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魔法少女コヴェナント  作者: さんどまん
第四章:PvP
61/73

第61話 PvP 13

 ルシフェリカが本陣にしていた上層のテラスは、光の砲撃で吹き飛ばされた。


 11階より上は支えとなる柱を失い、その場所には焼け焦げた丸穴が空いている。


 まるで前衛芸術のようなバランスで建っていた上層階は、支柱の折れる凄まじい金属音が響いたかと思うと、重力に負けて首を傾げ始めた。


 曲がってはいけない箇所が曲がり、耳が引きちぎれそうな合金の剥がれる音がそこら中から鳴り響く。


 タワーマンションの上層だったものは、建築物の欠片を隕石のようにまき散らしながら墜落した。


 いわゆるパンケーキクラッシュと呼ばれる層崩壊現象が起こり、13階は11階へ、それが10階へと次々と墜落していく。そのまま全階層が破壊されるかと思いきや、上層の崩落で丸穴が潰され、各階の落下はそこで留まった。


「くっ……」


 サンライズハートの居た8階のテラスにもコンクリの塊が降り注ぐ。


 いまだ地震のような大きな揺れが続き、斜めに癒着したようなタワーマンションの残骸は、次に大きな衝撃が与えられれば簡単に全壊しそうなほどに傾いていた。


 落下してくるビルの瓦礫に紛れて、悪魔の魔法少女がこちらに向かって来るのが見えた。


 その周囲には、インプたちに吊り下げられて運ばれているウコバクと、瓦礫を蹴って、落下を安全に誘導するミノタウロスが見えた。


「もぉ~♡ カノンみて~な戦い方しやがって~♡」


 上層に配置していたウコバクは光の砲撃(ヘリオスケイン)と建物の崩落に呑まれて全滅した。


 上層を飛び回っていたインプも死に、残っているのは数体のウコバクとアキラを守るミノタウロスだけだった。


 ルシフェリカはぱたぱたと動く羽根で滑空しながら、8階のテラスに降り立った。そのすぐあとに、護衛のミノタウロスが飛び降りてくる。


 その手にある両刃斧(ラビリュス)を見て、サンライズハートが叫んだ。


「あ、それ! ムーニーサンライズブレードッ! 泥棒ッ! 返してよ!」


「ム、ムーニー、ブレ……?♡ これ、斧じゃないんですかぁ?♡ てかセンパイだって、デュナの斧ぱくったんだし、人の事言えなくなーい?♡」


「うっ……そうだったね。いやお喋りしてる場合じゃなかったッ! 決着をつけようっ! 私が勝つよっ!」


 光の杖(ヘリオスケイン)を中段に構えたサンライズハートに、アキラは笑った。


「センパイ、まだ勝つ気でいるんですかぁ?♡ もうHP残ってないんじゃないのぉ♡」


「アキラちゃんを倒せば、勝ちだよね」


「も~♡ 舐めてるでしょ~♡ アキラが直接戦闘(タイマン)できね~子だと思ってるのぉ~?♡」


 ルシフェリカの宝石が瞬く。予備動作に入った。


 周囲のウコバクたちが包囲を狭めてくる。上空のインプが尻尾を振り回して、隙を伺っている。


 サンライズハートは光の杖を構え、走った。その眼前に両刃斧(ラビリュス)が振るわれる。


 ミノタウロスだ。


 サンライズハートは一刀両断しようと光の杖を振った。


 ところがミノタウロスは、青い炎を伴って、あり得ない挙動で光の斬撃を回避した。


「ええッ!?」


 『一歩(スモールステップ)』だった。


 続く光の連撃をミノタウロスは易々と回避する。


 まるでムーニーバニーのように、ステップを踏み回避し続ける。


 からぶった所に両刃斧(ラビリュス)の反撃が振るわれた。サンライズハートは光の杖を掲げて、それを防いだ。鋼鉄が焼き切れるような音がする。左右からはウコバクのスプーンが迫る。


 その光と音の向こう側でルシフェリカが魔法陣に包まれた。



――――――――ULTIMATE♡READY――――――――



「『金星(アスペクト・)顕現(オヴ・ルシフェル)♡』」


 呟いたルシフェリカの身体に青と紫の入れ墨が走っていく。


 瞳は金色に光り、全身が黄金の輝きに包まれる。飛膜の付いた羽根には静脈が浮き出てさらに巨大なものとなり、ルシフェリカの右腕はボコボコと肥大化していく。


 もとよりあったガーリーな雰囲気は一転して、悪魔の処刑人のような姿となりかわった。


 巻かれていた黒髪は力の解放とともにホワイトブロンドに染まり、後ろにたなびいている。


 入れ墨の走る四肢は急激な成長によって引き延ばされ、ルシフェリカの肉体は無理やり成長させられたかのようなスレンダーな形状に変わった。少女らしい顔付きも、大人びた中性的なものに変わっている。小悪魔のような尻尾は巨大化し、龍のように太く伸びている。


 悪魔少女の右腕には甲殻類の甲羅のようなアームガードと、忍者の手甲のような鍵爪が生えていた。


 ルシフェリカは右手の爪をうごめかし、左手には悪魔の王が持つかのような真紅の四又槍(フォークスピア)を構えた。


 悪魔そのものの姿となったルシフェリカが、羽根を羽ばたかせて飛び立った。


「へ、変身っ!?」


「キモいっしょ♡ でも勝つから~♡ 『魔弾(まだ~ん)♡』、『雷轟(らいごお)♡』」


 ルシフェリカの右腕から6つの白い光が放たれる。


 それらは緩やかな楕円軌道を描いた後、サンライズハートの周囲に着弾し、爆発した。サンライズハートのHPは0になった。


 吹き飛ばされ、意識を失いかけたサンライズハートに四又槍(フォークスピア)から放たれた雷(いかずち)が直撃する。


 地面に倒れ伏したサンライズハートの目前に、悪魔の魔法少女が降り立った。その巨大な爪が額に添えられる。


「おつかれ~♡ ぐっどげ~む♡」


 死体撃ち、とばかりに巨大なデコピンがサンライズハートの頭を貫いた。気絶したサンライズハートの手元から、ヘリオスケインが明滅しながら転がり落ちた。


 スタングレネードのような暴力的な光が、至近距離からルシフェリカを包み込んだ。


 万物を焼き尽くす白色光の残光(アフターグロウ)だった。


 全身から煙を立ち昇らせながらルシフェリカは立ち上がった。右腕のアームガードで爆発に耐えたのだ。


「っぶね~……♡ 最後まで油断ならね~♡」


 魔法少女サンライズハート、ダウン。



『Conglatulations! デュナテルミス、ルシフェリカ WIN!』

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