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『ハズレ竜タマは、軍団を産む。』  作者: akaike


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4/20

第4話 はじめてのダンジョン

 タマがレベル2になった、次の日。

 俺は、じいちゃんに、ひとつ相談を持ちかけた。


「じいちゃん。この辺に、弱いドラゴンが出るダンジョンって、ないか?」


 じいちゃんは、朝のお茶をすすりながら、ちらっと俺を見た。


「ダンジョンに、潜る気か」

「ああ。庭で鍛えるのも限界がある。タマを、もっと強くしたい」


 この世界のダンジョンってのは、百五十年前、ドラゴンと一緒に現れた、地下に広がる迷宮だ。

 中には、野生のドラゴンやモンスターがうじゃうじゃいる。

 テイマーたちは、そこに潜って、自分のドラゴンを鍛えたり、卵や資源を探したりする。要するに、この世界の"狩り場"だ。


 前世のゲームでいう、経験値稼ぎのフィールド。

 タマのレベルを上げるなら、ここしかない。


「やめとけ、とは言わん」


 じいちゃんは、湯呑みを置いた。


「だが、ひとつだけ約束しろ。"奥"には行くな。最初は、入り口付近の、いちばん弱い層だけだ」

「分かってる。無茶はしない」


 じいちゃんは、しばらく俺を見て――それから、立ち上がった。

 奥の棚から、古びた首輪みたいなものを持ってきて、タマにつけてやる。


「なに、これ」

「テイマー用の、補助具だ。ドラゴンの体調が、持ち主に伝わりやすくなる。……昔、お前の親父に作ってやったもんだ」


 俺は、その言葉に、一瞬、手が止まった。

 親父。

 俺がこの体に来る前の――この体の、本当の父親。


「形見、みたいなもんだ。持っていけ」


 じいちゃんは、それ以上は何も言わなかった。

 ただ、タマの首輪を、ぽんと軽く叩いた。


「キュルッ」


 タマが、嬉しそうに鳴いた。

 その首輪、ちょっと大きくて、ぶかぶかだったけど。

 なんだか、似合ってた。


 最寄りのダンジョンは、街外れの森の奥にあった。


 ぽっかりと口を開けた、岩肌の洞窟。

 その入り口には、国が立てた看板がある。『初級ダンジョン・三ツ岩窟。推奨レベル1〜10』。


 なるほど。初心者向け、ってことか。

 ちょうどいい。


 中に入ると、ひんやりした空気と、薄暗い通路が続いていた。

 壁が、ぼんやり青く光ってる。苔か、鉱石か。おかげで、松明がなくても歩ける。


「タマ。気を抜くなよ」

「キュ」


 タマは、俺の肩の上で、きょろきょろしてる。

 ……緊張感、あるのかないのか分かんないな、こいつ。


 しばらく歩くと――いた。


 通路の先に、小さな影。

 ネズミくらいのサイズの、トカゲみたいなモンスター。背中に、ちょろっと炎を灯してる。


 すかさず、ステータスを見る。


  ファイアリザード

  レベル3

  HP 25 / MP 8

  筋力12 敏捷11 精神5 体力10 運4


 レベル3。HP25。

 タマ(レベル2、HP18)より、ちょっと格上か。

 でも――勝てない相手じゃない。


「タマ。あいつ、敏捷11だ。お前は12。お前のほうが、速い」


 そう。タマの強みは、素早さ。

 なら、戦い方は決まってる。


「先手を取れ。一撃離脱だ。当たって、すぐ離れろ。攻撃は、もらうな」


「キュルルッ!」


 タマが、肩から飛び降りた。


 タンッ、と地を蹴る音。


 次の瞬間――消えた。


 いや、消えたように見えた。それくらい、速い。

 ファイアリザードは、まだこっちを見てる。タマの姿を、見失ってる。


 もう遅い。


 ドガッ!!


 横っ腹に、タマの体当たりが突き刺さった。

 ギャッ、とリザードが悲鳴をあげて、壁に叩きつけられる。


 でも、タマはもうそこにいない。

 ぶつかった勢いのまま、宙でくるりと身をひねって、すたっと着地。


 完璧だ。教えたとおり、一撃離脱。


「グルアアッ!」


 リザードが、怒り狂って炎を吐く。

 ゴオッ、と熱風が通路を走った。肌が、ちりっと焼ける。


 ――けど。


 その炎が、タマに届くことはなかった。

 だって、そこにもう、タマはいないから。速すぎて、炎が追いつかない。


「そうだ、その調子! もう一回!」


 タンッ。


 また、消える。

 横から、ドゴッと体当たり。すぐ、離脱。

 リザードの炎は、空を切るばかり。


 そして、三度目。


 タマが、ひときわ低く身を沈めた。

 ため。一瞬の、ため。


 タンッ!!


 地を蹴る音が、さっきより鋭い。

 弾けるように飛んだタマが、リザードの脳天めがけて――


 ズドンッ!!


 まっすぐ、突っ込んだ。


 リザードは、声もあげられなかった。

 どさり、と地面に倒れて――光の粒になって、消えていく。


 倒した。

 初めての、実戦での勝利だ。


 次の瞬間、タマの体が、ぼうっと光った。

 頭の中に、情報が流れ込む。


  【タマ】 レベル 2 → 3


「上がった! 一気にレベル3だ!」


 ダンジョンの敵は、庭の修行より、ずっと経験値がいい。

 やっぱりな。"狩り場"は、伊達じゃない。


「キュルッ! キュルルッ!」


 タマが、得意げに、俺の足元をぐるぐる回る。

 調子に乗ってるな、こいつ。


「分かった分かった、強かったよ。えらいえらい」

「キュー♪」


 ……まあ、実際、よくやった。

 お前、見た目はショボいけど、戦いのセンスは、悪くない。


 その日は、結局、夕方まで潜った。


 ファイアリザードを狩って、たまに出てくる虫型のモンスターを狩って。

 一撃離脱を繰り返して、タマは、どんどん戦いに慣れていった。


 そして、洞窟を出るころには――


  【タマ】 レベル 4

  HP 35 / MP 20

  筋力14 敏捷22 精神15 体力16 運6

  スキル:産卵(レベル5で解禁)

  レベル上限:なし


 レベル4。

 あの、HP15のティッシュ耐久が、もうHP35だ。倍以上。

 敏捷にいたっては、22。生まれたときの倍。完全に、素早さ特化で育ってる。


 そして――産卵解禁の、レベル5まで。

 あと、たったの1。


 俺は、思わず、にやけた。


「タマ。明日、もう一回潜るぞ。明日には、お前……卵、産めるかもな」


「キュ?」


 タマは、不思議そうに首をかしげた。

 まだ、自分が何を産むことになるのか、分かってない顔だ。


 いいさ。明日、分かる。

 お前が、ただのちびドラゴンじゃないってことが。


 森を出ると、空は、もう夕焼けだった。

 遠くに、街の灯りが見える。あの中に、うちの、ボロいけど大事な家がある。


 待ってろ、ひなた。

 お前が見下した兄貴は、今日、ちゃんと一歩、進んだぞ。


 俺は、肩の上で眠そうにしてるタマと、家路についた。



───────


【あとがき】


 第四話、読んでくれてありがとうございます!


 ついに、初ダンジョン回。

 タマの"素早さ型"が、さっそく実戦で活きました。一撃離脱、かっこいいですよね。


 そして、じいちゃんがくれた首輪。

 あれ、ソウマの"お父さん"の形見です。さらっと出しましたが……これも、いつか効いてきます。



 ▼次回予告

 産卵解禁まで、あとレベル1!

 タマは、いったい何を産むのか――?

 いよいよ、軍団の第一歩が動き出す!



 「続きが気になる」と思ってもらえたら、

 ★評価・ブックマークで応援してもらえると、すごく励みになります!


 次回、ついにあのスキルが発動します。お楽しみに!


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