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第57話 「焚き火の伝承」
ヴェルナは炎を見つめ、しばらく黙ってから、ぽつりと口を開いた。「……お前たち人間の話では、封印は『世界を滅ぼしかけた化け物を、人が閉じ込めたもの』なのだったな」。テオが頷く。ヴェルナは、静かに首を横に振った。「私の一族に伝わるのは、少し違う。私たちは、あれを『封じ込める』とは言わなかった。『お守りする』――そう教えられて、育った。確かに番人ではあった。だが、化け物を閉じ込める牢の番ではなく、何か大切なものを、守る番なのだと」。
テオの眼鏡の奥の目が、戸惑いに揺れた。守る? あれを? フィーナも怪訝な顔をする。だが、ノアだけは、胸の奥が、とくりと鳴るのを感じていた。リヴァイアサンの封印の、さらに奥で脈打っていた、あの気配。敵意ではなかった、懐かしいような、あの感覚。窓に、ノアの問いが灯る。「人の伝承と、竜人の伝承。どちらが、本当なんだろう」。誰も、その答えを持っていなかった。ただ焚き火だけが、静かに爆ぜていた。




