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鋼と鼓動 ~機械の体で目覚めた俺が、七つの封印に失くした自分を探す物語~  作者: TAKA


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第93話 「焔羽の騎士」

中腹を過ぎると、回廊は一つの大広間へと開けた。天井から光の帯が幾筋も差し込み、正面には太陽と翼の紋を刻んだ黄金の門が、固く閉ざされている。門の前には、一体の像が立っていた。無数の黄金の羽根を鎧のように束ねた、鳥頭の騎士像。四人が広間の中央へ踏み込んだ、その時。像の羽根が一枚残らず、ざわり、と逆立った。灯った双眸は――澄んだ金と、濁った黒とが、まだらに混ざり合っていた。窓が告げる。「中門の番獣――焔羽の騎士。……淀みに、半ば呑まれてる」。


騎士の初動は、風だった。姿が掻き消え、次の瞬間にはフィーナの眼前で羽根の剣が閃く。受けた剣ごと、彼女の体が数歩も滑った。「速いっ……! 今までの比じゃない!」。返す刀で騎士が翼を振るえば、燃える羽根の刃が雨となって降り注ぐ。テオの結界が悲鳴を上げ、掠めた一枚がヴェルナの肩口を裂いた。傷は浅い。だが火の羽根は肉を焼き、彼女は歯を食いしばって槍を構え直す。「……傷の痛みより、腹が立つ方が先だ」。乱撃の中、ノアの瞳だけが冷静に騎士を視ていた。視える。羽根の鎧の下、両翼の付け根に、黒い糸が結び目のように絡みつき、騎士の体を裏から操っている。「翼の付け根! あの黒い結び目を断てば――あの騎士は、正気に戻る!」


作戦は、旅路の集大成だった。テオの拘束の結界が羽根の雨を受け止めて道を作り、フィーナが正面から打ち合って騎士の剣を釘付けにする。ヴェルナが肩の痛みを押して宙を舞い、左翼の結び目を槍の一突きで貫いた。騎士の動きが、がくりと乱れる。「右は、僕が」。脚の権能で懐へ潜ったノアが、火脹れの掌もかまわず騎士の翼を掴み、密着の距離から、細く研いだ光の針で右の結び目を焼き貫いた。黒い糸が、悲鳴に似た音を立てて蒸発する。


騎士は、剣を取り落とした。まだらの双眸から黒が抜け、澄んだ金色だけが残る。そして騎士は、ノアの前に静かに片膝を折った。声は、ない。ただ、羽根の指が震えながら天を指し、それから自らの胸を押さえ、深く、深く、こうべを垂れた。――王を、お救いください。声なき懇願が、痛いほど伝わった。騎士が黄金の門に触れると、扉は内側から光を灯して開き、役目を終えた番人は、無数の羽根となって光の帯の中へ散っていった。開いた門の奥から吹き下ろしてきたのは、これまでの熱風ではない。重く、冷たい――拒絶の風だった。広間の隅にへたり込んだテオの鼻から、つ、と一筋の血が垂れる。「……すみません。少しだけ。本当に少しだけ、休ませてください」。魔力の底が、見え始めていた。

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