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第32話 「目覚める疾さ」
海を目指す街道の途中、三人は、煙の上がる小さな村に行き合った。村は、群れをなした魔狼に襲われている最中だった。ノアたちは迷わず駆けつける。フィーナが剣を抜き、テオが村人を結界で囲って守る。
その時だった。逃げ遅れた一人の子供が、広場の真ん中で尻もちをつき、その背後から、一際大きな魔狼が牙を剥いて躍りかかった。距離が遠い。フィーナの剣も、ノアの魔法も、間に合わない――誰もがそう思った刹那、ノアの両脚に、燃えるような力が満ちた。
地を蹴ると、体が、風を置き去りにするほどの速さで前へ飛んだ。瞬きの間に子供の前へ滑り込み、振り下ろされる牙を、光の刃で下から斬り上げる。魔狼が血を噴いて宙を舞った。子供を背に庇いながら、ノアは自分の脚を見下ろし、息を呑む。視界の窓に、新しい文字が灯っていた。「封印より還りし力――『脚』の権能、解放」。取り戻した体は、ただ生身になっただけではなかったのだ。




