初めての依頼
――ガガガガッ!――
「「「「※※※※※!」」」」
「A、B機足止め、C機は旋回して背後から挟撃しろ」
「「「命令を確認」」」
命令を受けた3機の機械兵が動き出し、4機のメックデッドを相手する。
――ドッドッドッドッ!――
2機は一撃一撃の重いキャノンライフルを等間隔で射撃し、メックデッド共を釘付けにする、そして。
――ズドンッ!――
残る一機は、廃材の山を挟んでメックデッドの感知を外れつつ背後を取り、隙だらけの背中に、致命の一撃を放つ。
――ガシャンッ、ガシャンッ!――
――――――
〈ランクアップ〉
【無名】→【四流軍師】
・【傭兵契約所】が解放されました!
――――――
ものの数分で、メックデッドとウォーマシンの戦闘は終わり…そして、俺の【評判】が遂に1つ上昇した。
「――戦闘終了、弾丸を補充して待機……ふむ、同型のメックデッド相手なら苦戦はしないか…半自律思考による柔軟性も結構…試運転にして、十分な収穫だな」
手に入れた残骸は俺の拠点に運び、核とパーツをバラして保管する…帰路に着けば、周辺の廃材の山を掘るウォーマシン達が、その身体に取り付けられた〝籠〟に、インプラントや壊れた手脚パーツを詰めては、拠点に増設した〝倉庫〟へと運び込む光景が見える。
「戻ったぞ、ローズ…それで、ソッチの調子はどうだ?」
ソレを尻目に、作業場へ顔を出せば2機のウォーマシンと共に運び込まれたパーツを解体する〝ローズ〟の姿が見えた。
「『お疲れ様です、マスター…〝解体作業〟の進捗ですが……手脚部品の解体は問題有りません、しかしインプラント、眼球パーツ等、細部に作用するパーツの分解は、この機体ではロスが有ります』」
ローズは、俺の問いにそう報告し、山積みになった〝使用不能なインプラント〟と、辛うじて残った〝壊れかけのインプラント〟の箱を見せる。
「そうか、元々お前達は戦闘用に調達した機体だからな…その辺は追々特化した機体を使うさ」
「了解致しました…それで、どうでしょうか…〝仕事〟の方は」
ローズを労いつつ、俺が椅子に腰掛けると…ローズは俺へそう問う…〝仕事〟…つまり、〝傭兵稼業〟の事だ。
「さっき【無名】から【四流軍師】に昇格した、今から少しばかり〝依頼〟を漁ってみる所だ」
俺はそう言うと、【評判】の昇格の後、解放された【傭兵契約所】の機能を使う…すると――。
――ブンッ!――
俺の視界から数cm離れた場所に半透明のウィンドウが現れ、其処にズラリと〝依頼〟の斡旋が流れてくる。
――――――
・【反乱軍鎮圧】〈要求:【2流】以上〉
【達成報酬:2500万z、継続手当て1日/200万z】
〈内容〉
我が国で起きた反乱軍の蜂起、それの鎮圧と反乱軍のリーダー捕縛の協力を頼みたい。
依頼達成のあかつきには、貴殿を我が国で正式に雇用する事も視野に入れよう。
――――――
――――――
・【襲撃作戦】〈要求:【3流】以上〉
【達成報酬:1000万z、継続手当て1日/50万z】
〈内容〉
戦線の膠着を打破する為の襲撃作戦に人手が必要、一時的な雇用兵として、前線で活動する傭兵求む。
――――――
――――――
・【緊急の防衛戦力募集】〈要求:【3流】以上〉
【達成報酬:1200万z、継続手当て1日/30万z】
〈内容〉
現在我が国は隣国との戦争で不況に立たされている、報酬は確約するので、参戦可能な傭兵は早急に参列頼む。
――――――
「――ふむ…ざっと見、目ぼしい依頼は大抵対象外だな」
大体が3流から2流向けに流れているらしい…時偶【1流傭兵】宛に流れて来る依頼の報奨金は、2流と桁1つ違い…羨ましい限りだが、その羨望を一先ず捨て置き、依頼の選別を続ける。
「……【4流傭兵】宛は…うぅむ…渋い」
2流、3流宛の依頼で1000万相応の金が動くのに対して、【無名】から這い上がったばかりの【4流】には、大した報奨は無さそうだ。
「同じ形式の依頼でも桁が1つ減るな…金より先ず実績作りって感じだなぁ…」
現実の世知辛さに呻きながら、大人しく仕事を探していると…ふと、1つの依頼が目に映る。
――――――
【戦略顧問募集】〈要求:【評判問わず】〉
【達成報酬:500万、継続手当て1日/10万】
〈内容〉
国を守り、戦争に勝利する為の知恵が必要です…評判は問いません、部隊運用の腕に覚えが有る方に、どうか御助力願います。
――――――
「ふ〜む……コレは…中々…」
傭兵への依頼としては、中々珍しい…基本的に使い捨ての即席戦力として用いられるのが常の傭兵に、戦争の知恵を強請る依頼主…余程自国の総帥が頼りないのか?…依頼達成報酬も、他の依頼より幾らか高い…なら。
――ピッ!――
「――決断は早い方が良いってな♪」
他所の傭兵共が掠め取る前に、その依頼を受諾する…受諾の返答を適当に送信し、送られた座標を見て俺はローズに指示を出す。
「〝ローズ〟…〝仕事〟を決めた、外に居るウォーマシンを集めて出征準備だ」
「――承知致しました、解体途中の廃材はどうしますか?」
「コンテナ1つ分に詰めて運ぶ――〝このリスト〟に有る物を揃えといてくれ」
「分かりました、マスター」
俺が送信したリストを受け取ったローズは、俺へそう言うと外へ出てウォーマシン達を呼び集める…その声を室内で聞きながら、俺も装備とインベントリの整理をしながら…小さく呟く。
「――さて、どんな仕事になるかな♪」
その声は、誰の耳にも届く事はなく…俺は鼻歌混じりに武器と弾薬、改造用キットをインベントリに放り込んだ。
●○●○●○
――バタンッ!――
「――はぁ…」
今日もまた、お兄様とお父様が口論に暮れていた…もう選択の日まで時間は残されていないと言うのに…。
「お茶をお持ちしました、ヴィオラ様」
「ん…有り難う、爺や」
私の憂慮を知ってか、爺やがハーブティーを差入れてくれる…その香に幾らか気分は落ち着くけれど、それでもこの心の曇天が晴れる事は無い。
きっかけは、ある一通の通達からだった…。
ロクサス王国…北方の隣国であり、昔から良く衝突していた彼の国が、遂に〝侵略〟を仄めかす一文を送ってきた。
――――――
降伏か、死か…半年の猶予を与える、賢明な判断をするが良い。
――――――
その一文だけなら、今までの小競り合いの時にも有ったもので…私達もまたかと呆れと顔を見合わせる程度だった…けれど、その一文と共に同梱された〝映像データ〟には、今までの私達の認識を覆す衝撃が込められていた…。
――ブンッ!――
空を駆る兵士達…今までのロクサス王国の技術力からは考えられない程隔絶したレーザー兵装、そして…その兵装の出処。
〝エセルポット企業連盟〟…大陸列強に名を馳せる〝一大勢力〟…少なくとも彼の国は、その国のお眼鏡に叶うだけの利益を示した…と言う事なのだろう。
それを見た我が国は大慌て…元帥は連日連夜、兄様と国防策を協賛し、お父様も日増しに夜に嗜む趣向酒の量が増え…城内の不穏な空気は、遂に王都内にまで蔓延し始めた…。
「……何とかしなくちゃ…」
その打開策を打って数日……焦りが募る私がポツリと、そう呟いた時――。
――ピコンッ!――
不意に、私の情報端末からそんな音と共に、一通のメッセージが届く。
「ッ!……まさか」
そのメッセージに、私は高鳴る心臓を落ち着かせながら…慎重に、メッセージを開く…その内容は。
――――――
依頼内容を把握した。
明日の正午そちらの座標に到着する。
【アイン〈四流軍師〉】より。
――――――
私が待ち焦がれていた…〝救いの手〟…その可能性を示すモノだった。




