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『ハズレ竜タマは、軍団を産む。』  作者: tatsuya akaike


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第48話 六匹のかたち

 四匹の進化が、済んだ。


 ソラの速さ。ヒノの火力。ゴロの守り。ナギの支え。

 ……駒は、揃った。

 あとは、これをどう噛み合わせるかだ。


 相手は、鷹宮。

 S級の速さと、制空権。しかも、覚醒には頼らない。

 まともにやれば、勝ち目はない。

 ……だから、作戦で勝つ。

 一匹の力で殴り勝てる相手じゃない。

 でも、六匹の"かたち"でなら……穴を埋め合える。

 それが、俺たちの戦い方だ。


 あの日の敗北を、何度も思い返した。

 シルバーホークは、壁を飛び越えて、上から軍団を崩した。

 速すぎて、指示も間に合わなかった。

 軍団が一瞬で崩された、あの光景。

 ……今でも、悔しさがこみ上げる。

 でも、あの負けがあったから、俺たちはここまで来られた。


 でも、俺たちはあの日から変わった。

 一つずつ、答えを、組み立てていく。


 まずは、"上を取られる"問題。

 ……これには、もう答えがある。


「ゴロ! グランド・ドーム!」


 グモォォン!


 ゴロが地面を踏むと、岩の要塞が俺たちを上まで囲う。

 これで、シルバーホークがどこから来ても、拠点には手が出せない。

 あの日、ゴロは壁を飛び越えられて沈んだ。

 でも、今のゴロは上まで塞ぐ要塞だ。

 ……同じ手は、二度と食らわない。


 次は、"速さ"をどう止めるか。

 真っ向から追っても、勝てない。

 なら――止める。


「メイ! ナギ! 頼む!」


 メイの蔦が、地面に罠みたいに這う。

 ナギの霧が、あたりの視界を奪う。

 ……速さは、行き先が見えなきゃ、ただの的だ。

 サンダー・イーグルで学んだ、あの手を、もっと磨く。

 速さは、行き先が見えて初めて活きる。

 視界を奪い、足場を崩し、蔦で縛る。

 ……"止まった一瞬"を、こっちで作り出す。


 この特訓は、メイの育成も兼ねていた。

 まだLv18の、いちばん新しい仲間。

 でも、こいつの搦め手は、鷹宮戦の鍵になる。


「メイ。お前の蔦で、"速いやつ"を止めるんだ。……できるか?」


「ふよ! ふよぉ!」


 メイが、張り切って、蔦を伸ばす。

 ソラに、模擬の的に、なってもらった。

 雷光の翼で飛び回るソラを、メイの蔦が追いかける。


 最初は、ぜんぜん、届かなかった。

 速いソラに、蔦は宙を切るばかりだ。


 ……でも、メイは、めげなかった。

 何度も、何度も蔦を放って。

 ソラの動きの、癖を覚えていく。

 ソラも、手加減はしない。

 本気の速さで、メイを翻弄する。

 それでも、メイは諦めなかった。

 転んでも、蔦がもつれても、すぐに立ち上がる。

 ……その芯の強さは、やっぱりタマ譲りだ。

 休憩のたびに、ナギが慈雨でメイの疲れを癒す。

 ゴロが、転んだメイを鼻先でそっと起こしてやる。

 ……この子は独りじゃない。みんなに育てられてる。


 そして、何十回目かの、挑戦で。


 しゅるん、と。

 メイの蔦が、ソラの脚に、絡んだ。


「ピィッ!?」


 ……捕まえた。

 あのソラを。……メイが、止めた。


「やったな、メイ! それだよ、それ!」


「ふよぉぉ!」


 メイが、飛び跳ねて、喜ぶ。

 その頭で、花が、ぱっと咲いた。

 ……こいつは、伸びる。確信した。

 最初は、俺の後ろに隠れてばかりだった、あの子が。

 今は、あのソラを止めるまでになった。

 ……育てるって、ほんとにいい。

 こいつのこれからが、楽しみでしかたない。

 いつか、メイも進化するときが来る。

 そのときは、どんな搦め手を見せてくれるかな。

 ……でも、それは、この戦いが終わってからだ。


 特訓を、重ねるほど。

 六匹の動きが、一つに、噛み合っていく。


 ゴロが、ドームで、拠点を守る。

 ナギが、霧で視界を奪い、慈雨でみんなを支える。

 メイの蔦とナギの足場で、敵の速さを削る。

 止まった一瞬に――ソラの雷と、ヒノの紅蓮を、叩き込む。

 そして、タマが遊撃で隙を突く。

 タマは、覚醒には頼らない。

 いつもの身軽な遊撃で、盤面をかき回す。

 ……あの力がなくたって、こいつはじゅうぶん強い。


 ……これが、俺たちの、かたちだ。

 速い相手を、地上の罠に引きずり込んで。止めて、一点で仕留める。

 覚醒なんか、使わない。

 六匹、全員の力で、あの壁を越える。

 一つ一つの役目は、地味かもしれない。

 でも、六つ噛み合えば……S級にだって届く。

 そう信じられるくらいには、俺たちは強くなった。

 試しに、六匹で模擬戦をやってみた。

 ゴロのドームで守り、メイとナギで足を止め、ソラとヒノで撃つ。

 ……流れるように、繋がった。

 あの日のバラバラだった軍団は、もういない。

 六匹で、まるで一つの生き物みたいに動ける。

 ……よくぞ、ここまで来たものだ。


 特訓の合間。

 縁側で、じいちゃんが、茶をすすっていた。


「……ずいぶん、いい軍団に、なったな」


 その声は、どこかしみじみしていた。


「お前の父さんも、そうやって竜たちと一つになっていった。……お前は、もう、あいつの背中に届いてる」


 その言葉が、じんわり胸に染みた。

 ずっと遠かった、父さんの背中。

 ……少しは、近づけたんだろうか。

 榊先生も、こっそり見に来ていた。

 「無茶は、するなよ」とだけ言って、去っていく。

 ……あの人なりの、応援だ。

 みんなが、送り出してくれる。

 じいちゃんも、榊先生も。……そして、この六匹も。

 独りじゃ、ここまで来られなかった。


 ……父さん。

 あんたも、こんなふうに仲間と笑ってたのかな。


 夕暮れの、訓練場。

 汗だくの六匹が、俺の周りに集まってくる。

 ヒノも、ソラも、ゴロも、ナギも、メイも。そして、タマも。

 メイが、ヒノにじゃれつく。ソラが、それをからかう。

 ゴロは、どっしりみんなを見守っている。

 ナギが、慈雨で汗をそっと流してくれる。

 タマは、俺の頭でいつものようにあくびをした。

 ……こいつらとなら、どこまでも行ける。


 準備は、整った。

 あとは――挑むだけだ。


 翌日。俺は、鷹宮のもとを、訪ねた。


「鷹宮。……約束の、決着をつけたい。正式な、昇格戦で」


 鷹宮は、静かに俺を見て。それから、ふっと笑った。


「いいだろう。……逃げも隠れも、しない」


 シルバーホークの主が、立ち上がる。


「三日後だ、天野。……お前の"育てた力"の全部を、見せてみろ」


 その目に、もう侮りはなかった。

 あるのは、強者どうしの、静かな闘志だけだった。

 ……ようやく、対等に立てたんだ。

 あの、雲の上の男と。


 三日後。

 あの日"誰も勝てない"と思い知らされた壁に、今度は挑む。

 俺たちの、積み上げた全部で。

 ……見てろよ、鷹宮。覚醒なんかに頼らない。

 これが、育てるってことの答えだ。

 父さんが信じた道を、俺は、俺のやり方で証明してみせる。

 ……きっと、あんたの想像も超えてみせる。


 三日後。

 いよいよ、あの壁にもう一度挑む。

 ……覚醒に、頼らずに。この、六匹で。


 俺の胸の中で、タマが小さく鳴いた。

 まるで"わたしも、いるよ"と言うみたいに。


 ……ああ。もちろんだ、タマ。

 お前も、大事な、うちの一匹だ。

 覚醒がなくたって。お前は、俺の、いちばんの相棒だからな。



───────


【あとがき】


 第四十八話、読んでくれてありがとうございます。


 いよいよ、鷹宮戦の準備回です。四匹の進化が揃い、今回はそれをどう噛み合わせるか――という"作戦と特訓"を描きました。


 カギは、メイの育成。速いソラを的に、何度も失敗しながら、ついに蔦で捕まえる。「速さは、行き先が見えなきゃ、ただの的」。サンダー・イーグル戦で学んだ戦い方が、六匹の"かたち"として完成していきます。覚醒に頼らず、地上の罠に引きずり込んで止めて、一点で仕留める。それが、ソウマの答えです。


 そして、三日後に、正式な再戦。次回、いよいよ鷹宮戦です。

 よかったら感想で、この六匹で鷹宮のどこを崩してほしいか、教えてください。


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