傭兵団を立ち上げよう・機械人形の兵士
――ガシャンッ…ガシャンッ…ガシャンッ…――
メイド型アンドロイドに連れられて進む事暫く、遂に目当ての〝機械技師〟が住んでいるのだろう、廃材に埋もれた廃工場に辿り着く。
「…ふむ」
サッと中を見渡せば、幾つもの部品が箱詰めされて積み上がり、数体の単純労働機械人形達がコンベアに乗せられて運ばれて来る〝壊れた機械〟を解体し、分別し、加工していた。
「――マスター、帰投致しました」
壁に並べられた幾つもの〝機械四肢〟を眺めていた時…不意に、目の前の機械人形がそう言い、奥の方からやって来る足音の主にそう言葉を告げる…其処へ、俺が視線をやったその瞬間。
――ザッ!――
「おう、ご苦労さんクワイエット――追加命令だ、ソイツを〝手術台〟まで運んでくれ」
――ガシャンガシャンガシャンッ!――
その声と共に、四方八方から飛んできた〝拘束具〟が、俺を捉え、地中から現れたプレートに貼り付けにする。
――グンッ!――
「――グッ…チッ、カエルの子はカエルかよ、ったく」
「そう言うな小僧、事が済めばお前の腕もくっつけてやるよ」
磔のまま前を歩くジジイへ俺がそう言うと、ソイツは笑い飛ばしながらそう言い、俺へ問いを投げ掛ける。
「――それで、小僧…お前〝野良〟か?…〝漁り屋〟共に唆されでもしたか、それとも訳ありか?…なんだって儂のテリトリーに来やがった?」
「――…お前の技術が欲しくてな、漁り屋からお前の居場所を聞いたから地図を辿ってたら、お前のお嬢さんに両腕をもがれたんだよ」
「おっと…ソイツァ災難だったなぁ…しかし、儂の技術ねぇ、何のためだ?」
「【傭兵団】を立ち上げるためだ」
ジジイとの問いも暫くし、廃工場の奥へ進むと…不意に前方の薄暗がりが光に照らされ、ライトアップされた〝広場〟が目に入る。
――ガチャンッ!――
「『開頭手術シーケンス完了』」
「『情報解析システム、正常』」
其処には、一人一人を縛り付けられる拘束具があり、頭上に並んだ幾つもの機械腕が鋭い爪やら何やらを備えた…妙な黒ずみがヤケに目立つ…率直に言えば拷問部屋染みた光景が広がっていた。
「【傭兵団】ねぇ…まぁ、詳しい話は後で聞いてやる」
「それより開頭手術って言ったか今?」
「心配するな、ちょいとお前の頭から人格データを複製するだけだ、終わりゃちゃんと全部元通りにしてやるよ…ちっとばかし痛むがな」
現在進行系で拘束具で固定された、明らかにヤバ気な機械群を頭上に垂らされて、そんな言葉で安心出来るかと、ジジイを睨みつけるが…そんな視線を意にも返さず、ジジイは端末を操作し始める。
――ウィーンッ!――
そして、拘束台が動き始めると…連動して機械群が音を立てて拘束で回転し始める……流石にコワイ。
「ほんじゃ行くぞ―」
「…なぁ、せめて麻酔とかは――」
そして、歯医者の声掛け並に同仕様もない号令に、俺がそう言いかけたその瞬間。
――ザクッ!――
頭に突き刺った刃の感覚と共に…俺の意識は黒に沈んだ。
〜〜〜〜〜〜〜
そして、手術が終わり…俺は香る珈琲の匂いで意識を覚醒させる。
――フワッ――
「――フゥッ、御苦労さん若造…手術明けだが、珈琲でも飲むか?」
「……あぁ、貰おう…序でにお前の頭も開いてやるよ」
手術台に俺を括り付けていた拘束は撤去され、葉巻を口に加えたジジイが持っていた珈琲カップを1つ、何時の間にか繋がれていた手で受け取りながらそう言う。
――カチャッ――
「――オーライ失言だった、今のは取り消すよ〝キラーマシン〟」
その瞬間、俺へ当てられる照準に対して俺はそう言い両手を上げると…ジジイはその様子を見て唾を飛ばしながら笑う。
「ブッハッハッ!――中々面白い小僧だな、普通…〝電脳化義体兵〟でも人格コアが生きてりゃ、頭を開かれるにしろ、両腕を潰されるにしろ、多少痛むし恐怖するモンだが…中々肝が据わってるじゃねぇか」
「――ハァ、コレでも人間だぞ、怖いし怒る…ただ必要なら感情のコントロールが効くだけだ」
俺がそう返すと、ジジイは満足そうに頷いた後…自己紹介を始める。
「儂は〝ブラッド・マクレバン〟…〝ブラッド〟と呼べ、アイン」
「必要ならそう呼ぶさジジイ――それで?…俺の目的について、返答は?」
ブラッドは俺の言葉に葉巻を口から離し…少し考えてから言葉を紡ぎ、懐から眼鏡を取り出す。
「【機械人形】を兵隊にするとなると、個々の機体に独立した動力炉と命令を理解し最適に機能を動かす頭が要る、オマケに戦闘用にチューンアップするなら、そこらのガラクタを張り付けるだけじゃ文字通り〝鉄屑〟だ…最低ランクの武装と装甲を引っ提げたとして…」
――パチンッ、パチパチパチッ!――
そして、取り出した算盤を弾きながら計算を終えると…その桁を俺へ告げる。
「【最下級兵】…つまり、【ウォーマシン・ラプトル】1機の最低額は……〝100万z〟だ」
「……最低でも13は欲しいな」
「なら、〝1300万z〟だな」
「……」
その桁に一瞬閉口する、物理的に俺が払える金額では無い…吹っ掛けられた金額だとしても、コイツの持つアンドロイドは、俺の見た中で遥かに高性能である事を証明した…なら。
「――〝買った〟」
何も迷う余地は無い。
「ハッ、威勢は良いがアイン…お前さん、其処まで金がある訳でもねぇだろ?…どうやって工面すんだ?」
即決した俺に、ブラッドは奇特な人間を見るような目で俺を見据える…確かに、一機分支払う資金も無い奴に対して、売り手が懸念するのは当然だろう。
「――なぁに、〝金〟なら直ぐに作ってやるさ」
だが…実物を用意するだけなら…この世界に幾らでも〝アテ〟はあるもんだ。
「一先ず〝13機〟分、早急に用意しといてくれよジジイ」
「……まぁ、アテが有るなら用意しといてやるよ」




