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第33話 「風を追い越して」
新たに得た脚の力で、戦況は一変した。ノアは魔狼の群れの間を、風のように駆け抜ける。一匹に光の刃を浴びせては、瞬時に次の一匹へ。狼たちは、目で追うことすらできず、次々と斬り伏せられていった。残った群れは、敵わぬと悟って森へ逃げ去った。
村は救われた。だが、慣れない速さに、ノアは少し手こずってもいた。止まろうとして勢いがつきすぎ、納屋の壁に頭から突っ込んで、派手な音を立てる。フィーナが噴き出した。「……力は本物なのに、扱いがそれなのね」。テオが感心したように呟いた。「やはり、取り戻した体には、ただの肉体以上の“権能”が宿っている。封印が、あなたの力そのものだという証ですね」。
助けた村人たちに見送られ、三人は再び街道を歩き出した。ノアは、まだぎこちない足取りを確かめながら、こぶしを握る。腕に、脚に。取り戻すたびに、自分が少しずつ、“本当の自分”へ近づいている――そんな確かな手応えが、胸の奥にあった。




