第40話 五匹の、現在地
ソラの進化から、しばらく。
俺たちは休まず、深層に潜り続けた。
ソラだけじゃない。……軍団全員を、底上げするためだ。
鷹宮に、覚醒なしで挑む。
そのためには、一匹の進化だけじゃ足りない。
五匹全員で、地力を押し上げる。
円城寺の"唯一の道"を、覆すために。
……地味だけどな。こつこつ育てるのが、いちばんの近道だと、俺は知ってる。
毎日、狩って、潜って、また狩って。
ヒノが炎の切れ味を増し、ゴロがさらに重く硬くなる。
ナギは支援の手数を増やし、タマは相変わらずひょうひょうと、急所を抜いていく。
夜は、みんなでへとへとになって眠る。
でも朝になれば、また目を輝かせてダンジョンへ。
……こいつら、強くなるのが楽しいんだ。きっと、俺と同じで。
そして、ある日の帰り道。
俺はふと立ち止まって、五匹の"今"を確かめたくなった。
俺には生まれつき、竜の"ステータス"が視える。
昔は、なんの役にも立たないハズレの力だと思っていた。
でも今は、これが俺の育成の、いちばんの武器だ。
相手の弱点も、味方の伸びしろも視える。
だから俺は、"どう育てるか"を間違えない。
……ハズレの力なんかじゃ、なかったんだ。
庭に五匹を並べて、俺は順番に、そのステータスを読み上げていった。
並んだ五匹が、きょとんと俺を見ている。
お前らのことは、ぜんぶわかってるつもりだ。
でも数字にして並べると、あらためて実感する。
――遠くまで来たんだな、と。
笑われてばかりだった、ハズレ組の俺が。
その俺が今、これだけの軍団を率いている。
まずは、ヒノ。
【ヒノ】
属性:炎
資質ランク:D(生まれのまま)
レベル:35 / 上限35
タイプ:後衛・魔法火力
技:炎ブレス/蒸気の目くらまし(応用)
状態:★上限に到達
……あ。
ヒノが、Lv35。上限に届いてる。
資質Dの、天井だ。
これ以上は、もうレベルじゃ伸びない。
……つまり。次に強くなるには、ヒノも"進化"しかない。
ヒノは、うちの二匹目。
やんちゃで、まっすぐで、いつも前に出たがる。
その炎で、何度も軍団を救ってきた。
……こいつが進化したら、どんな姿になるんだろうな。
「ヒノ。……お前も、次の段階に行くときが来たな」
キュキュッ! と、ヒノがやる気満々で火の粉を散らした。
次は、ゴロ。
【ゴロ】
属性:岩
資質ランク:C(D→C 進化済み)
レベル:46 / 上限50
タイプ:前衛・壁
技:グランド・ウォール
状態:上限まで、あと少し
さすが、進化組。
同じ生まれDでも、ヒノとは地力が違う。
Cに上がった分、一発の重さも硬さも、一段上だ。
……あと少しで上限。そうすれば、ゴロも二回目の進化で、Bへ行ける。
のんびり屋のゴロ。
でも、こいつの守りがなきゃ、俺たちはとっくに全滅してた。
一回り大きくなった背中が、今はすごく頼もしい。
そして、ソラ。
【ソラ】
属性:雷
資質ランク:B(C→B 進化済み)
レベル:53 / 上限70
タイプ:飛行・速攻
技:雷光の翼/サンダー・ダイブ
状態:伸びしろ、たっぷり
軍団の、最高ランク。
Bまで来て、上限も70。まだまだ伸びる。
……こいつがAまで行けば、いよいよ鷹宮の高みに届く。
ついこの前まで、まっすぐ飛ぶのも下手だったのに。
今じゃ、稲妻みたいに駆ける。
……育つって、ほんとにすごい。
次は、ナギ。
【ナギ】
属性:水
資質ランク:D(生まれのまま)
レベル:28 / 上限35
タイプ:支援・制御
技:水膜/霧/いたわりの水
状態:まだ伸びる
ナギは、まだ上限に余裕がある。
攻撃は控えめでも、こいつの支援は軍団の生命線だ。
……上限まで育てて、いずれ進化させれば、もっと頼れる支えになる。
いちばんの新入りで、いちばん攻撃が弱い。
でも、"ハズレ"なんかじゃない。
こいつがいるから、軍団はしぶとく戦えるんだ。
最後に――タマ。
【タマ】
属性:無
資質ランク:E
レベル:38 / 上限:――
タイプ:遊撃・物理
スキル:産卵/???
運:30
状態:規格外
……何度見ても。
こいつだけは、異質だ。
資質は、E。軍団でいちばん低い。
なのに――レベルの上限が、"ない"。
ヒノやナギが35で頭打ちになる中で、タマだけは、どこまでも伸びていく。
運は、30。何度見てもありえない数字だ。
スキル欄の"???"は、あいかわらず閉じたまま。
……いや。あの日から、ときどき疼くように、光る時もある。
地力はいちばん低いはずなのに、いちばん、底が知れない。
円城寺の言葉が、よぎる。
"厄を背負う星"。"世界を書き換える力"。
……このステータスの、静かな数字の裏で。
こいつは今も、何かをこらえているのかもしれない。
……お前は、ほんとに、なんなんだろうな。タマ。
タマは、いつもの目で「キュルッ」と鳴いて、俺の頭に乗っかった。
その、あたたかい重み。
……変わらないでくれよ、タマ。
どんなステータスだろうと、お前は、俺のいちばんの相棒だ。
こうして並べてみると、よくわかる。
進化したソラとゴロは、地力が一段、上のステージにいる。
まだのヒノとナギは、これから。……特にヒノは、もう進化の適期だ。
そして、タマは。……"別の物差し"の上にいる。
五匹、並んでいると。
でこぼこで、ちぐはぐで。……でも、これ以上ない、いい軍団だ。
誰か一匹でも欠けたら、成り立たない。
一匹ずつ。順番に。
みんなを、次の段階へ連れて行く。
それが、覚醒に頼らない、俺の育成の道だ。
派手じゃない。時間もかかる。
でも、これが俺たちの積み上げてきた道だ。
……そして、父さんも、歩いた道だ。
「よし。次は……ヒノ、お前の番だ」
ヒノが「任せろ」って感じで胸を張る。
待ちきれないのか、ぐるぐる飛び回っている。……相変わらず、せっかちだな。
炎属性の進化素材。……次は、それを探しに行く。
じいちゃんにステータスの話をすると、少し考えて言った。
「炎の進化素材か。……あれは"火口の層"だな。だが、あそこは」
じいちゃんの顔が曇る。
「……嵐の層より、ずっと危険だ。気をつけろよ」
火口の層。
燃えさかる炎の、いちばん深い場所。
生半可な覚悟じゃ、いけないだろう。
でも、ヒノにとっちゃ、あそこは力の源みたいな場所のはずだ。
嵐の層が、ソラの故郷だったみたいに。
火口の層。
……また一段、深いところへ。
でも、恐くない。
この五匹のステータスを見れば、わかる。
俺たちは確かに、強くなってる。
一歩ずつ。自分たちの力で。
あの日、E組で独りぼっちだった俺。
今は、五匹の頼れる相棒がいる。
……じゅうぶん、すぎるくらいだ。
……行こう、みんな。
次の高みへ。
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【あとがき】
第四十話、読んでくれてありがとうございます。
今回は、軍団五匹のステータスをまとめて公開しました。ソラの進化で他のみんなも育ち、こんな並びになっています。
・タマ/無・資質E・Lv38・上限なし・運30・???(規格外)
・ヒノ/炎・資質D・Lv35(上限到達!)
・ゴロ/岩・資質C(進化済)・Lv46/上限50
・ソラ/雷・資質B(進化済)・Lv53/上限70
・ナギ/水・資質D・Lv28/上限35
進化したソラとゴロは、生まれが同じでも地力が一段上。まだのヒノとナギは伸びしろ枠。そしてタマだけは、資質が最低なのに上限がなく、運30も相まって"別の物差し"の上にいます。同じ「強い」でも、ランクと進化でこれだけ意味が違う――というのを見てもらえたら嬉しいです。
そして、上限に届いたヒノが、次の進化へ。舞台は"火口の層"。
よかったら感想で、ヒノの進化後、どんな姿になると思うか教えてください。




