第16話 《衣装を見せたくて》
幸せな夏休みも終わりまたいつもの学校生活が戻ってきてしまった。
長い1週間もようやく今日で終わり残すこと1限だけとなった。
今週最後の授業は学級活動であるLHR。
LHRとは毎週1限だけあり各クラスで話し合ったりする授業だ。
「今日のLHRってなにやるんだっけ?」
「文化祭について話し合うって竹内が言ってたぞ。今月末にはあるからな」
「もうそんな時期かぁ。クラスの出し物何になるんだろう? 奏汰は何か出店案出すの?」
「いや、俺は特に希望無いから出た案に投票するだけかな」
俺達の通う高校では文化祭が2日間ある。
文化祭では各クラスで競う要素も含まれており一般客と生徒の投票と実行員が催す企画にポイントが割り振られその合計が高いクラスが優勝するというルールだ。
優勝賞品としてクラスに金の盾が置かれる。さらに学食で使える金券が貰えるのだ。
文化祭実行員の竹内と井上さん中心に話し合いが始まった。
「では、今から文化祭の出し物について話し合いをしたいと思います」
「何か出店案がある人はどんどん言ってねー」
各自やりたい出し物を言っていきそれを竹内が黒板に書き出していった。
定番のお化け屋敷や演劇、飲食系など色々案が出た。
正直どれも面白そうだ。
「もう出店案は無いですか? それじゃぁこの中からやりたい出し物を多数決で決めたいと思います。今から紙を配るので黒板に書いてある出し物の中でやりたいのを書いてこの箱に入れてください」
配られた紙にやりたいの出し物を書いて箱に入れていった。
全員の投票が終わり井上さんは箱から紙を取り出し開き竹内が票を書き出して言った。
接戦になると思ったが圧倒的票を獲得した出し物がある。それは和風メイド喫茶だ。
男子たちは女子の和風メイド服が見たいという理由で一致団結。女子も一度着てみたいという理由で多くの票が入った。
「クラスの出し物は和風メイド喫茶に決定ーっ」
「それじゃぁ役割分担を決めたいと思います。男子は宣伝係、内装係、料理係を、女子は給仕係、料理係を決めてください」
席を移動して男女別々に話し合いが始まった。
柚月は渋々席を移動していったが何やらすぐに女子に囲まれていた。
男女別で集まり係りを決めていると女子側から賑やかな声が聞こえてきた。なんだか盛り上がっているみたいだ。
話し合いが終わり各自の係りが決まった。
因みに俺は内装係となった。完全裏方作業だ。準備期間中は忙しいが当日は自由時間が多い。
帰り道柚月は何やら浮かない顔をしていた。話し合いで疲れたのだろうか?
確かに女子に囲まれていたがそれにしても様子がおかしい。
「テンション低いけど話し合いで何かあったのか?」
「あ、うん……あのね、僕、給仕係になっちゃった」
「給仕係か~……―――給仕係!? ってことは……」
「和風メイド服着ることになっちゃった」
「料理出来るなら料理係になればよかったのに」
「もちろん料理係に立候補しようとしたよ。でも何でか皆僕に和風メイド服着させようとするんだもん……」
「決まったことは仕方ないか。でも無理だけはするなよ。俺も出来る限りフォローするからさ」
「うん、ありがとうね」
柚月は安堵したような感じに微笑んだ。
フォローするとは言ったものの実は俺も和風メイド喫茶に票を入れたのだ。正直和服好きな俺にとっては最高だ。それにこれなら料理が出来る柚月は裏方に回れるなんて考えていたがまさか給仕係になるとは。柚月には悪いが正直柚月の和風メイド姿を見てみたいと思ってしまった。
翌週から朝や昼休み放課後を使って少しづつ準備をし始めた。
もちろん部活動に入っていない俺と柚月はほぼ毎日放課後の準備作業に入っていた。
俺はメニュー表や部屋の間取りを考え、柚月は井上さんと辻本さんと共に接客を頑張っていた。最近柚月はこの二人とだけなら多少話せるようになってきているみたいだ。
文化祭まで残り2日。今日と明日は授業が無く、朝から夕方までフルで文化祭の準備が出来る。
そして本日、衣装レンタルサイトから和風メイド服が届いた。
「服届いたから給仕係は更衣室集合ね」
『はーい』
給仕係の女子は更衣室に試着しに行った。もちろん柚月試着のため女子更衣室に連れていかれた。
教室を出る際この世の終わりみたいな顔をしていたが大丈夫なのだろうか。
しばらくして戻ってきたがすでに全員制服姿になっていた。どうやら男子が見れるのは文化祭当日までのお預けみたいだ。
放課後柚月はいつも以上に疲れた顔をしていた。
「はぁ……今日も疲れた……いよいよ明後日かぁ。お腹が痛い」
「おいおい。当日倒れたりするなよ。俺はちょっと楽しみだな。生で和風メイド服見たことないし」
「そっか。男子はまだ見てないんだったね」
「どういうデザインのかは教室で見たけど着たのはまだだな。めっちゃ楽しみなんだよな」
「奏汰はほんと和服好きだよね。……ねぇ、それなら今日見てみる?」
「え?」
「実は今日持って帰ってきてるんだよね。皆の前で着るが恥ずかしくて、だったら持って帰って家で着てみてねって。サイズとか確認することもあるし」
「それなら別に俺が居なくても―――」
「奏汰に見てほしいの」
「はいっ!?」
「ほ……ほら、誰かに見てもらった方が練習になるというか。だからお願い!」
「俺は別に良いけど」
なぜか唐突に柚月の和風メイド姿を見ることになった。
そのまま帰り道に柚月の家に寄り、部屋で待たされること数分。ドアが静かに開いた。
そこには和風メイド服を着た柚月の姿があった。
上は白地に桜柄の着物で腰には赤い帯とフリルのエプロン、下は同じ桜柄の黒っぽいスカートで頭にはフリルのカチューシャを着けていた。
しかもなんだかスカートが短くて帯により胸が強調されている気がする。
「ど……どうかな? ちょっと帯で胸が苦しいけど―――」
「可愛いい……」
「へっ!?」
「―――! あっ、いや、今のは」
ヤバい。心の声が漏れてしまった。
柚月の顔を見ると頬を赤らめていた。
「えへへ、可愛いかぁ~」
どうやら満更でもないみたいだ。
凄く嬉しそうにしていた。




