第6話 調査開始
武器商人は己の直感に従い、動く。
「なあ、あんた」
「へ? あ、はい!!」
「五年前の観光船が太平洋のど真ん中で沈んだ海難事故の資料何処かにあるか分かるか?」
「え、あ、えっと、それなら、うちの国のテントにあるパソコンのデータベースから確認できると思いますっ」
「OK.」
二〇分ほどその場で一人考え込んだ後、リーサルは諦めた。考えるだけでは何も進まない。というか、考えても、何が自分の中に引っ掛かったのか分からなかった。そういうときは手間になろうとも遠回りになろうとも、気になることに関係する資料等に目を通すことが必要だった。
「ああ、あとこの大怪獣にレントゲンしておいてくれないか」
「レントゲン、ですか?」
「できたらCTとMRI、MRAも。俺が言ったって言えば、政府もやらせてくれるだろ、多分。ほら行け行け」
「りょ、了解しました!」
レントゲンにCTとMRI、MRA。
それらをすれば、大怪獣の内部の様子が分かる。分かるかもしれない。金も設備も掛かるだろうが、大怪獣の遺体の処理の費用に比べれば痛くも痒くもないだろう。日本国民も文句は言うだろうが大怪獣の遺体がなくなるというのならば、喜んでそれらを実施する費用なんて安いものだろう。
「はあ、めんどくせ。まあ、いいけどさ」
「あ、あの、何か僕達、することありますか?」
訛りのある発音で誰かがリーサルにそう声を掛ける。リーサルがそちらを見れば、そこには十代後半もしくは二十代前半ほどのどこかの国の軍人がそこにはいた。
「うん? あー、そうだな。なら、この資料探してくれ」
「はいっ」
「海難事故の発生原因の報告書、事故発生位置が分かる資料、観光船に乗っていた乗客名簿。あと、今までの大怪獣の内外ともに撮った写真全部」
リーサルの日本に対する印象は自分達にとって都合の悪いと思っていたことが実は都合のよいものだった、というときに綺麗なほどの掌返しを行う、というもの。そんなイメージを持っていた。だが、それでもリーサルがそんな日本からの協力要請を受け入れたのは資金援助と大怪獣の肉片の入手のため。それ以外の理由など、存在はしなかった。
「まあ、最低限の仕事はしますか」
だが、依頼は依頼。任せられたものは任せられたもの。
己にどのような企みがあれど、正式に自分のもとへと来た依頼ならば、その依頼をこなす。こなさずに自分の利得となるようなことだけをすれば、すぐに顧客は減っていく。それならば、最低限の任せられた仕事は行う。
それがリーサルウェポンの武器商人としての信条だ。
その足でリーサルは自衛隊が居を構えるテントへと向かう。彼の今回の役割は武器並びに兵器、資源の援助だ。現場との連携が不可欠な役割となれば、彼は自らの足で現場へと運ぶのだ。
「Perche si e ricordato di quell'incidente quando ha visto il grande mostro, signor Nagashima?(つーか、どうしてナガシマさん、大怪獣を見てあの事故のこと思い出した?)」
そして、そんなリーサルの脳裏に浮かんだそんな疑問は誰の耳にも聞こえないまま、風に流された。
俺は俺の信条を信じて、やり続ける。
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