瓦礫の外界に、築けよ牙城
――ザッ…ザッ…ザッ…――
「フッ、フフフッ…遂に、遂にこの時が来た…!」
俺は、身中に満ちる高揚を口端から溢しながら…己の右腕を軽く見やる。
――シーンッ…――
其処には、この腕には不釣り合いな洗練された白い円柱の装備…そう、あの廃材の山から掘り出したメックデッドの腕、レーザー砲改め、【下級:ウィッチ・ハンター】の名を冠する右腕パーツを移植された俺の姿が有り、ソレを今まさに…〝己の電棺〟から程々に離れた広場で試射しようとしていた。
「さぁ…やるぞ…【ウィッチ・ハンター】起動…!」
俺の言葉に呼応して、機械腕はその機能を稼働させる。
――ウィーンッ!――
俺の身体から何かが抜け落ちる感覚が走り、エネルギー・バレットの比ではない強烈さにマトモに立っては居られない…しかし、それでも音を立てて機械腕の炉を回転させるレーザー砲と、其処に収縮する青いエネルギーの奔流を見れば、そんな代償等些末と言って良いほどに魅入られてしまう。
――バチッ、バチバチバチッ!――
電荷が貯まり、遂に発射可能と成ったソレを見て…俺は、溢れるロマンを前に、声高々に宣言する。
「――〝発射〟!」
――バチンッ!――
刹那、高密度のエネルギー反応は一瞬沈み…ソレから指向性を持って前方を灼き尽くす、あの赤いレーザーが放たれる――。
――パァンッ!――
と、思った刹那…俺の身体は弾け飛び視界が黒に染まる……疑問の声が上がるより先に、俺の視界に映ったのは――。
『装着負荷を超過しています』
『必要な【スキル】が足りていません』
『EPが足りません』
『装備者の【評判】が装備基準を下回っています』
溢れる、程視界を埋め尽くす…〝実力不足〟の強調文だった。
『【再構築】を行います』
〜〜〜〜〜〜〜
――ガシッ――
「――はぁ、まぁ…分かってはいたが」
爆散した俺の死体から、機械腕を引っ剥がしてインベントリに放り込み、ため息を吐く…勿論想定内の出来事だ…決して……決して悔しくは無い…本当に。
「――しかし、やはりより良い装備を手にする為にも、早急に【傭兵団】を立ち上げなければならんな」
その為にも【評判】を最低一つは手に入れたいが。
――――――
【評判】
傭兵の力の象徴、傭兵の力量を表す外部評価である。
優れた傭兵は多くの顧客と富を運び、傭兵稼業に身を置く者にとって、評価は何よりも尊ぶべき資産である。
武によって名を知らしめる者は【傭兵】としての名が上がる。
知によって名を知らしめる者は【軍師】としての名が上がる。
また、時偶居るが…市場にて名を知らしめる者は【商人】として、その名を上げる…どの位を目指すかは傭兵の意思次第。
ただ一つ共通するのは…戦場無くして、名は上がらないと言う事だ。
――――――
「――まぁ、此処は前作から変わらんな」
条件が同じなら…先ず10戦、エネミーかプレイヤーと戦って勝たないとな。
【無名】1/10
「…ちゃんと〝メックデッド・ラプトル〟との戦いはカウントされてるな」
なら、残り9戦……さっきと同じやり方でやれば、時間は掛かるが目標は達成出来る……が。
「――それじゃ、時間を食いすぎるし俺自身の戦闘経験値が手に入らん…最低でもメックデッド相手にマトモな攻防が成立する位ないと、戦場には立てんな」
――ザッ…ザッ…ザッ…――
「――と、なれば今必要なのは【無名】でも扱える武器で、且つ最低限メックデッドに通用する火力…即席で造る【簡易制作】だけじゃ、少し設備不足か」
――ガチャンッ――
――――――
【下級・エネルギー・バレット】品質:低
【装備可能部位:右腕、左腕】
〈性能〉
消費EP10/1発(特殊ダメージ8)
――略奪者が身に着ける武器、その中でも特に上等な物…今や型落ちな、あまりに粗末な欠陥品だが…その欠陥に魅入られ骨董品とするマニアも少なく無い。――
――――――
「……〝電棺〟も、何時までも剥き出しじゃ不味いし……ふむ」
何をするにも、先ず素材と設備が足りない…なら、いっその事――。
「作ってしまうか…〝拠点丸ごと〟」
幸いにも、必要な設備は多くない…ある程度切り詰めて、拠点構造も簡略化すれば、直ぐに制作出来る…何より。
「素材は、その辺を掘れば簡単に手に入るしな」
此処には、棄てられた廃棄品が腐るほど有る…多少の手間を掛ければ、難しくない目標だろう。
○●○●○●
――ジジジッ――
『人格コアに、不安定性を確認…〝不適格〟』
擦り切れた視界センサーに映る、己が仕えるべき〝創造者〟が、己を無慈悲に切り捨てる。
『LA・1063号――〝廃棄〟にします』
同時に、己の母体とも言える製造機から紡がれた言葉と共に、己の身体がバラバラに解体され…内部データを弄られる。
『【外界】の〝ゴミ〟を駆除しろ』
己に刻まれた〝絶対命令〟…同じ不良品の兵装を装備し、このコアが破壊され尽くすまで、己は戦い続ける…。
其処に恐怖は無い、絶望は無い…ソレが〝不適格〟の理由…なのだろうか。
何方にせよ、存在意義を持たない〝機械〟には、その命令を拒絶する意味も、必要性も無い…ただ、与えられた命令を実行するだけだ。
瓦礫の世界を練り歩き、一人或いは、命令を認識できる〝同類〟を従え効率良く、〝壊れた機械〟と、〝漁り屋〟を始末していく。
擦りきれるまで、人格コアにガタが来て…自身もまた、この外界に蔓延る〝壊れた機械〟と同じ存在に成り果てるまで…或いは。
――パァンッ!――
自身の自己認識が…外部的要因によって強制シャットダウンされる…その時まで。




