第63話 初狩り
ひなたは自分の画面を確認した。
レベルは6に上がっていて、現在ポイントは450。
宝石をタップすると、直近の履歴が表示された。もともとあった400ポイントにレベルアップで+300ポイント。そこから-250ポイントされている。
-250ポイント。うさぎの本来獲得していたポイント数から250を引いても50になる。
敗北した二人は、同時に250ポイントを失っていた。
ひなたは澄んだ瞳で、嘲笑する二人の中学生を見つめた。
「騙したの?」
「あれえ? 言ってませんでしたっけ。『対戦』はポイントを賭けて遊ぶモードなんスよ」
「うんうん♡ センパイたち、知らなかったんだぁ♡ てっきり知ってるもんだと思ってたぁ♡」
「……分かった。じゃあ、もう一回戦おうよ。またポイントを賭けて」
ひなたは言った。コヴェナントからクリフォトの項目をタップする。
そこには鍵がかかっていて、24時間のタイマーが付いていた。
さつきがにやにやと笑った。
「いやぁ、残念だけど、そっちにペナルティあるんで無理ッスね。まぁ、止めといた方がいいと思いますよ。次に負けたらペナルティは3倍の72時間。さらに負けたら9日間はクリフォトに干渉できなくなります。いや、それ以前にポイント0で終わっちゃいますねぇ」
アキラがくすくす笑った。
「うさうさ先輩、ごめんねぇ♡ 一思いに終わらせてあげたかったんだけどぉ♡ あ、でもでも♡ 月末まで待ってれば公式戦が始まっちゃうからぁ~♡ それに出て、さっさと敗退すればあっという間にポイント0だよぉ~♡」
「ポイント、0……。ポイントが0になると、何かあるの?」
ひなたの質問に、二人の魔法少女はげらげらと笑った。
「なんてこたぁないッスよ。ただ、コヴェナントから追放されるだけッス。普通のつまらない人生に戻るだけ」
「そーそー♡ うさうさ先輩ってコヴェナント向いてないっぽいし、アキラたちがポイントもらってあげるぅ♡」
うさぎは地面に這いつくばり、おんおんと泣いていた。
あまりにもひどい仕打ちだった。
250ポイント、つまり約20万円。
うさぎの20万が、こんな出来レースみたいな遊びで吹き飛ばされてしまった。
20万あったら何ができるだろう? あれも買えるしこれも買えたのに。
こんな事なら魔法少女になんてならなければよかった。実際に使うかは置いておいて、自らが手に入れるはずだった20万のことを想い、うさぎは泣いた。
うさぎは魔法少女になったことを後悔して嘆いたが、それはこれが最後ではなかった。彼女はこれからも、血と汗と涙に濡れながら魔法少女になったことを後悔し続けるのだ。
ひなたが近づいてきて、涙でべしょべしょになっているうさぎを助け起こした。
「うさぎ、大丈夫だよ。ね、ほら、立って? 絶対に大丈夫だから」
「うう˝う˝ぁ……ひな˝だぢゃぁぁん……わ、私の20万がぁッ……!」
「250ポイントね……。うさぎ、今はここから出よう」
敗北した二人に面白い芸人でも見るような視線が集まる。
何を訴えるにしても、この場所は敵対する彼女たちの領域だった。獲物を最期までいたぶる猫のように、さつきが去っていく二人に声をかけた。
「一応言っておくと、警察に駆けこんでも無駄ッスよ。コヴェナントは、負けた方が悪いんスから」
「うんうん♡ 雑魚はお呼びでないで~す♡ 弱いのが悪いんで~す♡」
ひなたは振り返って笑った。
「私もそう思うよ。次は、絶対に負けないからねっ!」
魔法少女同士のやりとりに、周囲の仲間たちはさらなる盛り上がりを見せた。
だが、さつきとアキラだけは太陽のスマホを持った先輩から注がれる、純粋無垢な視線にたじろいだ。
その目つきは二人がコヴェナント内で見た、あの刺し貫く陽光のような灼熱の殺意に満ちていた。
第一部 第四章 PvP 完




