第22話 クリフォト コード"廃都東京メルトダウン" 6
サンライズハートはスマホを開いた。
「出口は、来た時と同じでいいのかな?」
二人の位置は、入ってきた場所からかなり離れていた。
クリフォトのマップは今や緑と青のアイコンだけになっていて、周囲に警戒すべきようなものはない。
そして特徴的なランドマーク以外には名前がなく、この地域一帯もただ「研究施設跡地C」とだけ記されているだけだ。他に目印になるようなものはなかった。
「私たち、帰れないの……?」
ムーニーバニーが不安そうに言った。
「制限時間っていうのがあるから、それまで待ってればいいのかもね。でも、あと15分くらいあるよ。しりとりでもする?」
「じゅ、15分もッ!? もうやだ……帰りたい……」
体育座りをしていたうさぎは、その場に蹲った。
「い……『インド象』」
「………………う、う……『うみうし』」
「『詩集』」
「う……『ウグイス』」
「す……す……」
「い、いっぱいあるよぉ……?」
「最後が『う』になるもの探してるの」
「ひなたちゃん!?」
「す……す……」
その時だった。
屋上に散らばったドローンの残骸が、かたかたと揺れ始めた。それだけじゃない、建物そのものが揺れている。
ムーニーバニーは顔を上げた。地震だろうか? そして、灰色の空に輝く六つの赤い光を見つけた。それは煙を伴って、二人のいる建物の屋上に向かってきていた。
「ひなたちゃんッ!!」
ムーニーバニーはサンライズハートを屋上から突き飛ばした。
6発のロケットミサイルは音よりも速く着弾し、病棟は爆炎に包まれた。
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「……ッ! うさぎッ!?」
サンライズハートは敷地内の芝生の上で、オレンジ色に瞬く炎の眩しさの中、目を開いた。
周囲はガス爆発でも起こったかのように、炎と煙が立ち込めている。見れば先ほどまで二人がいた病棟は倒壊し、瓦礫の山となっただけでなく火災が発生していた。さらに、断続的な地面の揺れも続いている。
ムーニーバニーが助けてくれたのだ。あそこで突き飛ばされなければ、今頃サンライズハートもあの瓦礫の中で焼かれていただろう。
「ムーニーバニーッ!!!」
返事はない。
サンライズハートは、ミサイルが着弾する直前に突き飛ばされた。
逆に言えば、ムーニーバニーは今はあの瓦礫の中なのだ。サンライズハートは相方を助けようと、揺れておぼつかない足場の中、瓦礫に近づいた。
炎に焼かれながら、名前を呼ぶ。
「うさぎ! うさぎ、どこ! 返事して!」
「は、はいぃ……」
声は予想外の方向から聞こえた。ムーニーバニーは恥ずかしそうに、道路脇にあるダストボックスの裏に隠れていた。サンライズハートは安堵のため息を漏らした。
「良かった……どこも怪我してない?」
「う、うん」
サンライズハートを突き飛ばした後、空を滑空しながら爆発の範囲外まで逃げたなんて言えなかった。
全く無傷のムーニーバニーは、サンライズハートに抱き着かれ、気まずそうに目線を散らした。サンライズハートはそんなことおかまいなしに、ムーニーバニーの手を握った。
「ありがとう、ムーニーバニー! 命の恩人だよっ!」
「い、いいの。それより……これ見てほしくて!」
ムーニーバニーは自分のスマホを見せた。マップの画面外から、巨大な赤いピンが高速でこちらに迫ってきている。
ピンにはBOSSと分かりやすく記されていた。
「ボス? ミサイル撃ってきたのも、そいつ?」
「た、たぶん……!」
そして、先ほどからずっと続いていた地面の揺れがだんだんと激しくなってきた。二人はピンの付いた方角を見た。
病棟の建物に、巨大な鋼鉄の爪が突き立てられる。全身を黒い鉄鋼に覆われた、巨大な蜘蛛のような兵器がのっそりと姿を現した。




