15話:朝起きるとミリアが朝飯の準備をしていた
翌朝。
「ん、んんー……ふぁああ……」
俺は目を覚ましてソファから立ち上がった。でもその瞬間にちょっとだけ違和感を覚えた。
「ふぁあ……うん? 何だこの匂い?」
違和感を覚えた理由は匂いだ。部屋の中から美味しそうな匂いがしていた。なんだこの匂いは??
「あ、おはようございます。ジークさん」
「ん? あぁ、おはよう、ミリア……って、何だその恰好?」
この美味しそうな匂いがする理由は一体何だろうと疑問に思っていると、ミリアが声をかけてきた。
なので俺はミリアが声をかけてきた方に顔を向けていくと……そこにはツギハギだらけの服とズボンを着用しており、さらにその上にはボロボロなエプロンを着けているミリアが立っていた。
それらは全て昨日の露店通りで購入した衣服だった。そしてさらにミリアの手には料理器具のオタマを持っていた。その様子からして……。
「……もしかしてミリアは朝飯でも作ってたのか?」
「あ、は、はい。ジークさんには住む所を提供して頂いたり、ベッドも貸して頂いていたり、それに昨日は朝食をジークさんに奢って頂いたりと、沢山親切にして頂いていますから……ですからその御恩を少しでも返したいと思って、それで今日は私が朝食を用意しようと考えていたのですが……ご、ご迷惑でしたかね……?」
「全然迷惑じゃねぇよ。むしろ飯を作るのメンドクセェからミリアが用意してくれるのなら有難いぞ。だけどミリアって飯なんか作れるのか?」
「は、はい。裁縫もそうですけど、私、家事は全部大好きなんです。子供の頃からずっと好きで家事全般をやっていたといいますか……」
「ふぅん? 子供の頃から家事全般をやってたのか。でもお前ってそこら辺にいる一般庶民じゃなくて、由緒正しき貴族様だったんだろ? それじゃあそういう家事全般ってのは使用人みたいなヤツが全部やってくれるんじゃねぇのか?」
俺は至極真っ当な疑問が出てきたので、それをミリアにぶつけてみた。貴族様なのに家事全般が大好きってのも何だか変な女だな。
「は、はい。それはその通りなんですけど……でも私のお母様が裁縫や料理など家事全般が大好きだったので、自分で出来る事は率先して何でもやるタイプだったんです。そして私はそんなお母様が大好きだったので……それで私もお母様みたいになりたいと思って、それでお母様から裁縫とか料理とかを教えて貰ってきたんです」
「へぇ、自分の出来る事は率先して何でもやるなんて凄いな。何だかミリアの母親はカッコ良い感じの人なんだな」
「っ!? は、はい、そうなんですっ! 私のお母様は本当にとてもカッコ良くて素敵なお母様だったんです! 裁縫はとても綺麗ですし、料理は何でも作れるし、お菓子作りとかも大得意で、何度も私に美味しいお菓子を作ってくれましたし……本当にとても凄い母だったんです!」
ミリアは目をキラキラと輝かせながらそう言ってきた。どうやら母親の事を褒められて嬉しくなったようだ。
そしてそんな目をキラキラと輝かしている様子からしてミリアは母親の事がとても大好きなようだ。それだけ良い母親だって事なんだろうな。知らんけど。
「……ふぅん。ま、よくわからんけど、ミリアにはそんな凄い母親がいるなんて羨ましい限りだな」
「はい、本当にもう凄いお母様で……って、あれ? ど、どうしたんですか? ジークさん? 何だかちょっとだけ暗い表情をしてる気が……」
「……いや。別に何でもねぇよ。気にすんな。それで話を戻すんだけどよ、ミリアは朝飯を作ってくれてたって事で良いんだよな?」
「あ、は、はい、そうです! ジークさんに食べて貰いたくて作ってました! それでもうすぐ朝食は出来上がるんですけど……良かったら食べて頂けますか?」
「あぁ、もちろん。腹減ってるし食べるに決まってんだろ」
「っ! は、はい、わかりました! それじゃあすぐに用意しますので、その間にジークさんは洗顔と歯磨きをしながら待っててください!」
「おう。わかった。それじゃあ朝飯の用意頼むぞ。ミリア」
「はい、任して下さい!」
という事で俺はミリアにそう伝えて洗面所の方に移動していき、洗顔と歯磨きを始めていった。
(それにしても手作りの朝飯を食べるなんて凄く久々な気がするな)
孤児院を出て一人暮らしを始めてからの飯は、出店や飲食店で提供される出来あいの物ばかり食べてきたから、ミリアの作る手料理の朝飯を食べれるのは何だかちょっとだけ楽しみだな。
◇◇◇◇
それから程なくして。
「ただいまー……って、おぉっ」
「あ、おかえりなさい。ジークさん」
身だしなみを整えて洗面所から帰って来ると、テーブルの上には目玉焼きとベーコンとパンとスープとサラダが並んでいた。
いわゆる王道的な朝飯がテーブルの上にズラっと並んでいた。孤児院を出てから久々にこういう朝飯を見たから内心ちょっとだけテンションが上がった。
「へぇ、いわゆる王道って感じの朝飯だな。こんなの作れるなんて凄いなミリア」
「い、いえいえ。全然凄くなんてないですよ。これくらいは誰にだって出来ますし。ま、まぁでも出来立てが一番美味しいと思うので、良かったら早めに食べて下さると嬉しいです」
「わかった。それじゃあ出来立ての内に食べようぜ。って事で……よっと。ほら、ミリアもさっさと隣に座れよ」
「あ、は、はい。わかりました。それじゃあ……」
そう言って俺達は隣り合いながら椅子に座っていった。そしてもう一度テーブルに並んでいる料理をじっと見た。
「どれも美味そうだな。よし、それじゃあ早速食べようぜ。という事で早速……いただきます」
「は、はい。いただきます」
こうして俺達は手を合わせてから朝飯を食べ始めていった。
まず俺は手前に置かれているスープを一口飲んでみた。あっさりとしていて美味しい。朝の時間にちょうど良い味だと思った。
スープを飲んだ後はすぐに目玉焼き、ベーコン、サラダ、パンなどなど……テーブルに置かれている料理を次々に食べ進めていった。
するとその時。ミリアは少し心配そうな顔をしながら俺にこう尋ねてきた。
「……え、えっと……どうでしょうか? お口に合いますか? 不味かったりはしませんか?」
「もぐもぐ……ん? いや不味いなんて事は一切無いぞ。全部普通に美味い。もぐもぐ……」
「あ、ほ、本当ですか? それなら良かったです……っほ」
「あぁ、本当だ。それにしてもミリアは本当に凄いな。こんな立派な朝飯をサクっと短時間で作れるなんてな……もぐもぐ……」
「えっ? い、いやいや、全然凄くなんてないですよ。これくらい私にとっては全然普通といいますか……え、えへへ……」
ミリアの作った朝飯を食べながらそんな感想を伝えていくと、ミリアは嬉しそうにはにかんだ笑みを浮かべていった。
という事でそれからも俺達はミリアの作った朝飯をノンビリと食いながら過ごしていった。




