14話:その日の夜(ミリア視点)
それからすぐに私達はジークさんの貸部屋に帰ってきた。
その後はジークさんと一緒にご飯を食べていき、私は裁縫仕事を再開していった。
ジークさんも裁縫仕事も手伝ってくれたので、私の裁縫仕事は一日で終わらせる事が出来た。
そしてそれからさらに数時間が経過し、今は夜になった所だ。
「それじゃあ明日も早いからそろそろ寝るぞ」
「は、はい。わかりました……おやすみなさい……」
そう言って私達は就寝に付いた。
ちなみに今日も私はジークさんのベッドを貸して貰っている。ジークさんは部屋の端に置かれているソファで寝ている。
私はジークさんに『私がソファで寝ます』と言ったのだけど、でもジークさんは『お前がベッドで寝ろ』と言って有無を言わさずに私をベッドに押し付けていった。
(やっぱりジークさんって……凄く優しい人だよね……)
私は心の中でそう呟いていった。ジークさんは終始ぶっきらぼうな感じだし、言葉遣いも荒々しかったりもする。
だから第一印象ではちょっと怖そうな人なのかも……って思ったりもしたけど、でも今はそんな事は一切思わない。
だってジークさんは私のためにベッドを使わせてくれるし、裁縫仕事の手伝いもしてくれるし……いつもぶっきらぼうな感じだけど、でもジークさんは本当はとても優しくて素敵な方だと思った。
(それに今日のジークさん……とってもカッコ良かったな……)
今日の日中、学園の同級生たちに色々と辛い事を言われてしまい、それで辛くて涙を流してしまった時……その時にジークさんは私の元に颯爽と駆けつけてくれた。そしてジークさんは私の事を全力で庇って助けてくれたんだ。
し、しかもそれだけじゃなくて……。
『コイツが物凄く美人な女だからだよ!』
「……ぅ、あっ……!」
―― バタバタッ……!
私はジークさんの言葉を思い出して足をバタバタと動かしていった。もしかしたら顔も赤くしているかもしれない。
だって私はそんな事を言われた事が一度も無かったんだもん。私はいつも周りから『暗い女』とか『陰鬱女』とか『お化け女』とか呼ばれていた。
その理由は私が内向的というか口下手なせいもあるのだけど、私の白い肌と白い髪の毛が全く生気が感じられないとの事で周りから浮いた存在になっていた。そのせいで『お化け』とか『生きてないみたい』とか揶揄される事が多々あったんだ。
だから私は周りから気持ち悪い女だと思われていたので、今まで周りから美人なんて言われた事がなかった。
だから今日生まれて初めてジークさんにそんな事を言われて、とてもビックリとした気持ちになった。
そしてその言葉を聞いて私はとても嬉しい気持ちにもなっていた。だって私だって一応女の子だから……だから容姿を褒めてくれたら嬉しくなるのは当然の気持ちだもん。
だからジークさんにそう言われて私は凄く嬉しくなったし、それにその言葉を聞いて私はすっごくドキドキとしたんだ。顔も赤くなってると思うし、身体もポカポカとしている……。
(……って、あれ? ドキドキ……?)
その時、私はふと疑問に思った。そ、そういえばドキドキって……なんで私はドキドキとしているんだろう……?
(と、というかそもそも……ドキドキってどういう感情なんだろう……?)
私は今まで誰かに対してこんなドキドキとした感情を抱いた事は一度も無かった。婚約者にもそんな感情を抱いた事は一度も無かったと思う。
それなのに何でジークさんに対してこんなにもドキドキとしているんだろう? というかこのドキドキとした感情って一体何なのかな……?
「ん、んんー……うっせぇぞー……すぅ、すぅ……」
「あっ……す、すいません……」
そんな事を思っていたらジークさんが寝言でそう言ってきた。足をバタバタとかさせていたから、ちょっと煩かったのかもしれない。
なので私は小声でそう言いながら布団の中にゆっくりと潜り込んでいった。
(それにしてもそんな朝早くから仕事があるなんて……やっぱり冒険者ってとても大変な職業なんだね)
ジークさんは冒険者をしているというのを今日聞かせて貰った。
冒険者といえば毎日身体を使って肉体労働をする職業だ。きっと毎日沢山のスタミナを使っているはずだ。
だから私はそんな毎日冒険者として頑張って働いているジークさんのために……明日の朝はとある事をしてあげる事にした。
まぁジークさんが喜んでくれるかわからないけど……でもこんなにもお世話になっているんだから、ちゃんとジークさんに恩を返したいんだ……。
それとまぁ、何ていうかその……もしかしたら明日の朝にこれをしてあげたらもしかしたら……ジークさんも喜んでくれるかなって思って……。
それでもしジークさんが喜んでくれたら私も嬉しいから……だから明日の朝は早めに起きて……それでジークさんのためにあれを作ってあげる事にしよう。




