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第68話 「見えすぎる瞳」
フィーナが祭壇の中央に、ただ一人で立つ。剣を掲げ、空の王を真っ直ぐに見上げて挑発した。王が、翼を畳む。来る。太陽を背にした黄金の影が、一直線に墜ちてくる。ノアの鼻が、大気の悲鳴を読み続けた。まだ、まだ――軌道はもう、変わらない。窓が青く爆ぜた。「今だ!」。脚の力で横合いから割り込んだノアが、王の眼前で、両手に凝らせた光を、槍ではなく、爆ぜる閃光として解き放った。
見えすぎる瞳が、白く、灼かれた。視界を焼かれた王は、それでも止まれない。フィーナは紙一重で身を投げ、テオの結界が王の巨体をわずかに逸らす。黄金の巨躯は祭壇に墜ち、石畳を割りながら滑った。「今よ!」。裂けた翼を引きずったままのヴェルナが槍で右翼の付け根を床へ縫い止め、フィーナの刃が、その関節を深々と断ち割る。びくん、と王の巨体が跳ねた。もう、空へは戻れない。だが次の瞬間、墜ちた王の全身から、黒い淀みが噴き上がった。狂った咆哮が轟くと同時に、眼下で渦巻いていたはずの嵐が、生き物のように頂へと逆巻き昇ってくる。抜けるような青空が、見る間に黒雲へと呑まれていった。




