第47話 神奈川の魔法少女2
羽根付きのランドセルにパステル調のスニーカー。
しかし、どこか不釣り合いなファッションに見えるのは、全身に食べカスや汚れが付いているからだった。匂いも香水で誤魔化してはいるが、風呂に入っていない人間の匂いだ。
黒髪の制服少女はさつき、パステルカラーの少女はアキラと名乗った。
二人とも中学生で、契約済みの魔法少女だった。金髪ジャージの子は魔法少女ではないようで、気怠そうに離れていった。
「嬉しい~!♡ アキラたちも始めたばっかりでぇ~♡ 先輩たちは、どんな感じなんですかぁ?♡」
「ど、どんな感じ?」
「プロフ見せてくださいよぉ~!♡」
アキラに言われ、ひなたはスマホの画面を見せた。レベル5になったばかりのサンライズハートを見て、アキラは目を輝かせた。
「わぁ~♡ かっこいい~!♡ ニューエラじゃないですかぁ~♡ もう解放したんですかぁ?♡」
「解放? ウルトのこと?」
アキラは目をぱちくりと瞬くと、激しく頷いた。
「……うんうん!♡ どんなウルトなんですかぁ?♡ 絶対かっこよさそぉ~♡」
「ヘリオスケインっていう光の剣が出るみたいな感じだよ。アキラちゃんのは?」
「私のは、ちょっとキモいかも~♡ なんかぁ悪魔変身みたいなぁ♡」
ひなたは笑顔になった。うさぎ以外の魔法少女と話すのは初めてだった。
「うわぁ、かっこいいね! さつきちゃんは?」
「あたしもニューエラッス。ウルトは内緒」
「うさぎ先輩のも見せてくださいよぉ~♡」
アキラがにじりよってくる。思わずスマホを隠そうとしたうさぎだったが、アキラに抱き着かれ、ぺたぺたとスマホを触られてしまった。
「あ、う、わわ……」
「あぁ~♡ うさぎ先輩、もしかしてコミュ障じゃないですかぁ~♡ アキラと一緒だぁ~♡ ねぇ~♡ プロフ見せてくださいよぉ~♡」
うさぎの足元から今までにない勢いで水位が上がって来た。
うさぎの本能が、真っ赤に点灯していた。この子は、ヤバい。絶対に関わったらヤバい。うさぎが最も苦手とする人種だ。
ある意味で同族嫌悪かもしれないが、うさぎはアキラが生理的に無理になった。
そして、無理になった相手へのうさぎの対処法は2つしかなかった。
逃避か、恭順か。
身体にがっしりと抱き着かれている状態では、その場から逃げることもできなかった。アキラは手慣れた様子で、うさぎのスマホをギリギリ強奪にならない力強さで奪いとった。
「わっ♡ うさぎ先輩、ポスモだ~♡」
「ポスモ?」
「マジ? レアすね」
アキラはうさぎから奪ったスマホでプロフをじろじろと眺める。それから申し訳なさそうに言った。
「あ~♡ うさぎ先輩、まだレベル4なんだぁ……♡ ごめんなさい♡ 見られたくなかったよねぇ~……♡」
「あ、いえいえ……」
ようやくスマホが手元に戻ってきた。うさぎはげぼを吐きそうになりながらスマホをしまった。
ひなたが二人に尋ねた。
「ニューエラとか、うさぎのポストモダンとかっていうのは、あなたたち何か知ってるの?」
さつきが黒髪をかきあげながら答える。
「うちらも聞いただけッスけど、戦闘スタイルの違いらしいですよ」
「そーそー♡」
「そうなんだ……。二人ともレベルはいくつくらいなの?」
アキラとさつきが目を見合わせた。さつきが指でピースを作って言った。
「7ですね」
「すごい!」
さつきは枝毛を弄りながら言った。
「まぁでも、レベルってぶっちゃけあんま関係ないッスよ。HPが100か200違っても、勝てない時は勝てないんで」
「つまり、もう他の魔法少女と戦ったことがあるんだね」
「まぁなんつーか、はい。てかそういう意味じゃ、うちらの方が先輩になるか。センパイたちはけっこう戦ってんですか?」さつきが鼻で笑った。
「魔法少女同士では戦ったことないんだよね~」
アキラが笑顔になった。さつきは壁にもたれかかり、スマホを操作し始めた。
「えっ♡ じゃあじゃあ、アキラたちと練習してみませんかぁ~?♡」




