27話:改めてになるけどこれからもよろしくな
朝に自宅を出てからしばらくして。
―― ガチャッ……
「帰ったぞー」
「あ、ジークさん。お帰りなさい!」
「ん? おう、ただいま……?」
今日の冒険依頼を済ませて自宅である貸部屋に帰ってきたら、ミリアが俺の事を出迎えてきてくれた。
でもいつもよりも凄くニコニコ顔をしているのがちょっとだけ気になった。いつもよりも凄い笑顔だし元気いっぱいな感じがする。
「どうしたんだ? そんな顔して。何かあったか?」
「え? 私の顔……何かおかしいですかね?」
「いや。別におかしいって訳じゃなくて、いつも以上に笑顔でビックリしただけだ。何だか凄く楽しそうに見える程のニコニコ顔だな。もしかして孤児院のガキ共と遊んで楽しかった感じか?」
「あ、そうですね。今日もいつも通り孤児院の子供達と楽しく遊ばせて貰いました。でもそれだけじゃないんです。ふふ、実は私……今日生まれて初めて嘘を付いたんです!」
「……は、はぁ?」
ミリアが飛び切り笑顔な理由を尋ねると、どうやらミリアは初めての嘘を付いたそうだ。
「えっと、初めて嘘って……何だそりゃ? たったそれだけの事でそんな笑顔になってんのか?」
「はい。今日生まれて初めて嘘を付いたんですけど、それが思いのほか上手くいって……それで何だか凄く楽しい気持ちになって笑っちゃったんです!」
「へぇ、嘘とか付くの苦手そうなミリアがそんな興奮気味で語ってくるなんて意外過ぎるな。ちなみに今日ミリアはどんな嘘を付いたんだよ?」
「それはですねぇ……ふふ、秘密です」
「はぁ? そこまで言っておいて、嘘の中身は秘密なのかよ。そう言われると気になるじゃんか」
「ふふ。そう言われても秘密なものは秘密ですから」
ミリアは楽しそうな表情をしながらそう言った。まぁ秘密だと言われたら従うしかないな。
「ふぅん、まぁミリアがそう言うならそれ以上詳しく聞かないけど。それにしても物凄く生真面目なミリアが嘘を付くようになったなんて驚きだな。そういう行為は良くないと思って絶対にしないタイプの女だろ? それなのに一体どういう心境の変化があって嘘を付くようになったんだ?」
「ふふ、それこそジークさんのおかげですよ」
「? 俺のおかげ?」
「はい。ジークさんと出会ってから私は色々な体験をしてきました。今まで貴族令嬢の時にはした事のない体験を沢山です。その数々の体験のおかげで私……今までの自分から脱却する事が出来たんです」
ミリアは俺にそう言った。そしてニコニコと笑みを浮かべたまま続けてこう言ってきた。
「それにほら、最初にジークさん言ったじゃないですか。お前は貴族令嬢から一般庶民になれるのか? ……って。ジークさんと過ごしてきたこの数週間のおかげでようやく私は……貴族令嬢から脱却出来たんだと思います。だから本当にありがとうございます」
「なるほど。まぁ俺との生活によってお前が良い方向に向かってるのなら良かったと思うけど、でも俺と一緒に過ごすようになって嘘を付くようになってる時点で、それは良い方向に向かってるのかはわからないよな。だって嘘付くなんて悪い女だしな。あはは」
「ふふ。そうですね。そう言われると私……ジークさんのせいで悪い女になっちゃいましたよね? だから私を悪い女にしてきた責任を……ちゃんと取って下さいよ?」
「何だか他のヤツに聞かれたら驚かれそうなセリフだな。まぁ別に良いけど、でも責任ってどうやって取ればいいんだよ?」
「そんなの決まってますよ。これからも家事を一生懸命に頑張るので……ですからこれからも一緒に過ごさせて下さいね。ジークさん!」
「なんだ。そんな事か。もちろん良いさ。むしろ俺もミリアの家事には凄く助けて貰ってる訳だし。ま、それじゃあ改めてだけど……これからもよろしくな。ミリア」
「はい、ありがとうございます! それじゃあ私の方こそ……これからもよろしくお願いします!」
「おうよ」
こうして俺達は改めてこれからも一緒に過ごそうと約束を交わしていった。
そしてこの時のミリアの表情はいつもと同じく……いや、いつも以上に柔和で優しい笑みだった。
【第一部:終】




