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第8話 感情のジェットコースターみたいだった(By オール)

ヒーローが官僚に持つ印象は一変した。

「そういや、話は変わるけど、内閣官房長官の会見見たか?」


「いいや、見ていないが何かあったのか」


 ルミナリエの問いにニッコニコの満面の笑みでオールは答える。あまりのニッコニコさにルミナリエは引きそうになる。祖国にいたときさえ、オールのそんな満面の笑みを見たことはなかったのだ。そこまで面白いものをオールは見たのか、と疑いながらルミナリエは彼の話を聞く。


「記者の質問がエグすぎて官房長官が答えられなかったんだなあ、これが」


「情けないな」


「だろ? それで木崎さんが質問の受け答えを代わりに行ってた。やっぱり、下手な受け答えが多いな、とか思ってたら、急に高圧的な受け答えしたりして見てて面白かった。感情のジェットコースターみたいだったな。表情は変わらないのに込められる『()()』だけは変わっていく。アレはある意味で逸材だな。あんな記者会見見たことがない」


 オールは記者会見の様子を思い出す。



『大怪獣の遺体の処理はまだ始まらないのですか』


『現在、大怪獣対策本部のメンバーを中心に処理の方法を検討していますので今しばらくお待ちください。処理が本格的に開始することになりましたら再度、記者会見を開かせていただきます』


『世界的な権威であったり、国連、他国からの力を借りながらも何故、怪獣の遺体の解体ができないんですか』


『大怪獣は未知の生命体です。その正体は今も分かっていません。現場の職員、隊員にもしものことがないようにことを進めていますので、時間が掛かってしまいます。また、国民の皆様にもしものことがないようにするために綿密な計画を立てたうえで作業を開始しますのでお時間をいただいております』


『何故、世界的に著名な科学者等ではなく、永島那由多さんを本部に招集したのですか』


『世界的に著名な科学者の方々にもそれぞれの事情があります。それもこういった事態ですので、それぞれの方が所属している組織も対応に追われてしまっています。そのため、無理に協力を要請するよりも、そういった方々が推薦する永島さんにご協力を仰いだ方が良いでしょう。あなたは無理矢理にでも現在、各国で対応に追われている皆様を招集しろと仰りたいので?』


『政府は本当に遺体を処理するつもりなんですか』


『大怪獣の遺体は処理するつもりですが』


『実際は何か遺体を利用しようとか考えているんじゃないですか』


『本当にあなたが我々に対してそう考えているのなら、記者を辞めた方が良いと思いますね。今までの我々の行動や対応を見ていれば、自ずと分かると思いますが』


『被害者支援は本当に行っているんですが』


『貴社にも貴社の社員で被害者でもある方のための支援金をお渡ししていますが、それをお知りないと。もしや、それをないことにして、我々を責めようとしていますか。もしも仮にそうであったとしたら、貴社の社長にあなたのクビを要求させていただきますが』



 高圧的というよりは逃げ場をなくす、といった方が正しいか、と思い返しながらオールはルミナリエと話を続ける。


「そこまでだったのか」


「後でニュースでも見てみろ。印象が変わるな」


 そこまでだったのか、とルミナリエは驚く。


 誰に対しても態度が変わらないオールが、人の印象が一度決まったら変わらないオールの印象が変わった記者会見。どれほどのことがあったのか、非常に興味が引かれた。


 木崎に対してのルミナリエのイメージもオールの話を聞き、変化していく。木崎に対しての彼の持っていたイメージはよくいる官僚、というイメージだった。基本的には誰にも感情を乱されない、粛々と与えられた仕事をこなす高官。所謂、政府の犬のようだと感じていた。だが、それもそうだろう。木崎は彼らに対して感情を表に出したり、高圧的に接したことはなかったのだから。


「寝る前にでも見てみるか」


「じゃあ、そのときは側で俺が実況する」


「一緒に寝るつもりか」


 怪訝な顔をしながらルミナリエがそう言えば、オールは当然だろうと頷く。何を言っているというような顔をオールはしていた。そんなオールに今日、何度目か分からない溜息をルミナリエはついた。


 ふっとそんなオールを見てルミナリエが思い出したのは一五年前の『()()()』だった。



 オールと初めて出会った日。


 笑いもせず、泣きもせず、ただ兵士達を蹴散らし、その場に立ち尽くす一人の少年。人に対して敵意しか持っていなかったような人間。


 そんな少年と初めて一緒に寝た日は彼と初めて出会ったその日だった。


 それからも時折、一緒に寝ていたこともあったなと思い出しながら、ふっ、と最後に一緒に寝た日がいつだったのかが思い出せないことにルミナリエは気付いた。


「何年振りの話だ、お前」


「一〇年振りくらいだな」


「子どもだったときはまだいいが、成人の男と寝るのは大分クるぞ」


「そうか?」


 オールは頭上にクエスチョンマークが浮かびそうなほど、キョトンとした顔をする。そして、首を傾げた。ルミナリエの意見が一切、理解されていないということが丸分かりの反応だった。


「そうじゃないのか、お前は。それならばもういい。諦める。好きにしろ」


「なら、あんたが今やってる仕事が終わるまで待ってるな。終わったら声掛けてくれ」


 オールはそう言って管理室から出て別の部屋へと向かう。ルミナリエはそんなオールの後ろ姿を見て溜息をまた、一つついた。そして彼の姿が見えなくなった頃、思考をもとに戻す。


 やはり、一つの疑問にぶつかった。


「But when it comes to this, my head hurts. What in the world is going on? Nope,(しかし、こうなってくると頭が痛いな。一体、何が起こっているんだ。いや、)」


 ──What was he going to do? The big monster. (何をするつもりだったんだ? 大怪獣は)

私はどうしようにもないほどに、人の感情に疎かったのだろう。




読んでいただきありがとうございました。お時間ありましたら、レビュー、評価等していただければと思います。

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