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オタクの友達が性転換しました  作者: 藤桜


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第13話 《浴衣と屋台と》

 今日からいよいよ待ちに待った夏休みだ!

 期末テストも勉強会のお陰で無事赤点回避。しかもギリギリどころか余裕で全教科平均点以上を取ったのだ。親との約束で小遣いもアップしたから今はふところが暖かい。

 そんな幸せの夏休み初日。俺は柚月と約束していた納涼祭に行くことになっている。

 夕方、俺は柚月との待ち合わせのため集合時間より少し前に駅前のベンチで待っていた。

 家まで迎えに行こうと思っていたが柚月はなぜか駅前のここを集合場所にしてきたのだ。きっと何か用事があるからだと思い俺は独りベンチで座りながらスマホゲームをして待っていた。

 集合時間を少し過ぎ、まだかと辺りを見渡すと納涼祭に行くだろう人たちが増えてきていた。浴衣を着た人も複数人居る。

 すると遠くから浴衣姿の一人が何やらこっちに向かって手を振って向かって来ていた。夕日が眩しくて良く見えないが明らかに俺の方へ来ている。まさかと思ったがそれは白地にピンクの花柄の浴衣を着ており、手には和柄の巾着を持っている柚月だった。

 下駄のカランコロンと夏らしい音が徐々に聞こえてきた。


「おまたせ。遅れてごめんね。下駄だとあまり早く歩けなくて――って奏汰どうしたの?」

「え、いや別に。まさか浴衣で来るとは思わなくて」


 俺は柚月の浴衣姿につい見とれてしまっていたみたいだ。

 浴衣を着て来るなんて事前に聞いていなかったし、ましてや予想もしていなかった。

 俺は和服が好きでゲームキャラの服装を和服にするくらいのこだわりだ。そんな俺にとって現実の和服なんて近くで見る機会が無い。

 ましてやそれを着ているのが柚月だったためこれは完全に不意打ちだった。


「お母さんが張り切っちゃってね。僕はそのままでも良いって言ったんだけどどうせならって。どうかな?」

「どうって……えっと、普通に似合ってるよ」

「えへへ、ありがとっ」


 柚木は照れながら微笑んだ。その顔を見て何だかドキッとしてしまった。


「てか何でわざわざ駅前ここに集合だったんだ?」

「漫画とかだと駅前に集合が定番かなって。本当は僕が先に来てこの姿で驚かせようって思っていたんだけどね」

「そういうことだったのか。あっ、そうだ。屋台でなにか奢ってやるよ。テスト勉強見てくれたお礼に」

「ほんとっ!? ありがとーっ! 早く行こっ」

「ちょっ、急がなくてもすぐには売り切れないって」


 俺は柚月の後を追って納涼祭が行われている商店街へ向かった。

 納涼祭が行われている間は商店街の中心を通っている道路は封鎖され歩行者天国状態になっている。

 道路脇には横一列に真っすぐ屋台が並び間の道路は人で埋め尽くされようとしていた。

 近づくと風に乗って香ばしい匂いがしてくる。これのために俺と柚月は夕飯を食べて来ていないのだ。


「何から食べようかな? やっぱり定番のたこ焼きかな? いきなり甘い物からでもいいよねぇ。奏汰は何食べたい?」

「俺は焼きそば食いたいな。その前にまずはどこに何があるか把握しないと。人が多くて向こう側の屋台が良く見えないし」

「それもそうだね。とりあえず真っすぐ行ってみよ」

 

 俺達は人混みを避けつつ屋台を見ながら会場を真っすぐ進んだ。

 しばらく進むと正面からたこ焼きを持った何人かとすれ違った。

 どうやらこの先にたこ焼きの屋台があるみたいだ。

 さらに進むとたこ焼きと書かれた看板が見えた。しかも向かいには焼きそばの屋台もある。


「たこ焼き屋あった! しかも焼きそば屋も!」

「探す手間が省けたな。またここに来るのも大変だから先に買うか?」

「そうだね。それじゃここでたこ焼きを奢ってもらおうかな? あっ、待って。やっぱり焼きそばにしようかな?」

「両方奢ってやるよ。テスト勉強でかなりお世話になったし」

「いいの!? あっ、でも欲しいゲームあるって言ってなかったっけ?」

「そうなんだけど思ったより小遣いアップしたからな。それに夕飯代も貰ったから余裕あるんよ。だから遠慮するなって」

「うん、ありがとー」


 柚月は嬉しそうにニコリと微笑んだ。

 たこ焼きの屋台へ行くとちょうど焼き立てのタイミングだったみたいで出来立てのたこ焼きと向かいの焼きそばを各2パック購入した。


「他にいくつか買ってから食うか?」

「これ持って移動も危ないからそこで座って食べよっ。せっかくの出来立てなんだし」


 柚月が指した方を見ると花壇を囲うレンガの縁に座って食べている人たちが何人か居た。

 俺達もその場所でたこ焼きを食べることにした。柚月は浴衣が汚れないように巾着からハンカチを取り出すとそれを花壇の縁に敷きその上に座った。


「ほら、柚月の分のたこ焼きと焼きそば。たこ焼きは出来立てで熱いから気を付けろよ」

「ありがとーっ。それじゃぁいただきます!」


 柚月はたこ焼きをフゥフゥっと冷まし小さい口で半分ほど齧った。

 中身はまだ熱かったみたいでハフハフしながら食べている。

 それを横目に俺もたこ焼きを頬張った。


「美味っ!」


 つい声が出てしまうのも無理はない。屋台のたこ焼きだと思ってあなどっていたが外はカリカリで中はふっくら、そして主張が激しい大きい蛸が入っている。


「美味しいね」

「これは焼きそばも期待できそうだな」


 俺は次に焼きそばを食べ始めた。

 口に入れた瞬間ソースの香ばしい匂いが鼻から抜けていく。

 やっぱりカップ焼きそばとは違う美味さだ。甘辛いソースが絡んだ麺としんなりしている野菜が合う。

 柚月も幸せそうに口いっぱい麺を頬張っていた。

 俺達はたこ焼きと焼きそばを堪能した。

 これだけでもそこそこ腹に溜まるがまだ屋台巡りは始まったばかりだ。

 

「食べたねぇ~」

「なんだか甘い物食いたくなってきたな。デザート系ってなにがあったっけ?」

「さっき来る途中クレープと綿菓子の屋台見えたよ。確か隣同士だった気がする」

「よし、次はそれにするか」


 俺達は一度屋台の列の端まで行きその後Uターンして来た道を再び進んだ。

 時間が経つにつれ納涼祭に訪れる人も増えてきている。


「なかなか思うように真っすぐ進めないね」

「時間的に夕飯食べてきた人とか仕事終わりの人なんだろうな。おっ、クレープと綿菓子の屋台見えたぞ」

「早く買って人が少ないところ行こ」

「だな」


 俺達は何とかクレープと綿菓子の屋台にたどり着いた。

 柚月は綿菓子とクレープを買い、俺はクレープのみを買い人混みを外れた所へ向かった。

 商店街の道を一本入ると急に人通りが減り少し薄暗い。

 俺達は明るい街灯の下へ向かった。


「この辺りなら人少ないからここで食うか。柚月は何のクレープにしたんだ?」

「僕はイチゴ&ベリーにしたよ。奏汰は?」

「俺は抹茶ホイップ&抹茶チョコの抹茶尽くしにした」

「僕それにしようか迷ったんだよね」

「なら一口食べるか?」

「良いの!? それじゃぁいただきまーす」


 柚月は俺が持っている抹茶クレープにかぶりつき、頬に付いたクリームを指ですくってペロッと舐めた。

 

「んーっ! 抹茶の風味凄っ。お返しに奏汰も一口どうぞっ」

「それじゃ遠慮なく」


 とは言ったものの柚月の一口より少し小さめにかぶりついた。

 口の中にイチゴとベリーの甘さと酸味が広がりそれを生クリームが優しく包み込む感じだ。


「甘酸っぱくて美味いな」

「それじゃ僕も」


 柚月はイチゴ&ベリーのクレープも食べ始めた。

 俺も抹茶クレープを食べようとしたがよく考えたらこれ間接キスになるのでは?

 いやいや、親友同士でそんな事を考えてはダメだ。しかしなんだか少しドキドキする。

 柚月の方をチラッと見たが気にせずクレープを食べていた。

 その後綿菓子やフランクフルトを食べたり、金魚すくいや輪投げ、射的を挑戦してみたり色々な屋台を巡った。

 気が付けば納涼祭に来てから2時間が経とうとしていた。


「結構食ったし遊んだな」

「だね~。もうこんな時間だったんだね」

「そんじゃ帰るとするか。家まで送るよ」

「ありがとっ」


 俺は柚月を送るため家まで一緒に向かい始めた。

 しばらく歩いていると柚月の歩く速度が遅く歩き方もぎこちない気がする。なんだか足を気にしているみたいだ。履きなれない下駄で疲れたのかと思ったがそんな感じでは無さそうだ。俺は歩みを止めた。


「どうした?」

「ちょっと指の間が痛くて……」

「見せてみ」


 俺は屈み柚月の脚を見てみると親指と人差し指の間が鼻緒の付け根にある前坪まえつぼによって擦れたらしく赤くなっていた。

 これ以上歩くのは無理そうだ。さすがに家まで裸足で歩いていくわけにもいかない。


「これ以上歩くのは無理か……」

「奏汰が僕をおんぶしてくれれば解決だね」

「さらっとエグイこと言うなよ……」

「でも他に方法無いよ?」

「だよな……しかたない。背負って行くかぁ」


 俺が背中を向けて屈むとすぐに柚月はなんだか嬉しそうに背中に覆いかぶさるように飛び乗った。

 その瞬間背中になんか柔らかい感触がした。

 

「っ!?」

「どうしたの?」

「えっ、別になんでもないよ」

「なんだか顔が赤くなってるけど?」

「背負って力が入っただけだって。それより今期のアニメでさ―――」


 俺は話しを逸らすかのように柚月とアニメトークを始めた。

 しかし歩くたびに背中に当たる感触に違和感がある。やけにダイレクトに伝わってくる気がする。

 これってもしかして―――!

 帰り道に会話した内容があまり頭に入ってこなかったのは言うまでもない。

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