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すると給湯室から自分の分のコーヒーを持ってきた高野が
「ああ、今まで小川とバディを組んでたのに、次からは遅刻人と一緒なんて心配だなあ」
とわざとらしく肩をすくませてみせた。
「はあ? 」
「なんだ俺は嘘ついてるか? 」
今日入ってきたばかりの新人に対して、随分子供じみた嫌みを言う高野だが、バディを組み力を合わせなければならない上司である。言い返せるはずもなく、由莉は黙って手元の資料に視線を落とした。
それから暫くして高野のデスクの前に由莉が静かに書類を置いた。まだ高野のコーヒーには少し温もりが残っていて、時間にすると十分も経っていない。
「早すぎないか……」
「そうですかね? 」
訳がわからないとでも言うように首を傾げる本人に自覚はないようだが、初日に遅刻してくるくらいだからと、たかを括っていた高野の目を見張る優秀さである。