戦場のガラクタ漁り
――ダダダダッ!――
瓦礫の丘を駆け抜け、小山を蹴って障害を飛び越えながら俺と荷物の男は逃げる。
「ヒィィィッ!…来てる来てる来てるッ!」
小脇に抱えた男の叫びに重なる様に、徐々に大きくなる背後からの接近音が焦燥を煽るが、ソレを抑えつつ男へ命令する。
「騒ぐな聞こえてるッ、それよりお前彼奴等の妨害はどうした」
「ハァッ!?――んなもん、武器もねぇのにどうやんだよッ!」
「物投げろ、その馬鹿みたいにデカイ袋の中に有る物全部投げ物にすれば数秒位は稼げるだろ」
「巫山戯んな、俺の飯のタネだぞ!?」
「なら、明日にゃお前が鼠の飯になるな」
男の反論をそう言って潰すと、ソイツは苦渋の表情でバッグから物を引っ張り出す。
――ガラガラガラッ!――
地面を転がる物、弧を描き風を切る円柱の鋼、捻れた部品達…ソレ等は、メックデッド達にとっては脅威の一つにも成りはしないが…少なくとも進路を阻む異物と認識さたのだろう、接近速度が僅かに落ちる。
「――とは言え、結局ジリ貧だがな」
「※※※※※!!!」
コチラが妨害するのと同じ様に、メックデッド達も攻撃の手は緩めない…駆け抜けながらもその手に握られたレーザー砲や、豆鉄砲と呼ぶには口径の大きいガトリングやら、見てるコッチが羨ましくなる程上等な武装を乱発して来る。
「クソ欲しいなぁオイッ――【加速】!…後コレでも喰らえ」
ソレ等をスキルと持ち合わせた身体能力で何とかいなしつつも、俺は道を行ったり来たりと繰り返しながら銃を四方八方へばら撒く…まぁ、そうしている内に、彼我の距離は縮まるし、人と機械とじゃ持久力が雲泥の差だ…当然の様に俺達は徐々に敵の射程に近付いていく。
「も、もう駄目だ…おいアンタ、その銃貸してくれよッ、ソイツが有ればまだ時間稼ぎは出来るだろッ!?」
メックデッド共の破損パーツの歪みが肉眼でも見える様に成る程肉薄すると、男がそう言い俺の右手に握られた銃へ手を伸ばす…しかし、その腕が俺の銃に触れるより早く、俺は拒否の言葉を吐き捨てる。
「断る、そもそもコイツじゃマトモなダメージにも成らん上、お前が扱い切れるかも分からん…仮に使えて数秒の足止めなんだ、お前に渡すメリットが無い」
そう言いつつ、俺はチラリとメックデッド達の距離を観察する……時間を掛け過ぎたか、そろそろ近接戦も開始出来そうな距離感だ。
……だが、概ねソレで良い。
「――なにより、今から〝反撃タイム〟だぜ、〝狼煙〟を上げるのに空手じゃ格好つかんだろうが」
俺は今にもやつれ果てて死にかけそうな男へそう言い、銃口を上へ…この道の至る所に聳える廃材と瓦礫の山の一つの頂きへ向ける。
「漁り屋、今更な警告だが…舌噛まない様にな」
――パァンッ!――
そして、その銃口から放たれた発光するエネルギー弾は、廃材の山の頂き…其処でただ見下ろすだけだった瓦礫共に衝撃を撃ち込む。
――ゴッ――
ソレは、初めはただの衝突に過ぎない一手だった。
――ゴゴゴッ!――
しかし、変革の可能性がゼロのその事象は俺の弾丸と言う1を得る事で、堰き止めていた〝枷〟から解き放たれる。
――ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!――
その様は、まるで瓦礫と廃材で出来た大津波の様に俺達諸共メックデッドにも振り注ぐ。
「【加速】!」
だが、ソレが俺を瓦礫に埋もれさせる事は無い。
――ダンッ!――
スキルを使い、一気に前進する…僅か3、4m程度の前進だが…ソレは瓦礫が前方を覆い尽くす寸前、俺を窮地から救い出し、迫っていたメックデッド達を置き去りにする。
――ガシャガシャガシャーンッ!――
それから、僅か一秒後…己の背後スレスレで騒々しい崩落音を響かせて、廃材の山は哀れな機械人形達を生き埋めにして、圧し潰した。
――バサッ!――
「――フゥッ、何とかなったな、重畳重畳」
この世界も、地形破壊によるフィールドの変形は有効で良かった、でなけりゃ正直お手上げだったからな。
「さて、それはそうと戦利品を…と、その前に――」
一息付いて、戦闘は終わる…肩の力を抜き、銃を懐に仕舞う……前に、その引き金を一発、背後の〝ソレ〟へ向けて引く。
――パァンッ!――
「――グァァッ!?!?」
そのエネルギー弾は、先程まで俺が抱え逃走していた第一村人、〝漁り屋〟へ牙を向き、その足を軽く撃ち抜かれたソイツは尻餅を突いて地面に倒れ込む。
「――手癖の悪い奴だな、人のナイフを盗むなんて」
ソレが取り零した俺のナイフを回収し、続けて二度、三度…抵抗出来ないように腕を潰す。
――カチャッ――
「モガッ…グガッ!?」
「それとも…俺を殺して装備を奪うつもりだったのか?…まぁ良い」
ソイツの口に電気銃を押し込み、引き金に指を掛ける…傷から流れる血の所為か、それとも己に直面した死の恐怖故か、漁り屋の顔は青白く変色し、瞳孔は恐怖に揺れる。
「――俺の質問に答えろ、そうすれば少なくとも俺はお前を殺さない、分かったら頷け」
「ッ〜〜〜!!!(コクコクコクコクッ!)」
「クフッ、良いぞ」
漁り屋は、俺のお願いに、快く頷き恭順の姿勢を見せる…ソレから暫く、この場所で俺と漁り屋は、楽しい尋問を繰り広げていた………勿論、漁り屋は最後には解放した。
両腕と片脚が使えない状態で、生きているかは知らないが。
〜〜〜〜〜〜〜
――カツーンッ、カツーンッ!――
と、言う訳で回想終わり!…コレで分かっただろう、何故俺が鉱夫宜しくツルハシを振るっているのかが。
「レーザー砲か…中々火力が出そうだな…と【壊れかけの機械腕】…と【変形した鋼板】…良いぞ、素材がザクザクだ」
ズバリ、生き埋めになったメックデッドの回収の為である…ついでに廃材を掘れば確率でアイテムがドロップするのも嬉しい誤算だ。
――バキーンッ!――
「チッ、ツルハシが壊れた」
そう言っていると、廃材から掻き集めたパイプと金属片にワイヤーを巻き付けて作ったツルハシが砕ける…柄だけになったソレを地面に放り投げ、俺はインベントリから幾つか素材を取り出し、ツルハシを作り最後に…俺が選んだスキルを使う。
「【|簡易制作:道具《インスタントクリエイト:ツール》】」
すると、ただのツルハシがアイテム化し…再び【廃材のツルハシ】に変化する。
「――さて、他のメックデッドに見つかる前に解体しきるとしよう……是が非でも、彼奴等の全身と武装は手に入れたい」
そして再び、採掘に勤しむ鉱夫の職に戻るのだった。




