↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ハズレ竜タマは、軍団を産む。』  作者: tatsuya akaike


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/79

第43話 六匹目の芽

 家に帰るころには、日が暮れていた。


 庭に、五匹を降ろす。

 ヒノもソラも、狩りの疲れで、うとうとしている。

 でも、今日はまだ、終わりじゃない。

 狩りの成果を、もうひとつ、形にする。

 ……今日は、家族が増える日だ。

 そう思うと、狩りの疲れなんて吹き飛んだ。


「タマ。……頼めるか」


 俺の腕の中で、タマがこくりと頷いた。

 産卵。……六匹目を迎える、いちばん大事な瞬間だ。


 産卵は、ダンジョンの中じゃやらない。

 こうして家に帰って、安全なこの庭で、落ち着いて産む。

 ……何より大事な、命だからな。


 縁側では、じいちゃんも静かに見守っている。

「……いい狩りを、してきたみたいだな」

 俺の顔を見て、そう言った。

 なにが生まれるか。じいちゃんも、楽しみなんだ。


 タマが、庭の真ん中にちょこんと座る。

 目を閉じて、小さく息を整えて。

 その体が、ふわりと淡く光り始めた。


 ……産卵は、タマのHPをごっそり持っていく。

 昔は三割まで削れて、数日、寝込んだ。

 でも、今のタマはLv40。

 段階解放で、ずいぶん楽になった。……それでも、無理はさせたくない。


 タマの体から、あたたかい光が、しずくみたいにこぼれ落ちる。

 その一粒一粒が、命のかけらだ。

 俺はただ、そばで見守ることしかできない。

 ……がんばれ、タマ。


「ゆっくりでいい。……無理すんなよ」


 ふわりと、光が集まって。

 タマの前に、ころん、と卵が転がり出た。


 ……緑色の卵。

 若葉みたいな、綺麗な黄緑色だ。

 表面に、蔦の模様が、うっすら走っている。


 ……草だ。狙いどおり。

 緑の層で草をたっぷり狩った、あの"記憶"が。ちゃんと、この卵に宿ってる。

 狙って、この属性を引く。

 運任せじゃない。戦って、記憶を刻んで、手繰り寄せた結果だ。

 ……これも、立派な育成の一部だ。


 卵が、ことこと、と揺れ始めた。

 早い。……タマの子は、いつも孵るのが早い。

 まるで、早く外に出て俺に会いたい、みたいに。

 ……そんなわけ、ないか。でも、そう思うと、嬉しい。


 ぴき、と、殻にひびが入って。

 中から、ちょこんと、顔が出た。


 若葉色の、小さな竜。

 背中に、双葉みたいな小さな突起。

 頭には、まだ閉じた花のつぼみを、乗せている。


「ふよ……?」


 ……かわいい。

 俺は、思わず頬がゆるんだ。

 まだ、目もうるうるしている。

 こわごわ、あたりを見回して。……俺と目が合うと、ぴくっと身を縮めた。

 人見知り、なのかもな。

 でも、その仕草が、いちいち愛おしい。


 念のため、ステータスを視る。


  【六匹目】

  属性:草

  資質ランク:D

  レベル:1 / 上限35

  タイプ:搦め手・状態異常


 ……よし。まちがいない。草属性だ。

 資質はD。上限は35。

 ……でも、育てればBまで行ける。いつもの、うちのやり方だ。


「お前の名前は……」


 俺は、その若葉色の子を、そっと抱き上げた。

 頭のつぼみが、俺の指に触れて。……ぽ、と小さな花を咲かせた。


 ……これから育っていく、新しい芽。

 芽は、水と光をやれば、どこまでも伸びる。

 ……こいつも、きっとそうだ。


「――メイ、だ。よろしくな、メイ」


「ふよぉ」


 メイが、嬉しそうに鳴いた。

 俺の手のひらの上で、こてん、と首をかしげる。

 その拍子に、頭の花が、ふわりといい匂いを放った。

 ……この子と、これから、いろんな景色を見にいくんだ。


 メイが、おそるおそる俺の手のひらから、地面に降りた。

 ぺたぺたと、たどたどしく歩いて。……ぽてん、と転ぶ。

 でも、すぐに、むくりと起き上がる。

 その芯の強さが、なんだか、タマに似ていた。

 タマの子だもんな。

 ……この子も、きっと、ただ者じゃないんだろう。

 でも、それでいい。

 どんな子でも、俺がちゃんと育ててみせる。


 目を覚ましていた先輩たちが、集まってくる。


 ヒノが、興味津々で顔を近づける。

 ……メイがびっくりして、俺の後ろに隠れた。

 ゴロが、のっそり匂いを嗅ぐ。ソラが、上からくるくる旋回する。


 そして、ナギが。

 すす、とメイの隣に寄り添った。

 同じ、支えるのが得意な、水と草。……気が合いそうだな。

 メイも、ナギにはあまり怯えない。

 同じ、おっとりした空気を感じるのかもしれない。

 ナギが、そっとメイの背中に、水の膜で日よけを作ってやる。

 ……もう、お姉さん気取りだ。

 ヒノは、早く遊びたくてうずうず。

 ソラは、兄貴分ぶって羽をぱたぱた。

 ゴロは、いつもどおりどっしり構えて、新入りを見守る。

 ……いい光景だ。

 六匹が、めいめいにメイを囲んでいる。

 でこぼこな、うちの軍団に。……また一匹、個性が増えた。

 メイはまだ、きょとんとしているけど。

 ……大丈夫。すぐに、ここが自分の居場所だと、わかるさ。

 現にもう、ヒノのしっぽに、ちょっかいを出している。

 ……たくましいな、メイ。


 タマは、産卵のあとでぐったりしながらも。

 新入りのメイを、まんまるの目で、優しく見ていた。

 ……お前が産んでくれた、六匹目だ。ゆっくり休んでくれ、タマ。

 俺は、タマの頭を、そっと撫でた。

 産卵のたびに、こいつは自分を削って、新しい命をくれる。

 ……ありがとうな。この借りは、育成で、ちゃんと返す。


 六匹。

 ……軍団が、六匹になった。


 E組で、ハズレの卵を押し付けられて。独りぼっちだった、あの日。

 あの頃の俺に、教えてやりたい。

 ……お前、この先、六匹の最高の相棒と出会うぞ、って。


 誰にも期待されなかった、ハズレの俺。

 でも、こいつらは、俺を必要としてくれた。

 育てた分だけ、応えてくれた。

 ……それが、どんな才能よりも、俺の誇りだ。


 メイが加われば、水や岩に強い草が、軍団に入る。

 搦め手で敵を止めて、その隙にみんなで叩く。

 ……戦術の幅が、ぐっと広がる。

 鷹宮に届く日も、少しずつ、近づいてる。

 そして、その先の。……父さんの、いる場所にも。

 一匹、また一匹。仲間が増えるたびに、俺は強くなれる。


 でも、それはこれから。

 まずは、メイをじっくり育てていく。

 あの子がどんな竜に育つのか。……楽しみで、しかたない。


 ひとつ、気になったことがある。


 生まれたばかりのメイが。

 ……なぜか、タマの首輪を、じっと見つめていた。

 まるで、そこに何かを感じているみたいに。


 ……気のせい、だよな。

 でも、うちの子は、みんな。

 タマの"何か"と、どこかで繋がっているのかもしれない。


 ……さあ。

 六匹の軍団で、次の高みへ。

 俺たちの育成は、まだまだ続く。


 縁側のじいちゃんが、メイを見て、ぽつりと言った。

「……お前の父さんも、そうやって一匹ずつ、仲間を増やしていったよ」

「そっか」

 俺は、笑って頷いた。

「なら、俺も。父さんに負けないくらいの軍団を、つくるよ」


 六匹目の、芽。

 こいつが育っていく未来が、俺は、楽しみでしかたなかった。



───────


【あとがき】


 第四十三話、読んでくれてありがとうございます。


 ついに、六匹目が誕生しました。若葉色の草の子、メイです。頭の花のつぼみと、双葉の突起がチャームポイント。狙いどおりの草属性で、水や岩に強く、蔦や胞子で敵を搦める"状態異常タイプ"になりそうです。今はまだLv1ですが、育てればBまで届く器。いつものソウマ流で、じっくり育てていきます。


 緑の層で草をたっぷり狩ってから帰って産む――この"厳選"が実を結んだ形です。同じ支援役のナギとも、さっそく相性が良さそう。


 そして最後、生まれたてのメイが、タマの首輪をじっと見つめていました。……この子も、タマの"何か"と、どこかで繋がっているのかもしれません。


 よかったら感想で、メイに覚えさせたい技や、育てたい方向、教えてください。

 六匹になった軍団で、物語はまだまだ続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。