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第40話 「海が凪ぐ時」
裂けた眉間から、海蛇がたまらず鎌首をのけぞらせる。その無防備な喉元へ、ノアは渾身の光の槍を解き放った。白い奔流が鱗を貫き、巨体を内側から撃ち砕く。断末魔の悲鳴とともに、海蛇は白波を上げ、ゆっくりと深い海へと沈んでいった。
凪いだ海の上に、静けさが戻る。ガレオは舵輪に手を置いたまま、しばらく、誰もいない海原を見つめていた。やがて、亡き息子に語りかけるように、ぽつりと呟く。「……見ていたか。父さんは、まだ、舵を握れるぞ」。その頬を、一筋、涙が伝った。
彼は袖で乱暴に目元を拭うと、ノアたちを振り返り、初めて、不器用に笑った。「礼を言う。お前たちのおかげで、俺は、ようやく前を向けた。約束どおり――お前たちを、あの島まで送ろう」。船首の向こう、霧をまとった島影が、静かにその輪郭を現し始めていた。次なる封印は、もう、目前に迫っていた。




