第26話 ゴロ進化
ハズレ組との、合同レベル上げから。
俺は、軍団の育成を、さらに、加速させた。
深い層に潜り、狩って、また潜る。
地道な積み重ねの、日々。
ゴロは、来る日も来る日も、格上の攻撃を、その体で、受け止め続けた。
吹き飛ばされても、また立つ。削られても、また、前に出る。
その、まんまるの体は、少しずつ――傷だらけの、でも、誰よりも硬い壁に、なっていった。
そして――ついに、その日が、来た。
タマ Lv28
ヒノ Lv25
ゴロ Lv35 ← 上限到達!
ソラ Lv19
うちの壁、ゴロが。資質ランクDの上限、Lv35に、到達した。
「じいちゃん! ゴロが、上限まで来た!」
庭で、俺は、思わず叫んでいた。
じいちゃんが、ゴロを、しげしげと見て、頷く。
「……ああ。いい育ちだ。ここまで来れば――"進化"の、資格がある」
進化。
生まれつきの天井を、破る力。
あとは――進化素材、"大地の竜玉"を、手に入れるだけだ。
……待ってろ、ゴロ。
お前を、もっと頼れる、本物の壁に、してやる。
訓練ダンジョンの、最深部。
じいちゃんが言っていた、"大地の竜玉"を守る、守護者。
その洞窟の、いちばん奥に――そいつは、いた。
……でかい。
山が、そのまま動いてるみたいだ。
いくつもの岩を積み上げて固めた、装甲。太い四肢が、一歩ごとに、地面を揺らす。
俺は、ステータスを見た。
岩窟の主
属性:岩
資質ランク B レベル25
……ランクB、レベル25。
レベルだけなら、今のうちの軍団が、上だ。でも、油断は、できない。
こいつは、岩。その弱点は、水と草木。……どっちも、うちには、いない。
炎は通りにくいし、雷は地面に逃げる。
……つまり、真っ向から、削り倒すしか、ない相手だ。
でも――それこそ、望むところ。
なあ、ゴロ。
これは、お前の、進化の、通過儀礼だ。
「ゴロ! お前が、前に立て! ……お前の力で、その"未来"を、こじ開けろ!」
「グモォォッ!!」
ゴロが、いつになく、力強く、吼えた。
岩窟の主が、巨大な腕を、振り上げる。
ドゴオォン!!
山みたいな、一撃。
ゴロが、正面から、受け止める。
ずしィィッ……!
……重い。Lv35まで育った、ゴロの体が、ぎしぎしと軋む。
でも――退かない。
一歩も退かずに、受け止めきった。
「よく耐えた、ゴロ! ……岩には、岩だ! 押し返せ!」
「グモォッ!!」
ゴロが、渾身の力で、主の腕を、押し返す。
……すごい。あの、のんびり屋が。今、山みたいな主と、真っ向から、力比べをしてる。
その隙に。
「タマ! ヒノ! ソラ! ゴロを、援護しろ!」
タマが、装甲の継ぎ目を、突く。
ヒノの炎が、視界を、焼く。ソラが、上から、揺さぶる。
四匹、総がかりで――少しずつ、岩の巨体を、削っていく。
長い、削り合い。
主の重い一撃を、ゴロが受け。その隙を、みんなで、突く。
……何度も、何度も。
でも、岩窟の主の装甲は、厚い。
削っても、削っても、なかなか、崩れない。
ゴロの息が、上がってくる。……もう、限界か。
そう、思った、そのとき。
ゴロが、俺を、見た。
……まだだ、って、目で。
のんびり屋の、あいつが。誰よりも、諦めて、いなかった。
「……ああ。そうだな、ゴロ。もう一回だ!」
そして――
主の装甲に、大きな亀裂が、走った。
「今だ、ゴロ! 全部、ぶつけろ!」
「グモオオオォッ!!」
ゴロの、渾身の、体当たり。
ドゴオオォン!!
岩窟の主の巨体が、ぐらり、と傾いで――どうっと、崩れ落ちた。
光の粒になって、消えていく。
その、あとに。
ころん、と。
茶色く、あたたかく、輝く石が――残った。
大地の竜玉
……手に、入れた。
ゴロの進化の、最後のピースを。
俺は、その石を、ゴロに、そっと、かざした。
「ゴロ。……上限まで育って、素材も揃った。……条件は、全部、そろったぞ」
大地の竜玉が、ぼう、と、光りだす。
その光が――ゴロの全身を、包み込んだ。
「グモ……モモモ……!」
ゴロの体が、まばゆい光の中で、ひとまわり、大きくなっていく。
まんまるだった体が、ごつごつと。
背中に、岩の、尖塔みたいな装甲が、せり上がる。
小さな手足が、太く、たくましく。
……ずっと、みんなを守って、耐えて、削られてきた、その体が。
今、報われるみたいに。ひとまわり、大きく、そして、重厚に、なっていく。
……これは。
光が、収まる。
そこに、いたのは――もう、あの、まんまるのゴロじゃ、なかった。
小柄なのは、変わらない。でも――ずんぐりと、中型ほどに大きくなって。
全身の装甲が、分厚く、緻密に。
小さいのに、そこにいるだけで、地面が、ずしりと重く感じる。……そんな、圧があった。
俺は、ステータスを見た。
ゴロ
資質ランク C(D→C 進化)
レベル上限:50
新技【グランド・ウォール】
……ランクが、上がった。Dから、Cへ。
上限も、35から、50に。天井が、丸ごと、引き上がった。
そして――新しい、技まで。
「グモォォン!!」
進化したゴロが、地面を、踏みしめて、吼える。
その足元から、ずずん、と、岩の壁が、せり上がった。
……【グランド・ウォール】。
一方向だけじゃない。味方全体を、ぐるりと囲う、岩の防壁。
一方向を守るだけだった壁が――軍団みんなを、まとめて守れる"盾"に、進化したんだ。
試しに、崩れかけた岩を、そのウォールに、当ててみる。
落ちてきた岩を、グランド・ウォールが、まるごと、受け止めた。
……これなら。
この前みたいに、仲間が、落盤で分断されることも、ない。
どんな攻撃からも、軍団のみんなを、まとめて、守れる。
じいちゃんが、目を細めて、言った。
「見事だ。……お前の父さんが、初めて相棒を進化させたときも。ちょうど、こんな顔を、してたよ」
……父さん、も。
胸の奥が、また、少し、疼く。
でも、今は――純粋に、嬉しい。
タマも、ヒノも、ソラも。
ひとまわり大きく、重厚になったゴロを、目を丸くして、見ていた。
それから、わっと群がって、じゃれつく。
……相棒が頼もしくなって、仲間たちも、嬉しいらしい。
ゴロは、でかい体で、それを、どっしり受け止めて――「グモォ」と、いつもの、のんびりした声で、鳴いた。
……見た目は変わっても。中身は、いつものゴロだ。それが、なんだか、おかしくて、あったかい。
ハズレの卵から、始まった軍団が。
ついに、進化を、手に入れた。
生まれつきの天井を、努力で破る力を。
……上等だ。
これが、進化の、第一歩。
ヒノも、ソラも。いつか、みんな、進化させてやる。
そして――この頼もしくなったゴロと、もっと、上へ。
残るは、A組、特進。そして、鷹宮。
……待ってろよ。
ハズレ軍団は、ここから、また一段、強くなる。
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【あとがき】
第二十六話、読んでくれてありがとうございます!
ついに――ゴロの、初進化!
第23話で仕込んだ「進化」が、ここで結実しました。上限のLv35まで育て上げ、守護者「岩窟の主」を倒して進化素材「大地の竜玉」を入手。条件がそろって、ゴロはD→Cへ進化。まんまるの"動かない壁"が、ひとまわり大きく、重厚な姿へと変わりました(進化するたび段階的に大きくなっていく、その第一歩です)。
新技は【グランド・ウォール】。一方向を守るだけだった壁が、味方全体をぐるりと囲う防壁に。ゴロの「守る」という役割が、そのまま進化した形です。資質ランクの天井(生まれつきの才能)を、努力で破る――「ハズレでも育てれば最強に届く」を、いちばん体現した回でした。
そして、じいちゃんの「父さんも、初めて進化させたとき、こんな顔をしていた」。父の背中が、また少しだけ、近づきます。
進化は、これが第一歩。ヒノも、ソラも、いつか――。
▼次回予告
ひとまわり大きく、重厚に進化したゴロを得て、さらに強くなるハズレ軍団。
いよいよ迫る、上位クラスの強豪と、父の真実――。
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次回も、お楽しみに!




