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夜の帳がおりる頃  作者: 神無 乃愛
第二章
16/17

6


「味より栄養価」を謳った作物はバークス公爵領内で爆発的に栽培された。

 他の痩せた大地でも育つ作物とあわせて、少しずつ自給率が向上していく。

 いい加減、帝都並みといわなくても他地域と同じくらいの物価にならないと、作物を他地域に出してやれない。


 ゴドフリーが次に編み出したのは、麻に似た植物で作る織物だった。

「……いいところに目をつけられた」

 ただ、それを取り尽してしまえば酪農が成り立たない。他の穀物を家畜に与えることも出来ないこの土地では難しいだろう。

「さて、どうなさるおつもりかな、殿下は」

 この地に関して言えば、どちらかを取るということは出来ないのだ。

 ビアの実を育てるには、実が熟すまで葉をつけていないといけない。そうしないと、ただでさえ癖のある実が尚更酷くなる。

 実践したトーマスが導き出した答えだ。今までの食料以上のダメージを与えてくれた唯一の食物である。

「……所長。ガラスの件、どうします?」

「まだ機密で。あんなもの知られたら陛下が横取りするからね」

 そんなことをされてしまえば、この地に住む住民は本当に危ない。

 他の地域比べれば貯蓄額は少ないものの、内職のおかげでだいぶ向上している。

「絹生産はどうなりそう?」

「ビアの葉、食べてくれませんよ」

 これまた頓挫してしまう。ゴドフリーに言われる前からトーマスとて色々考えているのだ。

「電磁波を取り除くのも無理、作物を育てるのは難しい、挙句の果てには新しい内職も出来ない。八方塞だね」

「所長。……お願いします。そういう事を明るく言わないでください」

「電磁波を何箇所かに纏められたらいいんだけどねぇ……」

「……何度その実験やってます?」

 合間を見てやってはいるが、いまいち上手くいかない。


 流石に、こういった記憶は無い。トーマスとして産まれてから初めての試行錯誤を繰り返している。

「トーマスッ!!」

 セグレスがもの凄い勢いで部屋に入ってきた。

「どうしたの?」

「『どうしたの?』じゃあない!! 最初に植えたビアの木が変異を起こしてやがる!」

 流石にその言葉に驚き、クレールと共に部屋を出た。


「……なに、これ」

 初代交配の「ビア」がおかしかった。

「……電磁波の吸収率、半端ないですよ」

「まさか、と思うけど」

「これ、既にビアの実じゃないですね。変異種で食べれません。毒性が強くなってます」

 ここに来て、こんな失敗をするとは。

「所長、逆です。ビアの木のすぐそばは電磁波が酷いですが、そこから数メートル離れたところは電磁波を感じません」

 その言葉にセグレスとトーマスは希望を見出した。

「この地に、何か植えようと思う」

「だね。楽なところから行こうか」

 セグレスとすぐさま話が合い、ゴドフリーに話を持って行く。


 その後、「電磁波除去用」のビアのと食物用のビアに分かれることになった。


 食物用のビアは早生品種とも呼ばれ、電磁波を吸収しにくく改良されたものである。


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