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第48話 「奔流の谷」
遺構を下りきると、左右を切り立った岩壁に挟まれた、深い谷が口を開けていた。その谷底を、目に見えぬほど速い水の奔流が、轟々と渦を巻いて流れている。テオが、青ざめた。「これは……海溝の底を流れる、強い潮の流れだ。あれに巻き込まれたら、ドームごと、どこまでも押し流される」。
渡るには、岩壁から突き出た、わずかな足場を伝っていくしかなかった。だが、流れの勢いは、ドームの膜を、絶えず外へ引きずろうとする。「テオ、結界がもたない!」。フィーナが叫ぶ。ノアはとっさに、岩肌に深く爪を立てるように、腕の力で四人分の体を繋ぎ止めた。鋼すら凌ぐ腕の力が、奔流の圧に、辛うじて打ち勝つ。
一歩、また一歩。流れに逆らい、四人は身を寄せ合って、足場を渡っていく。途中、横穴から飛び出した魚型の魔物に幾度も妨げられながら、それでも、誰一人欠けることなく、ようやく谷を渡りきった。対岸の岩陰で、テオが膝をつき、荒い息を吐く。「……魔力が、ごっそり持っていかれました。けれど、ここまで来れば、封印は、もう近いはずです」。




