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第42話 「最後の竜人」
霧を裂いて現れたのは、若い女だった。褐色の肌に、頭からは小さな角が伸び、背には、鱗に覆われた翼が折りたたまれている。竜人族――その、生きた姿。手にした槍の穂先を、彼女はためらいなく、三人へと向けた。「人間が、何をしに来た。この島を荒らすつもりなら、容赦はしない」。
フィーナが、ゆっくりと両手を上げ、敵意のないことを示す。「待って。荒らしに来たわけじゃないの。私たちは、この島にある封印に、用があるだけ」。その言葉に、女――ヴェルナの目つきが、かえって険しくなった。「封印だと? あれに手を出すつもりか。あれが、どれだけのものを奪ったか、お前たちは何も知らないだろう」。
ノアが窓に文字を綴り、事情を伝えようとした、その時だった。地の底から、廃墟全体を震わせる、不気味な地鳴りが轟いた。ヴェルナの表情が、さっと変わる。「……まずい。封印が、また騒いでいる。あいつらが、湧いてくるぞ」。槍を構え直す彼女の声には、こちらへの警戒とは別の、切迫した響きがあった。




