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26話:ジークさんのように頑張ってみる(ミリア視点)

 私はクスクスと笑いながら元同級生達の事を見ていった。


「何を笑ってるのよ。アンタみたいな幽霊女に笑われる筋合いはないわよ」

「そうだそうだ。それにそんな下卑た笑い方をするなんて生意気過ぎるだろ。婚約破棄されて貴族家からも追放されてるクセに!」

「そうですね。確かに私は婚約破棄されたり、家を追放されてしまいましたが、でも私は特にその事を辛いと思ってはおりませんので。ですからそんな些末な事を指摘して私を見下そうとしても無駄ですよ?」

「なっ……なんだよお前。そんな事を言い返してくるような女じゃなかっただろ……」

「ふ、ふん。どうせそんなのただの強がりよ! 今まで由緒ある貴族家の令嬢だったのに、婚約破棄されて家からも追放されてしまったなんて、そんなの誰がどう見ても辛いに決まってるでしょ! 強がりなんてやめなさいよ!」


 同級生達は私に対してそう言ってきた。なので私は笑いながら続けてこう言った。


「いえ。強がりなどでは決してありません。そもそも私は昔から貴族令嬢としての矜持なんて一切持ち合わせておりませんでしたからね。ふふ、皆様もご存じでしょう? 私が学園に在籍していた時……アナタ方は私の事を何て呼んでいましたか? 身体を使って沢山の男を誑かす悪女だと言ってたでしょう??」

「……え? って、あ……い、いや、それは確かにそう言った事もあったけど……でもそれは別に確証もなくそう言ってただけというか、お前の事を馬鹿にするために皆で適当にそう言ってただけというか……」

「ふふ。確証も無いのにそんな事を吹聴されてたなんて酷い方ですね。まぁでもそれは事実です。私は自分の身体を使って沢山の殿方を誑かしてきましたのでね……くすくす」

「えっ? な、なんだって!?」

「ほ、本当にそうだったの!?」

「えぇ、事実です。そして貴族家を追放になってからは、以前から旧知の間柄であったスラップラード通りを取り仕切ってる殿方と愛人契約を結んでいるのです。その御方のおかげで毎日何不自由なく自由気ままに暮らしているんですよ。ふふ」

「なっ……スラップラード通りって……治安の悪い所じゃないか。その通りを取り仕切ってるヤツ……そ、そんなの……」

「えっ……ま、まさか……」


 私は凛とした態度でそう言っていくと、目の前の同級生達は顔を強張らせていった。おそらく私の話を聞いて色々と勝手に誤解をしてくれたようだ。


(まぁもちろん全部嘘なのだけど)

 

 当たり前だけど今の話は全部出まかせだ。昔ジークさんがやっていた事をマネしながら、私は全力で嘘を付いていった。


 そして私は意味深に笑みを浮かべたまま目の前の同級生達にこう告げていった。


「ふふ。それでどうしますか? 私を寵愛して下さっているスラップラード通りを取り仕切ってる御方は私を偉く気に入って下さっているのです。ですからその御方は私のお願いは何でも聞いて下さるのですよ」

「な、なんでも……?」

「そ、それって……つ、つまりどういう事よ?」

「簡単な話ですよ。私にとって目障りな方を排除して欲しいとお願いすれば……ふふ、その御方は簡単に私のお願いを叶えて下さるという事ですよ」

「な、なんだってっ!?」

「な、なにを言ってるの!? そ、そんな事……で、出来る訳がないでしょ!? だ、だってそんなの犯罪だし!!」

「信じないという事ですかね。ふふ、それじゃあ試してみますか? 別に私は良いんですよ? アナタ方がもうこの世に未練がないというのでしたら……そういう事でしたら今すぐ私のお願いを聞いて下さる方々をここに呼ばせて頂きますけど……?」

「ひ、ひぇっ!? ふ、ふざけんな!! お、おい、帰るぞ! 皆っ!」

「え、えぇ! こ、こんな危ない女に構ってられないわ!」

「あ、ま、待ってよ!!」


―― ダダダダダッ!


 そう言って同級生達は一目散に逃げていった。私はそれを見届けてから……。


「……ふぅ。上手くいった……」


 私は一息つきながらそう呟いていった。昔のジークさんのマネをしたんだけど……それが上手くいったようだ。


「それにしても私……生まれて初めて嘘を付いたわ」


 私は生まれてこの16年間、嘘なんて付いた事が無かった。嘘を付くなんて貴族令嬢としてはあるまじき行為だとずっと教え込まれてきたからだ。


 だから嘘を付くのは悪い行為だとずっと思ってきたんだ。でも……。


「……ふふ」


 でも今の私は悪い事をしたのに、それなのに罪悪感は一切覚える事もなく、むしろ清々しい気持ちになっていた。


 そして思わず私は笑みを溢していった。なんだか私はどんどんとジークさんみたくなっていってるような気がして……それが嬉しくてつい笑ってしまったんだ。


 という事で私はそれからも楽しい気分に浸りながら、スレイカード通りにあるお菓子屋を巡り始めていった。

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