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第35話 「沈黙の船乗り」
港の者に尋ねると、皆、口を揃えて言った。あの島へ渡れる船乗りがいるとすれば、たった一人。今は酒に溺れ、二度と海へ出ようとしない、老いた船長だけだろう、と。
三人は、港の外れの古びた酒場に、その男を見つけた。隅の席で、白髪交じりの大男が、ひとり黙々と杯を傾けている。フィーナが島への渡航を頼むと、男は顔も上げずに、ただ一言、「断る」とだけ返した。「あの海には、もう出ん。何があってもだ」。
テオがそっと町の者に事情を聞くと、男――ガレオは、かつてこの港一番の船乗りだったのだという。だが、ある時あの海の化け物に船を襲われ、息子を喪って以来、二度と舵を握らなくなった。にべもない拒絶の裏にある、深い傷。ノアは窓に灯る言葉を見つめ、静かに考え込んだ。彼の心を、そして海への道を、どうすれば開けるのか――。




