第14話 《花火大会》
毎日ゲームをやってアニメを観て好きな時間に寝て起きる。夏休み最高だ。
そんな夏休みも気が付けば折り返し地点。
今日も俺は柚月の家でゲーム―――ではなく今日は宿題をやるため訪れていた。
去年の夏休みは最後の4日間で宿題を片付けた苦い思い出があり今回もそうならないようにと柚月の提案で宿題をすることになっていたのだ。
「それで奏汰は宿題何残ってるの?」
「数学が半分くらいと科学と物理が丸々とまだ残ってる。あと漢字と読書感想文も」
「ほぼ全部じゃん……」
「そういう柚月は何残ってるんだ?」
「僕はもう終わったよ。夏休み入って1週間くらいで」
「マジで!? 早すぎだろ……。てかほぼ毎日遊んでたのにいつの間に」
「毎日朝晩と奏汰が用事で遊べなかった日だけで終わったよ。奏汰も早く終わらせて気にせず思いっきり遊ぼうよ」
「そうだな。まずは数学から終わらせるか」
俺はテーブルにテキストを広げ宿題をやり始めた。その間柚月は横で見守りつつ分からないところを教えてくれたが途中で母親に呼ばれ席を外した。
その間もサボることなく真面目に宿題をやり続けていると柚月が戻ってきた。
「進んでる?」
「んー、結構良い感じ」
俺は柚月の方を見向きもせずテキストに張り付いていると視界の隅で何やらひらひらと動くものが見える。
ふと、手を止めその方向を見るとそこには白いワンピース姿の柚月の姿があった。
「おまっ、その恰好―――」
「今さっきお母さんに着せ替え人形にされてた。なんかまた色々買って気みたいなんだよね……」
そう言って呆れた感じにため息をついた。
ワンピースの裾から見える白い肌が目に入る。というか少し無防備だ。
柚月は俺の横に座り一緒に宿題を見てくれたがなんだかドキドキしてしまう。
集中力が段々と落ちてきてしまった。
「きょ……、今日は結構進んだしこれくらいにして後は家帰ってからにするかなー」
「お疲れ様。この後ゲームする? それともどこか遊びに行く?」
「出かけると言っても漫画もこの前大量に買ったしな。柚月はどこか行きたい場所でもあるのか?」
「ん~……あっ、そういえばさっきお母さんから明日花火大会あるって聞いたんだけど」
「毎年大きな池のある公園でやってるやつか。そういえば去年柚月はその日旅行で居なかったんだったな」
「行きたい行きたーいっ!」
「この前、納涼祭行ったばかりだろ。てか納涼祭よりたぶん人多いと思うぞ?」
「奏汰が居てくれるから大丈夫」
「俺頼りか……。まぁ明日も暇だし久々に近くで見に行ってみるか」
「わーいっ。それじゃぁ明日花火大会ねっ」
急遽明日、花火大会に行くことが決まった。
翌日、夕飯を食べ終わりすぐに柚月の家へ向かうと柚月は家の前で待っていた。
さすがに納涼祭の時みたいに浴衣姿ではないがリボンが付いたTシャツにミニスカート姿だ。
「柚月、お待たせ。さてと会場に向かうとするか」
「ここからどうやって行くの?」
「駅前から会場の公園近くまでバスが出てるからそれで行く予定。大体15分くらいで着くだろ」
俺達は駅前のバスロータリーから会場近くまで走るバスに乗り向かった。
車内は浴衣を着た人達で少し込み合っている。みんな目的地は一緒らしい。
何とか席に座ることが出来たがあっという間に満席となった。
道中のバス停に停まる度に次々人が乗り込みついにバスは満員となった。
「なんだか暑いね」
「これだけの人が居るからな。冷房が間に合っていないんだろ」
人が多く冷房がほぼ役目を果たして居ないくらい蒸し暑くなってきた。
会場近くのバス停に着くと俺達を含めたほとんどの乗客が降りた。
「やっと着いたね……」
「だな……後はここから会場まで歩いていくだけだ。少し休んでいくか?」
「ううん、大丈夫だよ。早く行こっ」
会場まで歩いて向かっていると日が沈み夕焼け空は徐々に暗闇に包まれた。開始時間に近付くにつれ人通りが多くなってきている。
会場に着くと納涼祭ほどではないが色々屋台が出ていた。打ち上げ時刻まで多少時間があるためゆっくり見て周りたいが人が多くてそれどころではなさそうだ。
「すごい混んでるね……」
「さっきバスに乗れなかった人も居たしこれはまだまだ増えそうだな。身動きが出来なくなる前に場所取っておくか」
「どの辺りで見る?」
「座って見たいからな。なるべく前の方で場所取らないと」
「前の方前の方……あっ、あの池周りにある芝の所空いてない?」
「どれどれ? あー、芝生の所は有料席っぽいぞ。ロープで仕切ってあるし」
「それじゃぁこの人混みの中で見るしかないのかな?」
「正面じゃなく横からなら見える場所あるかもな。池の外周で良い場所あるか探してみるか」
人混みを何とか抜けて近くの自販機で飲み物を買い、俺達は人が少ない場所を探し池の周りを歩いた。
池を半周ほど歩くと道の真ん中にバリケードがありその前に警備員が立っている。どうやらこれ以上先は立ち入り禁止みたいだ。
「ここまでみたいだな」
「この辺りで見よ。人もあまりいないし意外と穴場かもよ」
「かもしれないな。そんじゃそこらへんに座って見るか」
俺達は近くにある石の階段に座って見ることにした。
話して待って居ると打ち上げ時刻になりアナウンスが入った。
「これより第〇〇回目花火大会を開始します」
「いよいよだな」
「僕、会場で花火見るの初めて」
「花火大会来たことないのか?」
「いつも家から見てるだけだったからね」
「それならきっと驚くぞ」
空を見ていると“ドンッ”と音が鳴り空に一本の筋が登って行き上空で大きく明るく弾けた。空には大きな黄色い花が咲いたように花火が色鮮やかに輝いた。
音が体を抜けていき風に乗って火薬の匂いがする。
こういうのは遠くから見るだけじゃ経験出来ないから来た甲斐があった。
「きれーいっ!」
「やっぱり迫力凄いな」
赤色や青色。サッカーボールや星形など様々な花火が夜空を彩った。
ふと横を見ると柚月は目を輝かしずっと嬉し楽しそうに花火を見ていた。
楽しい時間は流れるように過ぎラストの超巨大な花火が打ちあがった。
「以上を持ちまして第〇〇回目花火大会を終了します」
会場に終了のアナウンスが流れると同時に至る所から拍手が鳴り響いた。
柚月も余程良かったのか拍手をしていた。
帰ろうと立ち上がると公園入口の方では会場に来ていた人達が一斉に帰るため混んでいるのが見える。
「入口の方人の数凄い。バス混みそうだね」
「バスの本数もそこまで無いし歩いて帰った方がいいかもな。どうする?」
「僕は歩きでも大丈夫だよ」
「そんじゃ歩いて帰るか。その前に飲み物無くなったから買わないと」
近くの自販機エリアに飲み物を買いに向かうと数台ある自販機が薄暗い公園のベンチを静かに照らしていた。
見るとほとんどの商品が売り切れているためボタンが赤く光っている。
しかし道中のコンビニまでは少し距離があるためここで買って行かなければならない。
「見事に全部の自販機スポドリとか無いね。他に自販機無いっけ?」
「池の反対側にも自販機エリアあるけどさすがに遠すぎるからな。これにするか」
俺は悩んだ結果カフェオレを購入した。
商品が取り出し口に落ちるとルーレットが始まった。どうせ当たらないだろうと思い飲み物を取り出していると何やら聞いたことない音が鳴った。見ると数字が7777と揃っていた。まさかの当たりだ。
「奏汰、当たったよ!」
「俺人生で初めて当たったわ。柚月好きなの選んで良いよ。俺は一本で充分だし」
「いいの!? ありがと~。それじゃぁ―――僕も奏汰と同じのにしよっと」
柚月は俺と同じカフェオレを購入した。
公園を出て歩いていると来るとき降りたバス停は予想通り混んでいて列が出来ている。
その列を横目に俺達は家に向かい歩き続けた。遠くには駅前にあるマンション群が輝いて見える。
「なんか新鮮だよね」
「何が?」
「こうして奏汰と夜遅くに家から離れたところ歩くの。いつもは夜道歩くって言っても家から近い場所とかだし」
「まぁ、あまり歩いて遠出はしないからな。てか門限とかは大丈夫か?」
「お母さんには連絡したから大丈夫だよ。奏汰も一緒って言ってあるし」
「それなら少し寄って行きたい場所あるんだけど良いか?」
「うん、いいよ。どこ寄って行くの?」
「アニメグッズ売ってるリサイクルショップが近くにあるだよ」
「良いねっ。楽しみぃ~。早く行こっ」
俺達は月明かりに照らされた夜道を歩き続けた。




