第33話 九条の思い
俺は強くならなきゃ、強くなって白峰さんの仇を討たなければ。その為なら、何でもしたっていい。人間じゃなくなってもいい。
俺はそんな考えで、修行をしている。
そんなある日の夜、月明かりのような声が扉越しに聞こえて来た。
「九条くん、私、神代だよ。ちょっとでいいから話がしたいの。私、いや私だけじゃなくてみんな九条くんのことが心配なの。お願い。出てきて。」
声の主は神代さんのようだ。神代さんは扉を叩きながら言ってきた。
神代さんは暇なのか、俺なんかに構ってるぐらいなら、修行なり何なりして、白峰さんの仇を討つべきだろ。
理解できない。
「ねぇ、九条くん、前みたいに、紅茶飲みながら話そうよ。お願い」
俺はもう我慢の限界が来ていた。
心の奥底から排除したくなってきた。
霧島さんも話しかけて来たが、かなり鬱陶しかった。
「九条くん、開けるよ」
そう言って、扉を開けようとしたので
「開けるな」
俺はそう怒鳴った。
神代さんは扉を開けるのをやめたようだ。
「神代さん、なんで俺に構ってるんですか、あなたがやるべきことはこんなことじゃない、あなたがすべきことはただ一つ、白峰さんの仇を討つことです」
俺はそう叫んだ。
俺の声は下の階にまで届いていたのか。天城さんと霧島さんが階段を駆け上がって来る音が聞こえた。
めっぽうめんどくさくなって来た。
もう、この家にいる必要もない。
俺は部屋の窓を破り、外へ出た。
上の階から九条の叫び声が聞こえ、九条の部屋へ向かうと、ガラスが割れる音がした。
俺はすぐに扉を開けたが、その部屋には九条の姿はなかった。
それだけでなく、九条の部屋はめちゃくちゃになっていた。至る所に血の跡があった。
一体九条はどんな修行をしていたんだ。
「神代、すまない」
そう呟くと、神代は俺の肩に手を置いて。
「私は大丈夫です。九条くんも何とかしなきゃいけないですけど、天城さんも心が折れかけてます。心に秘めてる思いを私にぶつけてください」
肩に置かれた神代の手は温かく、気付くと俺の目からじわっと温かい何かが溢れていた。
「とりあえず、私の部屋に行きましょう」
神代は俺の肩においた手で俺の背中を押し、部屋へと誘導した。
椅子に座ると、神代はポットでお湯を沸かし、紅茶を入れた。
「はい、とりあえず飲んでください」
俺は言われるがまま、紅茶を飲んでいた。
すると、俺の口は俺の心の中に秘めていた事を吐き出していた。
神代は俺が口から吐き出したものを全て受け止めてくれた。
しばらくすると、俺は落ち着いてきた。
「すまん。神代」
そう呟くと、
「大丈夫です。そもそもの身体的な能力が低い私が、できる事はこう言うことだけですから」
「神代、力を貸してくれ。九条を人間で居させるために」
第33話完
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