19話:ババアが何処かに出かけようとしてる
それからすぐに俺は孤児院の中にある院長室の前に到着した。俺はそのままノックせずに院長室のドアを開けて中に入ってみた。
―― ガチャッ
「邪魔するぞ。クソババア」
「あら? ジークじゃない。ふふ、久しぶりね。元気だったかしら?」
「そんなの元気に決まってんだろ。って、何だよその服装は。いつものオンボロな服じゃねぇじゃん。外出用の良い服なんか着てどうしたんだ? 今から何処かに出かけるのか?」
「えぇ。今からちょっとお医者さんに会いに行ってくるのよ」
「……何だよ? 何処か悪いのか?」
「ううん。別に大した事じゃないわよ。いつも行ってる定期健診よ。もう私も若くないからね。だからひと月に1回健診を受けてるのよ」
「……そうか。そういう事ならいい。でもババァは年寄りなんだから、これからはあんまり無茶に身体動かしたりとかすんなよ。病気とか怪我にはちゃんと気を付けろよな」
「ふふ。ありがとうね、ジーク。私の心配をしてくれて」
「……ふん。別に心配なんてしてねぇよ。変な勘違いすんじゃねぇ。まぁいいや。それと今日なんだけど、孤児院の食堂と厨房を借りても良いか?」
「食堂と厨房? 何か作るのかしら?」
「あぁ。ここに住んでるクソガキ共に甘いモノを作ってやろうと思ってな」
「あら、そうなの? それは素敵な催し物ね。えぇ、もちろん良いわよ。だけど子供達も多いから、包丁と火の扱いにだけは十分に注意してね」
「わかってるよ。そんな注意なんてしないで良いからさっさと検診に行けよな」
「えぇ、わかったわ。それじゃあ行ってくるわね」
そう言ってクソババアは院長室から出ていった。それにしても定期健診なんてな。ババアもだいぶ年寄りになったって証拠だな。……ふん。ビックリさせやがって。
「……さてと。それじゃあババアから許可も貰ったし、ミリアを呼んでタピオカ作りを始めていくとするか」
という事で俺はそう呟きながら孤児院の外のグラウンドに向かった。
「♪~」
「わわ! お姉ちゃん凄い!」
「何でそんな綺麗な音が出せるの!?」
「僕もやりたい!」
「私もやりたい! やり方教えて! お姉ちゃん!」
「えぇ、もちろん良いわよ。やり方は結構簡単なのよ。こうやって草を口に当ててね、優しく息を吹きかけていくと。♪~」
「「「凄い凄い!!」」」
グラウンドにやって来るとガキ共がミリアを中心にして取り囲んでいた。ガキ共は皆目をキラキラと輝かせながらミリアの事を見ていた。
どうやらミリアは草笛をガキ共に披露している所のようだ。ミリアはグラウンドに座りながら楽しそうに草笛を奏でていた。
「戻ったぞ。何だかガキ共から好かれてるようだな?」
「♪~……え? あ、ジークさん。お帰りなさい」
「あ、兄ちゃん! 聞いて聞いて! ミリアお姉ちゃんが凄いんだよ! こんな小さな草で曲を奏でてくれるんだよ!」
「こんな綺麗な音色を奏でられるなんて凄いよ!」
「ミリアお姉ちゃん凄い!」
「ふふ。ありがとう皆。そう言って貰えてとても嬉しいわ。あ、それとジークさんが戻って来られたという事は、もう院長様にご挨拶は済んだ感じですかね?」
「おう。バッチリ済んだぞ。それと孤児院の食堂と厨房を使う許可を貰ったから、今からそっちに向かうぞ」
「はい。わかりました。それじゃあ、よいしょっと」
「えー、お姉ちゃんどっか行っちゃうの?」
「まだ一緒に遊ぼうよー!」
「お姉ちゃんを連れて行っちゃいやだよー」
ミリアはそう言ってゆっくりと地面から立ち上がった。するとすぐにガキ共は悲しそうな表情を浮かべ始めていった。
俺はそんな悲しそうな表情をしてるガキ共にこう言った。
「待て待て。この姉ちゃんは今からお前のために甘いモンを作ってくれるんだよ。だからこの姉ちゃんと遊ぶのはまた今度にしろ」
「えっ! 本当に!? 甘い物食べたい!」
「お姉ちゃんそんなの作れるの!? 甘い物を作れるなんて凄い!」
「うん。皆のために美味しいモノを作ってくるからね。だから遊ぶのはまた今度にしようね。それじゃあ行ってくるね」
「うん、わかった! それじゃあまた今度遊ぼうね!」
「お姉ちゃんの作る甘い物楽しみにしてるね!」
「また遊ぼうねー!」
という事でこうしてミリアをクソガキ共から一旦引きはがしていき、そのまま孤児院の厨房へと向かって行った。




