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『ハズレ竜タマは、軍団を産む。』  作者: tatsuya akaike


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第24話 水を、裂く雷

 軍団まるごとの底上げが、実を結んできた。


  タマ Lv21

  ヒノ Lv18

  ゴロ Lv20

  ソラ Lv8


 特に、タマは、もうLv21。

 ……C組で、くすぶってる場合じゃない。

 俺は、次の昇格戦に、名乗りを上げた。相手は、ひとつ上の――B組。


「またかよ、おまえは……」


 タケが、呆れ半分、楽しみ半分で、笑う。

 ……ああ。地力は、つけた。今なら、B組にだって、届く。


 昇格戦、当日。

 闘技場の向こうから、B組の代表が、歩いてくる。


 涼しげで、静かな男子。……汐見(しおみ)、と名乗った。


 タケが、小声で、教えてくれた。


「あいつ……B組でも、指折りの水使いだ。守りが鉄壁で、攻めれば押し流される。……相性の悪い相手は、手も足も出ずに沈むって、噂だぜ」


 ……水使い、か。

 その汐見の隣に、ゆらり、と、一匹の竜が、寄り添っている。


 青く、透きとおった、鱗。

 体の周りには、薄い水の膜が、まとわりついていて、動くたびに、しゃら、しゃら、と、水の音がする。


 俺は、ステータスを見た。


  タイダル・ドラゴン

  属性:水

  資質ランク A レベル24


 ……ランクA。レベル24。しかも、水属性。


 水は、岩に強い。ゴロの壁が、削られる。

 水は、炎にも強い。ヒノの火が、消される。

 うちの前衛と、火力。その二枚は、確かに、分が悪い。


 ……でも。

 水にも、天敵は、いる。――雷だ。

 うちのソラが、それに、あたる。

 相性で言えば、負けてない。むしろ、うまく当てれば、こっちが上を、取れる。


「天野、だったね」


 汐見が、静かに言った。


「悪いけど。君の"軍団"の半分は――僕のタイダルの前じゃ、ただの水浸しだよ」


「半分は、な」


 俺は、返した。


「でも、残りの一枚が――あんたの、天敵だ」


 汐見の視線が、俺の頭の上の、ソラに、動く。

 でも、すぐに、ふっと、笑った。


「その、チビが? ……Lv8の雷で、僕のAランクを、どうにかできると? 冗談だろう」


 ……そうだ。こいつは、ソラを、見くびってる。

 それで、いい。……その油断が、命取りになる。


『――両者、はじめ!』


 タイダルが、ゆらりと、身をくねらせた。

 次の瞬間、その口から――高圧の水流が、噴き出す。


 ドバアァッ!!


 まっすぐ、ゴロに、叩きつけられた。

 いつもは、びくともしないゴロが、水の勢いに、じりじりと、押し込まれる。


「グ、グモォ……!」


「ヒノ! 援護しろ!」


 ヒノが、炎を吐く。

 でも――タイダルの水の膜が、じゅうっ、と、それを飲み込んだ。

 炎が、届かない。消される。


 ……なるほど。噂どおりの、鉄壁だ。

 ゴロも、ヒノも、まともには、通らない。


 でも――勝ち筋は、決まってる。

 ソラの雷を、あの鉄壁の水竜に、叩き込む。それだけだ。

 問題は――どう、当てるか、だ。


「ソラ!」


「ピィッ!」


 ソラが、勢いよく、宙へ舞い上がった。

 その動きを見て、汐見の目が、すっと、細くなる。


「――やらせないよ」


 タイダルの水流が、今度は、上へ。

 宙のソラを狙って、噴き上がった。


 ザバアッ!!


 ソラが、ひらり、と、かわす。

 ……あぶない。今の、掠ってたら、Lv8のソラなんて、一発で、墜ちてた。

 そうだ。ただ飛ばすだけじゃ、ダメだ。

 姿が見えてる限り、あの水流に、狙い撃たれる。


 なら――見えなく、してやればいい。


 思い出すのは、C組の昇格戦。

 あのとき俺は、ヒノの炎を、"目くらまし"に使った。

 効かない炎でも、相手の視界を奪う武器には、なる。

 ……そして今度の相手は、水。なら、あの手は、もっと効く。


「ヒノ! もう一回、炎だ! 今度は、効かなくていい! タイダルの足元に、思いっきり、叩き込め!」


 ヒノの炎が、タイダルの水の膜に、ぶつかる。


 じゅうう――ボワッ!!


 炎と水が、ぶつかって――もうもうと、白い蒸気が、噴き上がった。

 ただの煙とは、比べ物にならない。真っ白な壁が、闘技場を、覆い尽くす。


「なっ……! 何も、見えない……!」


 ……そうだ。

 水使いの、あんたが相手だからこそ。俺の炎は、"最高の煙幕"に化ける。

 相性の悪さすら、武器に変える。……それが、軍団の戦い方だ。


 これで、タイダルからは、ソラが、見えない。

 狙い撃ちは、もう、できない。


 白い蒸気の、その上から。


「ソラ! 今だ! ――サンダー・ダイブ!」


「ピィイィッ!!」


 ソラが、蒸気を突き破って、真っ逆さまに、急降下。

 全身に、青白い雷を、まとって。


 バチイィィッ!!


 水をまとったタイダルに――雷が、突き刺さった。

 水は、雷を、よく通す。

 だから――たとえLv8でも。ソラの一撃は、いつもの何倍も深く、タイダルの全身を、駆け巡った。

 全身に水をまとっていたことが、今度は、仇になる。

 自分の武器で、自分が、感電する。……皮肉なもんだ。


「タ、タイダル!?」


 しびれて、動きの止まった、タイダル。

 その、がら空きの、横っ腹へ。


「タマァ! 仕上げだ!」


 タンッ、ドガッ!!


 タマの、全力の体当たりが、突き刺さる。

 Lv21まで育った、その一撃は――重い。

 タイダルの巨体が、大きく傾いで――どうっと、崩れ落ちた。


『――勝負あり! 勝者、天野ソウマ!』


 ……勝った。

 Aランクの水竜を。B組の、鉄壁を。


 白い蒸気が、晴れていく。

 汐見が、膝をついて、呆然としていた。


「Lv8の雷に、僕のタイダルが……」


「相性は、こっちにも、あった」


 俺は、静かに言った。


「あんたが、うちの半分を封じたように。うちのソラは、あんたの天敵だ。……ただ、格上のあんたに、それを当てるのに、ちょっと頭を使っただけさ」


 効かない炎は、蒸気の目くらましに。

 その陰から、ソラの雷を。ゴロが耐えて、タマが仕留めた。

 ……四匹、全員の、仕事だ。


 汐見は、しばらく、俺の四匹を見つめて。

 それから、ふっと、肩の力を抜いた。


「……完敗だ。Lv8の切り札を、そこまで研ぎ澄ませてくるとはね。……君の軍団、面白いよ」


 その声に、もう、さっきの余裕は、なかった。

 悪いやつじゃ、ないらしい。


 その瞬間、頭に、いつもの感覚が走る。


  タマ Lv21 → 22

  ヒノ Lv18 → 19

  ゴロ Lv20 → 21

  ソラ Lv8 → 12


 特に、ソラ。大手柄で、一気に伸びた。

 ……よくやった、ソラ。お前の雷が、決め手だった。


「ピィッ!」


 ソラが、俺の頭の上で、得意げに鳴いた。


 そして、これで。

 俺は、ついに――B組へ。

 ハズレ組から、三段目。E、D、C、そして、B。

 残るは、A組と、特進。……そして、その先の、鷹宮だ。


 闘技場の、高い窓。

 理事長室に、円城寺の影があった。

 ……見てるか、円城寺。俺は、着実に、あんたのいる"上"へ、近づいてる。

 父さんが、消えた、あの日にも。


 ……上等だ。

 まだ、上がある。もっと強い、壁がある。

 でも――こいつら四匹となら、どこまでだって、行ける。


 ハズレ軍団、B組へ。

 快進撃は、まだ、止まらない。



───────


【あとがき】


 第二十四話、読んでくれてありがとうございます!


 C→B組の昇格戦。相手の汐見は、水属性のタイダル・ドラゴン(ランクA)。水は、岩のゴロにも、炎のヒノにも強い。軍団の前衛と火力を、まとめて封じてくる相手です。

 でも――水には、天敵がいる。雷です。うちには、ちゃんと"答え"がありました。育ってきた、飛行竜のソラ。

 問題は、その当て方。ソラはまだLv8で、ただ飛ばすだけじゃ、鉄壁のA級水竜に狙い撃たれて墜ちてしまう。そこで――前回(神崎戦)で使った"炎の目くらまし"を、水相手にさらに応用。炎と水がぶつかれば、ただの煙より濃い蒸気の壁になる。それでソラの姿を隠し、その陰から一気にサンダー・ダイブ。水は雷をよく通すから、Lv8の一撃でも痛烈に刺さります。


 相性が悪い=役立たず、じゃない。使い方しだい。そして、格下の切り札でも、頭を使えば格上に届く。「一匹の弱点は、みんなで補える」――軍団の真骨頂でした。

 ソウマはついにB組へ。残るはA組、特進――そして、鷹宮。



 ▼次回予告

 B組に到達したソウマ。いよいよ見えてくる、上位の強豪たち。

 そして、"上"に近づくほど濃くなる、父と円城寺の影――。



 「続きが気になる」と思ってもらえたら、

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 次回も、お楽しみに!


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