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鋼と鼓動 ~機械の体で目覚めた俺が、七つの封印に失くした自分を探す物語~  作者: TAKA


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第94話 「去れ、と王は言った」

短い休息を経て、四人は黄金の門をくぐった。門の先で、螺旋は雲を抜けた。眼下には果てのない雲海が広がり、仰げば空の青は深く、陽は近い。だが感慨に浸る間はなかった。頂から吹き下ろす風が、壁のように四人を押し返してくるのだ。熱くはない。ただひたすらに重く、拒む風。一歩進むたび、見えない巨大な掌に胸を押されるようだった。「これは、気流じゃない……!」。テオが結界を風上へ傾けて叫ぶ。「意志だ! 何かが、僕らを通すまいとしている!」


その時、声が、降ってきた。「――去れ」。柱全体が共鳴する、鐘のような声。四人は凍りついた。守護者が、言葉を発した。灰原の王の掠れ声とは違う。朗々と天から降る、王の声。「去れ、小さき者たち。この先に、道はない」。フィーナが風に逆らって怒鳴り返した。「あんたが、ガルダ!? 悪いけど、通らせてもらう! その先に、この人の失くしたものがあるのよ!」。一拍の沈黙。風が、わずかに揺れた。次に降ってきた声には、隠しようのない苦悶が滲んでいた。「……存じている。誰よりも、存じている。……だが」。声が、軋む。「私はもう、この身の内の穢れを抑えきれぬ。貴殿らが頂に立てば、私は……この爪で、この焔で、貴殿らを――あの方を、害してしまう」。だから去れ、と。風の壁は、王の悲鳴だった。


ノアは、風の中へ一歩を踏み出した。窓を高く掲げ、渾身の光で文字を灯す。頂の王へ、届くように。「僕は、あなたを知らない。でも――僕の胸は、あなたの声を知っている、と言っている」。心臓が、痛いほど脈打っていた。「置いてはいけない。淀みに呑まれていくあなたを置き去りにして、先へ進むことなんて、できない」。風が、一瞬、完全に凪いだ。雲海の上を、長い長い沈黙が渡る。やがて降りてきた声は、覚悟の底から絞り出すような声だった。「……ならば、来い。そして――私が私であるうちに、為すべきを為し給え」。風の壁が、割れた。


最後の螺旋を、四人は駆け登った。ノアの胸元でザラの護符が淡く熱を放ち、灼熱から心臓を庇うように光る。回廊を這い昇っていた黒い糸は、いまや束となり、脈打つ血管のように太く、すべてが頂の一点へと注ぎ込まれていた。テオが息を切らして呻く。「淀みの総量が、桁違いだ……。あの王は、こんなものを、たった独りで……」。光が、近い。最後の段を蹴った四人の視界が白に灼かれ――そして、開けた。そこは、世界のどこよりも空に近い、円形の頂だった。

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