第23話 《ポップアップショップを目指して》
俺と柚月がやっているゲームがアニメ化され、そのポップアップショップが名古屋で開催される。
最初の3日間は入場規制が行われており、抽選の当選者本人と、その同伴者1名だけが入場できる。
もちろん俺と柚月は抽選に申し込んだ。その結果、当選したのは俺だった。
入場時間は今日の10時から。
そのため、週末の朝早くから俺と柚月は新幹線に乗り、名古屋へ向かっていた。
車内では、柚月がスマホでポップアップショップの商品の一覧を眺めている。
「これも欲しいし、こっちも欲しい……んーっ、迷う!」
画面をスクロールしながら、柚月は嬉しそうに目を輝かせていた。
「さすがに全部だと凄い値段になりそうだな」
「そうなんだよね。奏汰はどれにするか決めてるの?」
「タペストリーは買う予定。あとはTシャツがちょっと気になるかな。実物見ていい感じだったら買うかも」
「確かにTシャツもいいなぁ~」
朝早いというのに、柚月はすっかりテンションが上がっていた。
新幹線は順調に進み、あとは名古屋駅に到着するのを待つだけとなった。
「次が名古屋駅か。あっという間だな」
「着いたら真っ先にポップアップショップ行くでしょ? その後はどうするの? 今日は帰り遅くなるって伝えてあるから大丈夫だけど」
「アニメショップも行って、後は夜まで何ヶ所か観光しようかと思ってるよ。せっかく遠出するんだし時間ギリギリまで楽しまないと」
「プチ旅行だね」
「旅行と言えばそろそろ修学旅行だよな」
「今回の修学旅行超楽しみなんだよね。行先がアニメの聖地になってるし」
「自由時間とかで時間あれば聖地巡礼するか」
「うんっ」
話しをしていると、アナウンスが流れ、新幹線は名古屋駅へと到着した。
俺達は新幹線を降りると、地下鉄に乗り換えるためそのまま駅構内を移動した。
だがしかし―――
「えーっと、今がここで、最寄りの駅はここだから、乗る電車は―――どれだ?」
「路線が多くて分からないね……」
「地元は地下鉄無いし、こういう感じで線路が交差しているところもないからな」
2人揃って路線図とにらめっこをする。
名古屋駅に着いたのはいいものの、目的地へ向かう前に早くも難関に直面していた。
地図アプリなどを駆使しながらなんとか電車に乗り、最寄り駅に到着。そこからさらにポップアップショップが開催しているショッピングセンターへ歩いて向かう事数分。
「やっと着いたーっ」
「電車めっちゃ混んでたね……」
「少し休んでから行くか?」
「大丈夫だよ。早く実物見たいから行こっ」
真っ先にポップアップショップがあるフロアまで行くとすでに数人の客が商品を選んだり、レジで会計したりしていた。
俺達も入り口でチケットを見せ、店内へと入った。
時間指定での入場という事もあり、店内はそれほど混み合っていない。
これなら焦らずゆっくり商品を選べそうだ。
柚月はさっそく近くに並んでいた商品を手に取り、興味深そうに眺めていた。
「これいいな~。思ったより大きい。あっ、このマスコットぬいぐるみ可愛い~」
そう言って柚月は次々商品をカゴへ入れていった。
俺も一緒に商品を選び気に入ったものをカゴへ入れた。
「そういえば物販以外にも展示エリアがあるらしいぞ」
「そうなの!? 物販以外の情報全然調べてなかった」
「展示エリアはチケットなしで入れるから人多そうだけどな。買い物終わったら行ってみるか?」
「もちろん!」
商品を買った俺達は物販エリアを後にし、展示エリアへと向かった。
そこにはゲームに登場する武器や防具を再現した展示をはじめ、キャラクターやモンスターの設定資料などが数多く展示されていた。
「これって奏汰が使ってる武器じゃない?」
「サブ武器で使ってる剣だな。こうやって見るとやっぱりデカいな。柚月が使ってる杖は?」
「ん~、さすがに展示されてないっぽい。でも、お気に入りの衣装ならここにあるよ」
「おぉ~。リアルで見ると装飾品とか細かいな」
「この桜柄の部分がお気に入りなんだよね。アニメだとちょっと違うけど」
「アニメだと多少省略されているからな」
俺達はこの作品のゲームやアニメの話をしながら展示エリアをゆっくり見て回った。
「堪能した~」
展示を一通り見終えた柚月が満足そうに声を漏らす。
「まさかこんなに色々展示してあるとは思わなかった」
「だね。見て回ったらお腹空いてきちゃった」
「一旦、荷物を駅前のロッカーに入れてから昼飯にするか」
「賛成~。奏汰はなにか食べたいものある? 僕は何でもいいよ」
「ん~。俺も何でもいいんだけど、そもそも何があるか分からないし―――あっ、そういえばSNSの知り合いが名古屋出身だったな。ちょっと聞いてみるか」
俺はSNSのメッセージ機能を使い、おすすめの料理を聞いてみることにした。
今いる場所などを送ると、すぐに返事が返ってきた。
「この近くにとんかつ屋があって、そこの味噌カツがおすすめらしい。それでいいか?」
「うん、いいよ」
俺達は教えてもらったおすすめのとんかつ屋へ向かった。
有名店だけあって店前にはすでに列が出来ていた。
列に並び、しばらく待つとようやく店内へ案内され、席に着いた俺達は同じ味噌カツを注文した。
しばらくすると、注文した料理が運ばれてきた。
柚月はさっそく味噌カツを口に運び、一口食べた。
「美味しい~」
柚月は幸せそうな表情を浮かべた。
俺も味噌カツを一口食べる。
思っていたより味が濃すぎず、ちょうどいい。白米がどんどん進む。
「確かにおすすめするだけあるな」
「この後どこ行く?」
「さっき、ここを紹介してくれた人に観光場所も聞いておいたから任せな」
「楽しみにしているね」
昼食を終えた俺達は、教えてもらった観光場所の一つである科学館へ向かった。
入り口で入場券を購入し、館内の展示エリアへと入る。
渡されたパンフレットを見ると館内はさまざまなエリアがあるらしい。
「科学館なんて小学生の頃以来かも」
「ジャンルごと展示エリアが分かれているんだな。ここが水のエリアでこっちが音のエリアか。なんか小学生の頃の理科を思い出すな」
「結構広いんだね。早く見て回ろ」
俺達はパンフレットを片手に科学館の展示を見て回った。
実際に展示に触れたり体験しながら科学や物理について学ぶことができる。思っていた以上に面白い。
柚月もまるで子供のようにはしゃぎながら次々と展示を体験していった。
そんな中、ふと遠くの方を見ると、何かの展示に人が並んでいるのが見えた。
「なんかあそこだけ人多いな」
「ん? 本当だ。何の列かな?」
俺はパンフレットを開いて見る。
「えーっと……どうやら地震の体験が出来るみたいだな」
「やってみたい!」
「そんじゃ並ぶか」
俺達は列に並び順番を待った。
十数分ほど待ちようやく俺達の番が来た。
スタッフに案内され室内に入るとアナウンスが流れた。
『これより地震体験を行います』
「いよいよ始まるぞ」
「なんかドキドキしてきた」
床がゆっくり揺れ始め、モニターに震度が表示された。
次第に揺れは大きくなっていく。
「これは立っているのもやっとだな」
「何かに掴まらないと倒れ――きゃっ!」
柚月は手すりに掴まろうとしてバランスを崩し、俺の背中にしがみついた。
突然背中に体重がかかり、俺もバランスを崩しそうになったが、目の前の手すりに掴まって何とか堪えた。
しかもなにやら背中に柔らかい感触がする。
「お、おい、そんなにくっついていると身動き取れないんだけど。手すり目の前にあるから」
「だって今離したら絶対倒れちゃう」
「そうだけど、でも―――」
すると、次第に揺れが収まり体験終了のアナウンスが流れた。
「終わったみたいだぞ」
「まだなんか揺れているような感じがする~」
俺達は地震体験コーナーから外に出たがまだ地面が揺れているような錯覚に陥った。
科学館を堪能した俺達はその後も事前に聞いていたおすすめスポットや、街を歩いていて気になった場所をいくつか観光した。
気が付けばいつの間にか日も沈み始めていた。
「結構色々探索したな」
「お城の写真も撮ったし、お土産も買ったから、もう満足だよ」
「そんじゃそろそろ帰るか」
「うんっ」
俺達は新幹線で帰路に着いた。
帰りの新幹線の車内では、一日歩きまわって疲れたのか、柚月は俺に寄り掛かりながら眠ってしまっていた。




