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第38話 「もう一度、舵を」
その夜、海蛇は再び現れた。今度は港の中まで深く入り込み、係留された船を次々と砕き、家々をなぎ倒していく。逃げ惑う人々の悲鳴が、夜の港にこだました。フィーナとノアが必死に食い止めるも、相手は水を得て勢いを増し、じりじりと押し返されていく。
その光景を、酒場の窓から、ガレオは拳を握りしめて見ていた。砕かれる船。逃げる人々。二年前の、あの光景が重なる。――このままでは、また、守れなかった者の屍が増えるだけだ。彼は、震える手で、長らく触れていなかった舵輪の感触を、思い出していた。
「……くそったれ」。ガレオが酒場を飛び出し、ノアたちの前に立った。その目の奥には、消えかけていた船乗りの火が、再び灯っていた。「俺の船を使え。あの化け物の通り道なら、俺が一番よく知っている。二年ぶりに――舵を握る」。フィーナが力強く頷いた。「あんたが舵を取って、私たちが斬る。それでいきましょう」。




