58/75
第58話 「雲隠れの町」
幾日も街道を歩くうち、道は次第に、険しい高地へと変わっていった。ノアの窓が示す次の封印は、雲の上――遥か頭上に聳える、万年雲に覆われた峰の頂で、青白く点っている。テオがその峰を見上げ、息を呑んだ。「あんな高い場所に、封印が……。いったい、どうやって登るというんでしょう」。
その麓に、石造りの小さな町があった。だが、町に活気はなかった。重く垂れ込めた雲から、絶え間なく不穏な風が吹き下ろし、家々の戸は固く閉ざされている。通りを行く人々の足取りは、どこか重く、生気がない。よそ者である四人へ向けられる視線にも、歓迎ではなく、怯えと疑いの色が、濃く滲んでいた。
町外れの薬草店で、ようやく一人、まともに口をきいてくれる者がいた。ミラと名乗る、気丈な若い娘だった。彼女は、棚に並んだ薬を絶え間なく調合しながら、疲れきった声で言った。「旅の人。悪いことは言わない。今すぐ、この町を出た方がいい。ここはもう……長くは、もたないかもしれないから」。その奥の部屋には、青白い顔のまま、眠って目を覚まさない幾人もの病人が、静かに横たわっていた。




