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第83話 「内より、断ち給え」
「なら、あの黒い繭ごと撃ち抜けば」。フィーナの言葉に、ノアは首を横に振った。窓に、苦い文字が灯る。「光は、魂ごと断ってしまう。繭を撃てば、中の焔も――王の魂も、消える。それは救いじゃない」。繭だけを剥がし、焔に触れず、黒だけを焼く。そんな細工が、暴れ狂う相手にできるはずが――。「……できるよ」。淡い光の文字が、静かに宙へ浮かんだ。リオンだった。「魂には、魂しか触れられない。僕の手なら、あの繭を掴んで、開ける」。
テオの顔から、血の気が引いた。「駄目だ……! あの淀みに触れたら、兄さんの存在ごと、焼かれる!」。リオンは穏やかに微笑み、ゆっくりと文字を綴った。「僕の命は、三年前に終わっている。ここにいるのは、伝え残したことがあった、その未練だけだ。……なら最後に、もう一つだけ残したい。お前たちの、道を」。少年が言い返すより早く、玄室の奥で王が咆哮し、最大の斬風が壁を割った。時間は、もうなかった。淡い兄の姿が、覚悟を決めて、嘆きの化身へと向き直る。




