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夜の帳がおりる頃  作者: 神無 乃愛
第二章
13/17

3


 農地改革はトーマスたちが率先して以前からやっていた。

 それをゴドフリーに一任するだけである。


 よその地域ではほとんど食べられることのない、雑穀がここの主食である。

 トーマスがこの地に来た時に一緒に持ってきたもので、今ではこれ無しでは生きていけない。

 痩せた大地でも量が多く採れ、連作障害もほとんどない。

 この土地を調べた上で持ってきたものだ。


 ちなみに、何故その穀物をトーマスが持っていたかというと、祖父がよく食べるものだったからである。

 祖母の産まれた土地はここのように貧しかったという。炭鉱で成り立っていたため、カーン帝国の侵略をよく受けていたそうだ。

 そして、停戦成立。


 それを破って攻めてこられたとき、祖母は孤児になったらしい。

 その戦いこそ、この土地を掠め取れた理由だ。


 祖父はよく言う。

「この土地は祖母が生まれ育った土地を生贄にして得られた大地だ」と。

 その通りだとトーマスも思う。


 二十近く離れた夫婦だったそうだ。



 雑穀は味がしない。この土地には調味料もない。


 野菜も育ちが悪い。


 だから幼い頃の死亡率が高すぎる。



「……しかし、どうしたものか」

「所長? どうしたんです?」

「このまま殿下にこの改革を譲り渡していいものかと悩んでいる」

 その言葉にクレールが苦笑していた。

「どこまでワーカーホリックなんですか、あんたは。アーベル将軍にいただいた作物もあるんですから、公爵様に任せましょうよ。どうせ、現地指導はアーベル将軍ですよ。何かあったら所長のところに……来ましたよ」

 呆れ果てたクレールの言葉が途中で切れた。

「トーマス殿、この石をどうするつもりだ?」

「硬化ガラスの原材料。上手く配合さえ間違えなければ宇宙用ガラスくらいにはなるから」

「……よくぞこんなもので……」

「殿下には内緒ね。帝国に知られたら、根こそぎ持っていかれるから」

 ただでさえ、窓を多く、大きくした宇宙船の構想を帝国に取られた。これまで格安で奪われたら、この地域の生活が成り立たなくなる。

「配合はトーマス殿の頭の中か?」

「僕じゃない。クレール副所長」

「基礎は所長ですよ」

 にっこり笑ったクレールがアーベル将軍に返していた。

「セルゲさん、農地改革全権殿下に譲渡しますから、そっちで好き勝手やってください。ちなみに、宮殿近くに地下開発室がありますから自由に使ってください」

 この内職にまで小うるさく言われる位なら、農地改革くらいやってもらおうか。

 トーマスは変な意味で腹を括った。


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