4- 神器
神器【物を探す眼鏡】は神器というだけあって意外と細かい融通が利くことが分かった。
具体的には武器がどこにあるかを願うと槍や剣のような武器からムチやブーメランのような武器とは言えない物も自分の都合のいい範囲で強調される。
「師匠、この槍はどんな武器なんですか?」
神器らしくきらびやかに装飾された1本の槍、もしかしたらすごい武具なのかも。
「それ? えーっとね……神器【万物を貫通する槍】だったかな? ――無難なの選んだね」
槍ということで戦いやすいし無難かも。
となると後は防具と盾だね。
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防具は神器【空気のような鎧】、盾は神器【跳ね返す盾】だった。
「師匠、神器って何というか、地味ですね」
「――ま、かゆい所に手が届くように私たちは作るから。 ふふ、結構地味なの多いよ?」
「本当にそうですね。 師匠、これお願いします」
「――生きて帰ってきてね」
師匠に鍵を神器化してもらう。
これで外に出れるはずだ。
「はい!」
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「――あっつ!」
ずっとあの部屋にいたからわからなかったけどここめちゃくちゃ深かったのね……
まぁいいや、食べられるものを探さなきゃ。
最初に使うものは【物を探す眼鏡】。
ここから一番近い食べられるものは……いた。
強調されている形は……ドラゴン!?
「まさかアイツじゃ……いや、あいつは頭が2個あったから違うかな」
と言っても神器が一番近い食べ物があいつだから戦うしかないんだけど。
神器の強調表示を頼りにドラゴンの目の前にたどり着く。
【ギュルル……】
ドラゴンという生き物は頭がいいのに脳筋で戦いを挑まれれば真っ向勝負を受けてくれる。
「先手必勝! 伸びろ! 【万物を貫通する槍】!」
右手で空中を突いた槍は真っすぐ伸びていきドラゴンの足を貫き引っ込んでいく。
「――すごい」
父上の【万物を切断する剣】の切断と見間違うかのようにスルっと貫通している。
流石は神器というべきか……
――あれ、父上は【万物を切断する剣】を最高傑作と言っていたけど人間には神器は作れないって師匠が言ってたし……?
【ギュルォォォ!!!】
そんな考えが頭をよぎったがドラゴンの咆哮でその考えを放棄する。
「さっさと倒れろ! 俺は生きたいんだ!」
ドラゴンの胴体を狙って槍を伸ばす。
流石にどこかで止まるかと思っていたが、何の抵抗もなく背中から槍の先端が飛び出る。
【グルォォ!!】
槍の一撃などものともせずに口が赤く光り輝き、強力な熱戦が浴びせられる。
鉄なぞ一瞬で溶かす熱戦、普通の盾なぞあってないようなものだったが……
そこは神器、ものともせずに熱戦の100%を相手に返していく。
【ギュルァァ!?】
「よし!」
自分の出した熱戦をもろに食らって悶えている。
こんな奥深くにいるドラゴンだ。
この辺りの最高捕食者、負けることに慣れていないだろう。
さらなる追撃のために【物を探す眼鏡】を使ってドラゴンの弱点を探す。
光輝いた場所は脳天と胴体のど真ん中1点。
おそらくは魔石と呼ばれる魔力機関。
ドラゴンともなるとかなり大きいと思ったけどむしろ小さい。
俺はその一点を狙って槍を伸ばす。
【グルルァァ!!】
熱戦では効果が無いとわかったドラゴンが大きな爪を俺に振りかざしてくる。
それを俺は盾で受け止め、ドラゴンの腕は上方向に吹っ飛んでいく。
「今だ!」
狙うはドラゴンの魔石1点、そこを槍で貫かれ、ドラゴンをドラゴンとして維持するための魔力が絶たれ地面に伏していく。
――師匠の武器を使っている俺が言うのも寒いが、神器の前に普通のドラゴンなんて多分雑魚なんだろう。
伝説にある神龍と呼ばれる龍などと戦うときこそ神器が映える場面だと思う。。
「流石師匠です……そういえば」
途中に考えを止めた父上の最高傑作の【万物を切断する剣】について。
今思えば【万物を貫通する槍】も似たような名前だ。
「聞いてみようかな」
もしかしたら……いや、まさかね。
とりあえず火をつけるためのドラゴンの魔石と肝、それと食べて美味しい所だけ持って行こう。
流石に大きすぎる。
ドラゴンの素材は勇者の武具に使われるほどの物で残すのはもったいない。
まぁ俺に加工はできないんだけど。
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「【万物を切断する剣】? あー……誰かが作ってた気がする」
「父上……」
今となってはあきれるばかり。
神様の武器を自分の最高傑作というか……
「それでそれで? その後ろにあるお肉が今回の成果? 神器があるとはいえ5歳なのによくやる」
「はい!」
「それに神器を作れるだけじゃなくて扱うのにも適性を持ってたね。 よかった」
「適性が無かったらどうなってたんです?」
「神器をうまく扱えないの。 だから、もしかしたらって」
下手すれば盾や槍をうまく使えずに竜に頭から食われてたかもしれないってこと……
「それで、試練は」
「もちろん合格。 ご飯どうぞ」
「はい!」
早速竜の魔石をハンマーでたたいて肝に着火する。
母上から教わった火系の魔物の便利知識、まさかこんなところで役立つとは思わなかったなぁ。
「――ドラゴンステーキなんて初めてだなぁ」
父上が何回か食べたことあるって聞いたけど味までは教えてくれなかった。
「どんな味がするんだろう……」
「――美味しそうだね」
「! ごめんなさい、向こう行きますね」
完全に失念していた。
師匠は3万年も封印状態、そんな師匠の前でこんなものを食べるなんて拷問だと思う。
「いや、いいよ、別に、大丈夫だって!」
「あっちの部屋に行ってますね」
「あ、うん……」
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洞窟の中だから1日の概念が分からないけど、次の日にまず最初にやったのは砂まみれの部屋を片すことだった。
ここを僕の自室兼作業部屋にしろとのこと。
「倉庫というより作業部屋?」
「私のいる部屋は超神器【大地創造機】を置くのと神器倉庫にしてた場所だし。 こっちは生活スペースなの」
「なるほど……師匠、これからよろしくお願いします」
「大丈夫だよ、人間の寿命が終わるかここから出るまでは教え込んであげる」
神様の目に少しだけ光が宿った気がした。
――神器で片そうと思ったけどできなかったから1日潰れちゃったし明日からだけど。
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次の日、鉱石の取り方を教えてもらった。
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次の日、神器の基礎について教えてもらった。
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次の日……
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「そういえば……【大地創造機】が置かれた部屋には今師匠……創造神エルガが封印されているんだよな……」
修行中のとある日の寝る前にぽっと思いついたことだった。
【大地創造機】が出すエネルギーで師匠を封印しているって言ってた。
【大地創造機】は今どこに誰が持ってるんだ?
鍛冶神ストス?
でもそれならここが火山になってるのもおかしいしな……
「【物を探す眼鏡】を使うか」
何個もあるものを探すときは距離を絞らないとまずいんだけど1つしかない単品を探すんだったらどんなに距離を広げても大丈夫だろ。
しばらくして、【大地創造機】が強調される。
「……ん? 結構近いな? ――動いてる? って! おいおいおいおい!」
その陰に映るのは特徴的な2本の頭。
俺が最初に出会ったあの化け物、あいつの心臓が【大地創造機】になってるんだ。




