傭兵団を立ち上げよう・一輪の赤い薔薇
――ガコンッ、ガコンッ、ガコンッ!――
数日後、無数の蕾状の〝コンテナ〟を巨大なクレーンが運び…ブラッド・マクレバンの工房、その〝巨大倉庫〟に運び込まれる。
――――――
【ウォーマシン・ラプトル】
【軽量戦機兵】
【廃棄品】
HP:300
EP:150
筋力:D
速力:D
物耐:E
術耐:E
器用:E
器用:ー
幸運:ー
【接続済スキル】
〈エネルギー効率化(壊れかけ)〉、〈応急改修(壊れかけ)〉
【称号】
〈未所有〉
――――――
――――――
【下級・オールドキャノンライフル】品質:低
【装備可能部位:右腕、左腕】
〈性能〉
装填弾数:15発(物理ダメージ30)
対応弾種:AA50mm弾
――対装甲用大型弾を装填可能な携行型砲撃ライフル、人の身体で運用される事は想定していなかった開発初期では、低度知性を有した設置兵装に内蔵する事を目的とされていたが、肉体改造技術の発展によって、人が利用する事も可能となり、今でもその火力は現行兵器の中でも一目置かれている。――
――――――
そして、その中には俺が頼んだ通り…そして、この〝商品情報〟に示された通りの〝機械人形〟達が眠っており、ソレは今か今かと目覚めの時を待っていた。
「頼まれた通りのブツは、コレで全部だ…しっかしお前さん…まさか〝漁り屋の高利貸し〟から金を借りるとはな」
ソレを見据える俺の背で、ブラッドは呆れ半分にそう言いながら葉巻を吹かす……そう、俺は〝借金〟をした。
――――――
所持金:200万z(ー1500万z)
――――――
財布の中身に映る強烈な赤字が示す通りに、漁り屋の集会所に赴き、ちょっとした芝居を打ち非合法な高利貸しから金を引っ張り工面した。
「――必要経費だ、ブラッド…お陰で本格的に〝仕事〟が出来る、そうなりゃ此方のモノだ…億でも兆でも稼げるさ」
メイド型アンドロイド――〝クワイエット〟に商品表を返し、そう言うと…俺は、予め設定していた〝キーワード〟を紡ぎ、鉄の蕾を開封する。
「――〝オーダー〟――【廃材の傭兵団】…起動!」
その言葉が工房内に響いた瞬間、13の蕾は圧縮された空気を吐き出しながら、その中に眠る〝兵士達〟を呼び覚ます。
――ガシャンッ…ガシャンッ…ガシャンッ…――
ソレは、2m程の体躯に…人2人分程の厚みを帯びた、人型の〝機械人形〟…。
――ガシャンッ…ガシャンッ…ガシャンッ…――
人を模した表情機能も無く、ただ只管に無骨で、目的の為だけに不要物を削ぎ落とされた佇まい、その手に内蔵された〝武装〟…。
ソレが群れれば、流石に威圧感が出る…12機の機械人形は、俺の目の前に集い…同じ姿勢で整列する……ただ〝一機〟を除いて。
「―――ソイツァ、〝要望通り〟に、〝人格コア〟を抜いてるぜ?」
「あぁ、分かってる……〝コイツ〟の核には…コレを使う」
俺はそう言い、1つの〝動力炉〟を取り出す…ソレは、俺がこの数日、この工房で揃えた〝改造キット〟を使い、メックデッドの核を繋ぎ合わせ、何とか完成させた〝一品〟――。
――――――
【無名の動力炉(改造)】品質:低
【保有スキル】
〈自己学習(壊れかけ)〉
〈限界稼働(壊れかけ)〉
――何者かによって修復された動力炉、継ぎ接ぎの鉄の心臓は止まっており、動かすには器が必要だ――
――――――
「ほ〜…あのエネルギー・バレットと良い、小器用なモンだな小僧」
「流石に本職には負けるがな」
ブラッドの褒め言葉をそういなしつつ、俺は項垂れる機械人形の胸部に触れる。
――カシューッ!――
開かれた胸部の奥には、幾つもの機関に繋がれた〝心臓の空洞〟が有り…その場所に核を置くと、内部のコードが伸びて動力炉に接続されて行く。
「『動力炉の稼働を確認…データ入力、設定完了――こんにちは、マスター…ワタシは、識別コードLA1061です、御命令をお願いします』」
そして、動力炉が稼働し…エネルギーの奔流が全身に駆け巡ると、項垂れていた機械人形が起き上がり、中性的な声色で俺へ語り掛けてきた。
○●○●○●
――ブワッ――
自身の内部が、エネルギーで満たされるのが分かる…と、同時にワタシは、ワタシを認識する。
どう言う訳か、ワタシはまだ稼働しているらしい…それも、以前までの朦朧とした、判然としない意識とは隔絶した自己認識力とを得て。
「『動力炉の稼働を確認、データ入力』」
並列して動き始めるワタシは、自身が〝戦闘用機械人形〟へ接続されたのを理解し、その機体に適応する。
「『設定完了』」
同時に、自己分析システムを使い自身の状態を把握する…武装も機体も何もかも型落ち…動力炉の性能も、以前よりも遥かに劣化しているが、その形跡から誰かが自身を修復した事は読み解けた…そして。
〝視界システム〟――起動。
その瞬間、目の前にて自身を見据える人間が…己の〝心臓〟を修復した人間であり、ワタシのマスターなのだと理解する。
「――初めまして、マスター…ワタシは、識別コードLA1061です、御命令をお願いします」
そうして、ワタシが自己紹介するとその方はワタシをジッと見つめ…問う。
「あ〜うん、一先ずどうだ動力炉の加減は?…なるべく丁寧に修復したが、何処か不備は無いか?」
「――記憶する限りの情報と比較して、現状30%程のパフォーマンスが限界ですが、稼働に支障は有りません」
ワタシがそう言うと、彼は背後で大笑いする老人の方を見て肩を竦ませる…何か、不適切な発言をしてしまったのでしょうか。
「あ〜…その辺はまた追々改良していくが…一先ず問題無いなら良し…だが、流石に識別コードは呼びづらい…お前に識別用の名前を付けたいんだが、良いか?」
そんなワタシの分析を遮って、彼がワタシへそう問う…〝名前〟…識別名をより簡易にした、ワタシ個人を表すためのコード…マスターが必要ならば、ワタシが拒絶する理由が無い。
「構いません」
「……そうか、なら――」
ワタシがそう言うと、彼はワタシの事をジッと見つめた後…ワタシの顔を見て、その名を紡ぐ…。
「――〝ローズ〟…お前を今日からローズと呼ぶことにしよう」
「識別名〝ローズ〟…自己認識システムにタグ付けし、以降ワタシはローズを自身を呼称する事にします」
ソレが、ワタシとマスター……いえ、〝ローズ〟と〝アイン〟の…最初の出会いだった。




