのか、釣れた瞬間に今晩のおかずを想像するのが楽しいのかは定かではないが。
彼女の説明では結構たらない部分も多かったが、大枠はわかったような気がした。山の中にある。四季はある。いくつかの区域にわかれている。
しかし、ここでひとつの疑問が浮上した。あのコンビニはどこにあったのだろうか。そして、ティムとあった場所はなんだろうか。この区域の中にあるのだろうか。僕は、地下通路を辿って、自然博物館のような場所やらシネコンのような場所を通ってここまできた。彼女はそのあたりの場所を知らないらしい。僕は、あえてこの事実は言うのはやめようと思った。話がこじれそうだ。
「はい、私は話したよ。次は君の番だ。君の世界のことを教えてよ」
彼女は僕の方に手を差し伸べて、「君の番、君の番」とつぶやいている。
「僕の住んでいる世界は、この世界よりかは発展しています。たくさんの人間がいます。でも、その多くの人間が都市部と言われる部分に住んでいる。都市部はどんどん発展している。でも、都市部以外の部分からはどんどん人がいなくなっていて、土地だけが余っている。それでも都市部に人がどんどん移住してきて、もはや都市部はパンクしている状態なんです。
「パンクしている状態」
「はい。具体的に言うと、そうですね……。例えば、人が4人で住める四角い箱が一つあるとします。その箱を平坦に4つ置ける土地があったとします。単純計算で、16人住めることになります。ただ、僕の住んでいる世界では技術が発達したせいで、この16人という限界値を超えることができるようになってしまった」
ユキは、頷いている。そして、僕の話を計算するかのごとく、空に向かって指で何かを計算している。
「空に向かって伸ばしたのです。団地区域にあった建物の比ではないです。もっともっと大きく、そして高く。16が10段、20段となり、余裕で300人以上住めるようになりました。僕の住んでいる国は国土が元々狭いのです。いえ、本当は広いのに都市部に人が集中しすぎて狭くなっていたのだと思うのですが」
気がつけばティムは、ユキの前を歩いていた。猫は、山道を見ると動物的本能を思い出すのかもしれない。
「この300人たちが空の上に住んでいる分には良いのですが、地上に降りてきたらどうでしょう。もともと16人しか住めないところに300人いるわけですから、一人当たりの面積が少なくなります。すると、僕の世界では通勤ラッシュというものが生まれます。電車という乗り物があって、簡単に言えば移動手段です。すし詰めになった電車に毎朝乗って会社なり学校に行くんです」
僕は、話に勢いが出てきた。
「それで……それで……」
「はい、ストップ!」
ユキは、僕が話そうとしているのを急に止めた。僕としては、これからだというところだったのに。話の腰を折られてしまった。
「君の言いたいことはよくわかったよ」
「な、なんでしょうか」
「元の世界では不満がたくさんあったんだね」
僕は、何も言えなくなってしまった。
そうだ。僕は、あの世界に不満がたくさんあったのだ。




